特典-財務分析・資金繰り1-会社を経営して初めて分かる素朴な疑問

会社を経営して初めて分かる素朴な疑問

● 利益が出ているのに、借入れしないと税金が払えない

決算書では1,000万円の利益が出た。
税理士から「400万円の法人税がかかりますので、用意しておいて下さい。」と言われ、金庫を開けると、そんなお金はどこにもありません。
仕方なく、銀行へ借入れに行きますが、なかなか良い返事をしてくれず、途方に暮れます。

こういう経験をされた方は多いと思います。
決して、税理士が間違った決算書を作成したわけではありません。

決算書上では利益は出ても、お金は残っていない――こういうことはよく起こります。

その理由は、「決算書」というものは、現金の入出金を基準として作られていないからです。

現金は入ってこなくても、売買が成立していたなら、売上げとなります。
これを「売掛金」といいます。
商用車を100万円で買っても、100万円を一度に経費として落とせるわけではありません。
「減価償却」という手続きで、何年かに分配して100万円を経費として計上するのです。

起業家の方は、こうした会計のルールを知っておかなければ、突然の資金繰りに苦しむことになります。
この「ルールを知ること」が、会社経営と資金の安定のためにはどうしても必要なのです。

● 資金不足のため仕事に集中できない

月末近くになると、いろいろな支払いに頭を悩ますこととなります。

決済資金があと500万円足りない。
銀行からは借入れできないし、社長個人の預金も底をついてしまった。
どこの親戚、友達にお金を借りに行こうか・・・。
そういえば、今日のスポーツ新聞に「お金貸します」と書いてあったな・・・。
でも、そういうところは高利貸しなんだろうな・・・。
電話だけでもしてみるか・・・イヤなら借りなきゃいいんだから・・・。

こうした精神的プレッシャーは大変なものです。
夜寝ようと思っても、頭の中はお金のことで一杯になり、なかなか寝つけません。

こうなると、社長の頭の中は、資金繰りのことで9割以上を占めてしまうようになります。
社長が本来すべき仕事は、残りの1割でしか出来ませんから、良い仕事などできるはずがありません。

「この契約では赤字になるけど、資金繰りのためには仕方ない。背に腹は変えられないので、安い値段で受注してしまおう。」ということになり、赤字を覚悟で仕事を受けたり、値引きをしてしまいます。

こうして、資金不足と赤字経営の悪循環が始まるのです。

このように、資金繰りの心配は、経営者の精神的エネルギーを浪費してしまいます。
それと同時に、適正価格での健全経営を遠ざけてしまうことになるのです。

起業家にとって大事なのは、まずこうした自転車操業に陥らないための、資金繰りのテクニックを学ぶことなのです。

● いくら売掛金があっても、明日の支払には間に合わない

例えば、あなたが、ある商品を取引先に納品したとします。
納品が無事完了すれば、あなたは100万円の代金をもらえますが、契約上1ヶ月先でないと支払ってもらえないとします。

この場合、お金は1ヶ月先ですが、売上は100万円となります。
帳簿上は、現金100万円の代わりに売掛金100万円がたちます。
売掛金は、取引先から現金をもらわない限り、現金にはなりません。
現金になっていないから、給料や経費を払うお金にも困ることになります。

このように、「売掛金」とは、将来現金となる日までは、単なる「数字」に過ぎません。
だから、売上代金の入金が後になる会社は、お金が足りなくなるのです。

取引が完了して実際に入金があるまでの期間を「支払サイト」といいます。
一部の現金商売を除いて、この「支払サイト」は、短くて1ヶ月、長ければ半年以上にもなるケースもあります。

起業したばかりの頃は、ついつい売上を作ることに一生懸命になってしまいます。
そして、新規の取引先と契約したいばかりに、先方の希望を聞きすぎて、支払い条件が長いサイトになり、代金回収が遅れることになります。

売上とは、現金で回収した時点で、初めて本当の売上です。

「代金の回収期間を短くする」という強い意識を持たないと、あとで資金繰りに苦しむことになります。

● いつも社長の給料は未払いになる

会社を経営すると、「なんで、いつもお金が足りないんだ?」と感じると思います。
これは、ほとんどの業種で感じることです。

その理由は、在庫でお金が寝てしまったり、機械や建物を買わなければならなかったりするからです。
さらに、売上代金もすぐにはもらえません。

1~2ヶ月待たされたあげく、手形をもらって、3~4ヶ月先でないと現金にならないこともあります。

そのため、利益は出ていても、お金が足りなくなりますから、社長の給料が未払いとなってしまうのです。

起業当初からこうした事態に陥らないのは、設備投資のいらない事業で、かつ現金商売であり、税金を払っても十分な利益が残る、一部の会社に限られます。

起業したばかりの頃は、みんなそうですから、給料がちゃんと取れないとしても、そんなに心配する必要はありません。

もちろん、せっかく起業したわけですから、いつまでも給料が未払いのわけにはいきません。
経営者であるなら、まず最初の目標は、月100万円です。
なぜそうなのかの詳しい内容は、別のセクションで説明しますが、会社の税率と個人の税率のバランスから計算すると、一番有利なのがその金額だからです。

月100万円の給料であれば、社会保険料や税金を引いた後の手取り金額も、900万円余りになります。
それだけあれば、社長の生活費としてはまずまずではないでしょうか。
実際、2期連続黒字の企業の社長給料の平均額は、月98万円です。
会社の社長になった以上は、月100万円の給料を取ることを目標にして下さい。

それと同時に、生活費を払って余るお金は、必ず会社の将来のために蓄えておいて下さい。
新規投資をする場合や、資金繰りに困った時に、社長が会社にお金を入れなくてはならないケースが出てくるからです。
これは非常に大切なことなので、必ず実行して下さい。
「いくらのお金をストックしておかなくてはならないのか」については、別のセクションで解説します。

まずは、経済的なゆとりを持つことです。
経済的なゆとりは、精神的なゆとりに繋がります。
精神的なゆとりが無くては、経営判断を狂わすことになります

● 借入金の返済は経費にはならない

皆さんの中には、銀行の返済が経費になるとカン違いしている人が多いのではないでしょうか。
確かに、銀行に借入金を返済するということは、お金が出ていくわけですから、経費のような気がします。

でも、違います。
借入金の返済は経費にはなりません。
経費になるのは、金利の部分だけです。
すべての経費と税金を支払った後の、ごくわずかな利益の中から、借入金を返済しなければならないのです。

なぜこうしたルールなのかを、簡単に説明してみます。

たとえば、銀行から100万円を借り入れ、そのお金で機械を購入したとします。
するとその時点で、減価償却という手続きを通じ、何年間かに分けて減価償却費という
「経費」になります。
つまり、機械に100万円支払った時点で、すでに経費になっているということです。
この100万円を銀行に返済したときに経費になるのであれば、100万円が2回経費になるということになります。
これはどう考えてもおかしい、と理解していただけると思います。

借入れの返済金は経費にならず、わずかな利益の中から捻出しなければなりません。
このルールを知っていれば、気軽に借入れをおこす気になれないと思います。

まずは、経営に必要な基本的なルールを学んでください。
会社のお金の流れを理解できれば、より効率的な経営ができるようになります。

会社のお金の流れについては、「お金の流れの全体像を把握しよう」のセクションを参考にして下さい。→クリック

● 会社が大きくなるにつれて資金不足に悩まされる

年商5,000万円、社員5人くらいまでの会社なら、一時的な資金不足になっても、いざとなれば、社長の個人預金をくずせば、何とか会社は回ります。
ところが、年商が5億円、社員数20人以上の規模になると、そんなわけには行きません。

たとえば、5億の売上の2割を占める大口得意先があるとします。
回収条件は、月末締め、翌末払の3ヶ月の手形での入金です。
もし、この得意先が倒産すると、売上1億の5ヶ月分である4,000万の資金が必要になります。
もちろん、社員の毎月の給料500万は、別途用意しなければなりません。

いくら何でも、これだけのお金を、すぐに用意できる社長は少ないと思います。
銀行に相談しても、まず融資は難しいでしょう。
こうしたケースを「連鎖倒産」といいますが、小さな会社にはありがちなことです。

会社の規模が大きくなると、扱う金額も大きくなるため、何かのトラブルで資金不足になると、取り返しのつかない事態に陥ります。
常に最悪のケースを想定して、そうならないための方策、資金繰りを、前もって準備しておくことが必要です。

もし、会社の規模拡大を目指しているのであれば、社長の給料の中から、最低でも月50~100万円程度は、イザという時のために蓄えておかなくてはなりません。
その程度の役員報酬も取れないのでしたら、規模の拡大やビジネスモデルを、もう一度考え直した方が良いかもしれません。

● 経営者として何を勉強すれば良いのか分からない

「経営」とは、それ自体が一つの専門分野です。
起業で成功するためには、「経営」に必要な最低限の知識を勉強しなければなりません。

人まかせにして良いものもあれば、必ず経営者自らが身につけなくてはならないものもあります。

会社を倒産させた社長が、その倒産原因を挙げたデータがあります。
その上位は、

1. 経営者の高慢・経営能力の過信
2. 事業目的・計画性の欠如
3. 公私混同・経営理念の欠如

です。

これらは、言われてみれば当たり前だと思われるかもしれませんが、実際に経営してみると、その難しさがよくわかります。
なぜなら、こうしたものは、一定のモノサシが存在しないからです
ついつい、自分に都合の良い理屈や予測を立て、自分を見失うことが多いのです。

こうした上位3つの弱点をカバーすることのできる最良の方法が、1つだけあります。
そのヒントは、倒産原因の4番目にあります。
倒産原因の4番目は、「計数管理の勉強不足」です。

「計数管理」というと、皆さんは、よく書店に並んでいる「経営分析」を連想されるかもしれませんが、そういうことではありません。

物事を、雰囲気やカンで判断するのではなく、キチンと数字で的確に考えることができる能力のことです。
この能力が身につけば、経営判断に必要なことの8割はカバーできます。

会社経営の目的は、「利益を生む状態を存続させる」ということです。
会社が倒産した理由の上位3つは、すべてこの目的に反しています。
「経営者の高慢さ」や「計画性の欠如」、「公私混同」などは、すべて、
“会社が存続できる”ために必要な、具体的数値を把握できていなかったことが原因です。

ありとあらゆる数字の背後には、ちゃんとした「意味」が存在します。

その「数字の意味」と、「会社のお金の流れ」を数字として考える能力があれば、
経営者は、常に危機感を持って、油断することなく経営判断することができます。

ドンブリ勘定で緩慢な経営をしているから、失敗してしまうのです。

私は、長年、企業再生業務を手掛けてきましたが、再建が必要な経営者に共通していることは、「管理数値能力が欠如している」ということです。
数字に強いからといって起業に成功するとは限りませんが、失敗する経営者は、ほとんど例外なく、会計や計数管理ができていません。

また、経営を数字で考えるという手法は、モチベーションのアップにもつながります。
なぜなら、「これらの数値目標をクリアできれば、必ず成功する」という具体的な目標となるからです。
無駄なものをすべて排除し、利益を上げることに専念できるのです。

それと、もうひとつの利点は、数字のセンスが身につけば、日常のビジネスにおいて、
物事をいろんな方法を用いて、シンプル、かつ具体的に捉えることができるようになるということです。

これは非常に大きな利点です。

優秀な経営者は、普通の人には見えない別の数字が見えています。
それをヒントに、新たなビジネスモデルを組み立てることができるのです。

ここでは、「小さな会社」に特化した、「計数の意味」とその「管理方法」について、
分かりやすく伝えようと思います。
無駄なことは一切述べるつもりはありませんし、「これだけマスターすれば必ず成功する」ということだけを厳選させてもらいます。

皆さん、そのつもりで頑張って下さい。

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