● 自分は特別だから成功したのだと思い込む
起業してうまくいくと、ほとんどの人は、「自分には特別な才能がある」と勘違いします。
そして、「その特別な才能があったからこそ、成功したんだ」と思い込むようになってしまいます。
確かに、起業家というのは自己陶酔できるくらいの性格でないと、自分の分身ともいえる会社に対して、一途に心血を注ぐことはできません。
しかし、いったん成功を手にすると、それが悪い方向に向いてしまい、最終的に失敗してしまうことが多いのです。
なぜ失敗してしまうのか?
経営者は、野球選手や芸術家と違い、「特別な才能」など必要としないからです。
ビジネスというものは、自分一人で成立させることは不可能であり、周りの協力があって、初めて成り立つものです。
それを、自分の特別な才能によって成功したと慢心してしまえば、「こうやればうまくいく」という自らの成功パターンに固執するあまり、周りの変化に気付かなくなってしまいます。
そもそも、経営において、完全無欠な成功パターンなどは存在しないのです。
そのことを理解できないと、「こんなはずじゃない」と、どんどん深みに入っていくことになります。
ビジネスの最終目的は、事業の成果であり、「いくら利益を出したか」なのです。
周りは、別にあなたの才能などに関心はありません。
あなたの会社がどれくらい儲かっているのか、ということだけに興味があるのです。
そのことを肝に銘じ、頭を切り替えるだけの冷静な目をもたなければ、最終的には失敗することとなります。
● この会社は自分のものだと思い込む
起業家は、自分の立ち上げた会社をわが子のように寵愛します。
確かにこれは、多くの困難を乗り越え、挫折することなく会社を成長し続けさせるためには、重要なモチベーションとなります。
しかし、「この会社は俺がつくりあげたんだ」という気持ちをいつまでも持ち続けると、会社の成長は、そこでストップしてしまいます。
会社は生き物であり、その時々の成長ステージがあるというのが、私の経験上の持論です。
このステージを見誤ると、会社は成長速度を弱め、最終的には落下してしまいます。
確かに、立ち上げ当初の最大のエネルギーは、起業家の情熱であり、アイデアです。
しかし、いざスタートし、会社が機能し始めると、あなただけの力ではどうにもなりません。
社員や取引先、顧客や銀行など、周囲の支えがあって初めて、会社というものは成立します。
会社が成長する過程で、組織体制を整備し、仕事の役割分担を明確にしていかなくてはなりません。
これをおろそかにして、いつまでも経営者個人の能力に左右されているのであれば、
その会社は、いくら大きくなったとしても、個人商店の域を出ることはありません。
その会社の経営や価値が、たった一人の人間の存在で安易に左右され、創業経営者がいなくなってしまったらダメになるような組織は、会社とは呼べないのです。
時代の変化があり、それに対応して会社を変革する必要性に迫られたときは、確かに経営者個人の判断力がものを言います。
それと同じに、管理された組織からは、画期的なアイデアや創造が生まれることはありません。
新しいものを生み出すのは、常に個人です。
しかし、自分がいなくても、会社がきちんと機能し、成長し続けることができるだけの組織を作らなければ、会社はいずれ成長を止めてしまいます。
それを常に念頭に置き、「組織」と「個人の能力」の使い分けを考えるのが、経営者に求められる資質です。
● 何がいけないんだと考え込んでしまう
起業した場合、予定外のトラブルや問題が発生し、立往生してしまうことは、日常茶飯事です。
まず、知っておいてもらいたいのは、あなたの周りの起業家も同様の悩みを抱えているということです。
別にあなただけがトラブルに見舞われているわけではなく、起業とは、そういうものなのだということを大前提にしてほしいのです。
こうした場合、社員や取引先が無能だからと人のせいにしたり、世の中のせいにしたりする経営者も多いのですが、そんなことは絶対にありません。
すべて、前もって手の打てなかったあなたが悪いのです。
起業というのは、もともと計画通りにいくものではなく、むしろ、そういう状況を楽しむくらいの気概がないと、成功までたどり着くことは難しいのです。
状況が悪いときほど、「何がいけないんだ?」と悩み込まず、
まず、「自分たちに今、何が残っているのか」を積極的に考え、
「何を切り捨て、どこに力を集中させるべきか」といった次善の策を練るべきなのです。
● 自分の会社を大きく見せる
起業家のプレゼンを聞いていて感じることは、「夢を大きく語る」わりに、その裏付けとなる客観的データが、不足しているということです。
「大きな夢を描く」こと自体は否定しませんが、それを語るのは、せいぜい周りの知人に留めて置くべきです。
夢はあくまで夢であり、根拠の明確でない「夢」を、あたかも現実を反映した「事業計画」であるかのごとくに語るのは、協力者にとっては逆効果となります。
「どういう理由でこの数字をはじき出したか」をきっちり説明できなければ、逆に、
「この人間は信用できない」ということになってしまいます。
そもそも、いくら綿密なデータから事業計画の数字を出したからといって、実際に会社が稼動すれば、計画の7割も実行できれば上出来です。
だからこそ、起業家は謙虚に考え、余裕を持った計画を立てるべきなのです。
また、よくマスコミ等で紹介される「成功した起業家」といわれる人達にしても、報道の仕方も悪いと思いますが、起業を志す何も知らない人に誤解を生ずる表現が多々あります。
■「年商20億やっています」
基本的に、年商だけで経営評価ができないのは、ビジネスの世界においては常識です。
いくら売り上げがあっても、利益が少なかったり赤字であったりするなら、まったく意味はありません。
図体がでかい分だけ固定費もかかり、経営上は非効率な場合も多いのです。
■「社員300人をかかえています」
社員を増やしたければ募集すれば良い。たったそれだけのことです。
いまどき、社員数が多いというのは、時代の流れに逆らった形態であり、市場評価としてはまったく価値がありません。
むしろ、同じ量の仕事を、少数の社員でこなすことができる仕組みを考えている会社の方が、評価されます。
■「この技術は、他では出来ないほど素晴らしいものです」
いかに技術が優れていても、それをお金に換えるだけの経営手腕がなければ、それは宝の持ち腐れです。
よくあるケースですが、技術のみ優れた会社が、経営能力の優れた会社に吸収合併されたり、資金が続かず倒産したという例は数多くあります。
■「この商品は特許出願中でして・・」
ほとんどのアイデアは、金さえあれば特許出願できます。
また、実際に特許が取れたとしても、その特許に違反した会社に対して勝訴しなければ、知的所有権としての価値はないに等しいのです。
それに、よくある話ですが、その商品を特許に抵触しない範囲でマネされてしまえば、
やったもの勝ちとなってしまいます。
■「上場企業の○○と取引しています」
まったく、何の自慢にもなりません。
先方の上場企業は、別にあなたの会社だけと取引しているわけではないのですから。
こうした表現を、あたかも「成功の証」のごとく吹聴するのは、危険きわまりないことです。
これに影響されて、起業家が、よせば良いのに自分の会社を大きく見せようとする余り、誇大表現をしたとします。
先方がまともなビジネスセンスを持ち合わせていれば、まず、あなたの会社の実態を調べるはずです。
その結果、あなたの言った話が誇張されたものであると分かると、その瞬間から、いくらあなたの会社が業績を上げようが、どんなにすばらしい事業計画を持ち込もうが、誰も信用しなくなります。
経営において見栄を張ることは、結果的に自らの信用をなくすことに繋がります。
見栄を張ることなく、余裕を持った計画を立て、その計画以上の実績を出すことの方が、あなたにとっては、より高い評価を受けることになるのです。
● 自分の成功だけを信じる
ほとんどの起業家は、将来の「成功の未来予想図」だけを手に、事業を展開します。 当たり前ですが、そもそも最初から失敗を前提とするくらいなら、誰も起業などしません。
起業家に必要な性格のひとつに、「楽天的」であることが挙げられます。
基本的に、楽天的でなければ、先の見えない起業などやろうとすら思わないでしょう。
しかし、ビジネスの実務レベルとなった時、冷静に「失敗をシュミレーション」ができない人は、結果として、失敗する可能性が大きくなります。
少しでも計画通りにいかなかったり、ミスをしたりすると歯止めがきかなくなり、地獄への道をまっしぐらということになりがちです。
起業家は、「成功したい」という感情がモチベーションとなり、果敢な挑戦を繰り返します。
しかし、その挑戦が大きなものであればあるほど「失敗」の可能性もまた大きくなることを覚えておいてください。
「成功」と「失敗」は、コインの表裏に過ぎないのだということです。
それならば、「失敗」を意識すれば起業の成功率は高まるのか?
そんな簡単なものではありません。それだけでは不十分です。
必要なのは、「失敗するとどうなるのか」を具体的に想定し、その対処策をしっかりと用意しておくことです。
それが、起業家が失敗を乗り越え、成功するための必要条件となります。
起業家が「失敗」を想定しないで事業をスタートし、結果、失敗したとするなら、復活するのに相当な時間を要するでしょうし、さまざまな負の遺産を背負い込むことになってしまいます。
失敗を具体的に想定しないと、必要以上に失敗のリスクを大きく捕らえすぎてしまい、
チャンスを逃してしまうかもしれません。
また、いざ起業をスタートさせても、どの時点で失敗の判断を下せば良いのか分からないため、いたずらに事業を継続してしまい撤退の時期を遅らせて、ヤケドを負う事になります。
起業家は常に失敗を意識し、どんな失敗が考えられ、その失敗の結果起こりえる事態にどう対処すべきかを、前もってシュミレーションすべきなのです。
● 苦しくても事業をやり続ける
こんなことを書くと「え?なんで?苦しくても、あきらめないで続けることが大切なんじゃないの?」と反論される起業家がほとんどでしょう。
確かに、「あきらめたときが失敗であり、成功を信じてやりぬくことが成功の秘訣だ」という考え方は、間違っていないと思います。
私自身もそうしてきましたし、相談に来るクライアントにもこれと似たような話をすることも多いのです。
しかし、落ち着いて考えてみてほしいのです。
起業した会社が、10年後に残っている確率は1割もありません。
彼らのほとんどが、安易にあきらめた結果として、この数字になっているのか。
逆に、あきらめなければ、起業家のほとんどは成功できたのか。
そんなことは、絶対に無いのです。
これから述べることは、起業家にとって聞きたくない話でしょうが、結果的には、あなた方のためになることなので、あえて書かせていただきます。
会社を経営していると、さまざまな問題が発生します。
特に起業家の場合、最初から経営資源が不足しているわけですから、事業が計画通りに進むことはめったにありません。
商品開発が予定より遅れたり、見込んでいただけの売り上げが当初の予定を下回ったりすることは日常茶飯事です。
しかし、もし、商品開発自体が技術的な問題で継続できないことが判明したり、マーケティングにミスがあり、想定した顧客に商品がまったく売れなかったりしたらどうするか。
こうした、経営において致命的な問題を抱えてしまった場合に、起業家は、大変重要な経営判断を迫られます。
さらなる資金調達をするのか、会社の継続を断念するか、です。
問題解決の糸口があれば、新たな資金調達をし、会社の継続のために経営努力をするべきでしょう。
しかし、問題解決に明確な見通しがなかったり、現状を引きずりながらの会社継続が難しい場合は、くやしいかもしれませんが、一度経営は断念すべきです。
私は、決して、無責任な一般論を振りかざしているわけではありません。
この経営判断ができなかったばかりに、高利貸しに10日で3割、4割の返せるはずのないお金を借りて、結果的に、地獄に落ちた人たちを数多く見てきたから言っているのです。
こう書いても、起業家の皆さんは「俺がそんなバカなことをするはずないじゃないか」と思われるかもしれませんが、人間土壇場に追い込まれると、その正常な判断ができなくなってしまうのです。
私の経験から言って、おそらくあなた方の大部分は、そうした状況に陥ると、他人から見て、信じられないようなバカな行動をとるはずです。
それが、人間なのです。
経営に限らず、人生においても、順風満帆の時は何をやってもうまくいくものです。
しかし、その後のあなたの人生を左右するのは、危機に陥ったときに、どのような判断を下したかです。
そのときにこそ、あなたの真価が問われることとなるのです。
「起業」において、リスクを負うのは誰か? それは起業家であるあなた自身です。
それと同じに、考えなければならないことは、あなたの事業に協力してくれた周りの人たちのことです。
従業員、顧客、取引先、銀行、出資してくれた人達は、あなたのように、リスクを負ってリターンを期待しているわけではありません。
あくまで、自分たちの行動に対する対価を、あなたの会社に求めているに過ぎないのです。
そんな彼らを、あなたの経営判断ミスによる倒産劇に巻き込むことが、はたして正しい選択といえるのでしょうか。
「そうはいっても、しょうがないじゃないか」と思われる起業家もいるかも知れませんが、それは大きな間違いです。
私は「社会道徳的に」というような、キレイ事をいう気はさらさらありません。
先ほど、経営困難に陥ったときは、更なる資金調達をして経営を続けるのか、会社の継続を断念するしかないといいましたが、実はもう一つの選択肢があります。
被害を最小限にとどめ、再起を図るという選択肢です。
このための具体的な手法については、ここでは詳しく述べませんが、この方法を選んだ場合、ネックになるのは、再起するための協力者がいるかどうかです。
銀行はまず無理です。彼らは、一度失敗した人間には二度とチャンスを与えません。
しかし、その他の取引先、出資者、従業員などは、再度あなたにチャンスを与えてくれる場合が多いのです。
あなたの人間性に魅力を感じ、支援してくれた人達は、土壇場でのあなたの態度を見て判断してくれるはずです。
もちろん、あなたが前もって彼らに会社の現状を説明し、彼らの被害を最小限にとどめる努力をすることが大前提です。
「再起を図るための協力者」という点で、注意しなければならないことがあります。
まずは銀行です。
銀行は、おそらくあなたの協力者にはなってくれません。
口ではいろいろ言うかも知れませんが、一度事業に失敗した者に、再度融資をするということは有り得ません。
そういう意味では、銀行には迷惑をかけてもいいかもしれません。
借りた金額も多いでしょうし、それを返すとなると、その他の協力者の被害を避けることができなくなるケースが多いからです。
次に投資家、出資者です。
彼らは、直接あなたに金銭を提供しているわけですから、あなたが「会社をたたんで再起を図ります」と説明したところで、「ああ、そうですか」と平静でいられるはずはありません。
ここが、起業家にとっての正念場です。
現状のまま、彼らが追加の資金提供することはまず無いのです。
人によっては、投資金額を、あなた個人の債務に切り替える要求を突き付けてくる者もいると思います。
たいがいの場合は、どこからか新たな資金調達を行って、経営の建て直しを図ることを提案するでしょう。
しかし、ここから先リスクを負うのは、起業家本人なのです。
新たにお金を調達することは、あなたのリスクを大きくすることになります。
あなたが、冷静かつ客観的に判断した結果、現状のままでは会社の継続が不可能だという結論に達したわけですから、これからの再起計画を具体的に説明するしかありません。
そこで資金が調達できるのであれば、新しい会社をやれば良いのです。
合理的判断に基づいて会社をいったんたたみ、起業家も出資者も再度ゼロからスタートしたほうが、結果的によい結果となることが多いのです。
起業家が「あきらめずにやり抜く」姿勢は大事なことだと思いますが、それは客観的な失敗が確定するまでの評価でしかありません。
会社を閉鎖するとなると、あなたのプライドや周囲の目が気になってなかなか実行し辛いのは百も承知です。
しかし、こうした作業をやり抜くことも、経営者としての重要な資質である、「勇気」と「忍耐力」を必要とするのです。
最後に、この「客観的失敗」を、どの時点で、どうやって判断するかの基準を述べてみます。
会社にとってお金は血液であり、いくら黒字が出ていても資金の流れがとまれば、その会社は倒産します。
このお金の流れを常に把握することが、経営にとっては重要なこととなります。
これを「キャッシュフロー経営」といいますが、起業前のように体力が少ないケースでは、最重要項目といっても過言ではありません。
キャッシュフロー経営についての専門的な説明は割愛しますが、要は、会社のキャッシュがどのように出入りしているかをチェックし、より効率的に資金を循環させることで、利益を上げるよう経営をすることです。
このキャッシュフロー経営を実行することにより、いま会社がどんな状態にあるのかを、正確に判断することができます。
そして、その正確な数字を把握した上で、「この会社の将来はない」と判断した場合は、早急に手を打たなければなりません。
再起のための協力者は、出資者、取引先、従業員などであるため、会社の事実上の債務をきちんと計算しておく必要があります。
単なる「債務」であれば、決算書上に乗っていますが、実は会社には、会計上表に出ない「事実上の債務」が存在します。
その代表例が、リース契約です。
会計上は、毎月10万円のリース費が経費として計上されていますが、リースを解除すると、その時点で、リース残存期間に応じた解約金を支払う義務が生じます。
その金額も、数百万円であり、半端な数字ではありません。
そのほかにも、顧客との契約上の契約金や、社員の退職金、取引先への商品発注代金、
事務所の現状復帰費用といった、会計上は計上されない「事実上の債務」があります。
これらを計算に入れて、「会社をいつ潰すか」を見極めなければ、再起のための協力者に迷惑をかけてしまうことになります。
そうなれば、「再起しようにも誰も協力してくれない」ということになってしまいます。
周囲に多大な損害を与えた状態で再起したとしても、誰もそんな人間は信用しません。
会社を閉鎖するという、誰もがやりたがらないことを自ら決断し、先頭を切って、周りの関係者の被害を、最小限に食い止める努力をした人間だからこそ、人は信用するのです。
再起を図るために一番重要なものは、この「信用力」です。
いくらすばらしいアイデアがあったとしても、「信用」がなければ、誰もあなたにチャンスを与えてはくれません。
「あきらめずにやり抜く」ことも大切ですが、失敗を早期に認めるという経営姿勢もまた重要なのです。
起業においては、「失敗する」ことが、悪いのではありません。
「失敗を認めない」ことが、悪いことなのです。
私は別に、「起業信奉者」でも何でもありません。
確かに、サラリーマンに比べて、独立したほうが税制面でのメリットがあるため、結果的に可処分所得が増えるということは確かです。
しかし、それは収入があっての話です。
収入がゼロになる可能性もあるわけですから、独立したほうが得なわけでもなんでもありません。
人には、それぞれ道があり、どの道を選ぶかは個人の自由です。
各々の特性に合わせ、最も自己実現ができると思われる道を選べばよいのです。
リスクをとることがイヤな人や、すべての責任が自分にかかってくるような立場が嫌いな人は、無理に起業する必要はありません。
銀行員時代の同僚の中にも優秀な人間はたくさんいましたし、彼らの中には、銀行の役員を目指して絶え間ない努力を続けている人もいます。
要は、自分らしい生き方ができればいいのであって、その手段は無数にあり、決してサラリーマンが半人前なわけでも、起業家が立派なわけでもありません。
ただ一つ勘違いしてほしくないのは、「リスク」についての考え方です。
起業に興味のある人が、必ず言う言葉の一つに、「起業したいとは思うのだが、周りに迷惑をかけることを考えると踏み切れない」というものがあります。
これは「起業」に限らず、やりたいことをなかなか始められない人が使う言い訳です。
つまり、何かを始める際に一見もっともらしく見える理由をでっち上げ、自分がチャレンジできない言い訳を説明するのです。
このタイプの人間は、決して新しいことに挑戦することもないですし、挑戦したとしても必ず失敗します。
私は、この手の人の相談を受けると、早々に退室願うことにしています。
ハッキリ言って、時間の無駄です。
まず大前提として、リスクのないところにリターンは存在しません。
リターンを期待するなら、リスクをとるしかないのです。
「成功する保証もないし・・・」というのは、去勢されたサラリーマンがよく使うセリフですが、成功が保証されているのなら、私は全財産を投げ打ってでもその事業を始めます。
リスクをとることを躊躇して言い訳するくらいなら、最初からリターンを口にしてはいけないのです。
この「リスク」についても、若干異論があります。
彼らの多くは、こう考えます。
「リスクをとるということは、リターンもあるかもしれないが、失敗の可能性のほうが大きくなる。一方、リスクヘッジとは、失敗の可能性を極力押さえ、結果的に成功する確率が高くなる」
しかし、そもそも「リスク」とはなんでしょうか?
確かに高度成長期であれば、会社に入り、決められた仕事をこなしていれば、自動的に収入は増え、地位も上がりました。
ところが、経済がピークアウトし、既存の会社システムが崩壊しつつある現代においては、今までリスクヘッジの手段であったものが、逆に「リスクをとる」ことになるケースも増えてきました。
おそらく、この流れは今後ますます増幅していくことでしょう。
現在、日本の国全体の借金は1,000兆円を越えています。
これはGDPの2倍以上であり、この割合は、終戦直後のそれとほぼ同じです。
一般に、国が破綻するのはGDPの3倍の借金を抱えたときといわれていますが、このままいけば、5年以内にはその数字に達するといわれています。
現在の日本は、戦後築き上げてきた産業構造や社会システムの巨大な転換期に入っており、これまでの経済基盤や社会基盤、古い常識などが音を立てて崩れつつある時代なのです。
これまでの常識にとらわれ、古い「リスクヘッジ」にしがみついているようでは、リスクヘッジしたはずの人生が、危険を回避するどころか、逆に失敗へと転げ落ちる近道になってしまうことになるのです。
私たちは、そんな時代を生きているのです。
私などは、生来何かに頼るような生き方をしていませんし、ましてや国に頼ろうなどという気はさらさらありません。
最終的にモノというのは、自分自身の力であり、何があっても生きていけるだけのタフさをつけることが、一番の「リスクヘッジ」だと思っています。
「起業」の世界は、そういう生き方をしてきた人間には絶好の修練の場であり、これ以上に自己実現できる世界を私は知りません。
目の前にある壁を一つ一つ打ち破り、先へと進んで行く生き方が好きな人には、「起業」は最高の世界だと思います。
自分に自信がある人は、ぜひ「起業」の世界に足を踏み入れていただきたい。
風の吹きすさぶ不安に満ちた荒野ではありますが、そこには無限の空、つまり無限の可能性が広がっています。
荒野に踏み込まなければ、決して宝は見つからないのです。