特典-資金調達4-起業家が融資を受ける場合の注意点

起業家が融資を受ける場合の注意点~これを知らなければ絶対に後悔する四つのポイント~

ここでは、起業家が政策金融公庫での融資を受けるために必要なことを、ほとんど網羅したつもりです。

話の中心は、「初めての申込」についての内容に、特化しました。

二回目以後、もしくは決算書が出来上がってからの申し込みについては、「事業計画書」と「決算書の内容」が審査の中心となります。
もちろん、それについても別のカテゴリーで詳しく話すつもりですが、その内容を理解してもらうためには、ある程度の予備知識が必要です。

今後、「決算書のしくみ」や「金融機関の融資判断の基準」について、少しずつ書いていくつもりなので、そちらを参考にしながら、必要な知識を身につけていって下さい。

さて最後に、「政策金融公庫」や「保証協会」といった、起業家が最初にチャレンジする融資について、注意点をいくつか述べておきます。

1.融資は「最初」が肝心

私のところに、「開業資金の調達に失敗したのだが、何とかならないか」という起業家の方が、よく相談に来られます。
予備知識もないまま、自分なりの開業計画書を提出し、断られてしまったので、もう一度チャレンジしたい、という依頼です。

ハッキリ言いますが、それは無理です。

一度否決になった開業計画書を、いくら書き直したからといって、「ああ、そうですか」とスンナリ受け取るほど、金融機関はバカではありません。

金融機関の担当者から聞いた話ですが、起業家から提出される開業計画書の80%は、箸にも棒にもかからないレベルのものとのことです。
つまり、最初から、ある程度の事業見込みがあるという幸運な先でない限り、融資の対象にならないのです。

そもそも、起業家の事業計画というものは、将来うまくいくという保証は、どこにもありません。

その保証のないものを、「いかに可能性の高いものに見せるか」というのが、「開業計画書」であり、「事業計画書」なのです。
この計画書がずさんなのでは、再度申し込んだとしても、まともに取り合ってはくれません。

金融機関が、あなたのことを何も知らない初回が、最初で最後のチャンスなのです。
この一番効果があるときに、一回で決めておかないと、その後の労力は何倍にもなります。
一度失った信用は、簡単に取り戻すことは出来ないのです。

前述のケースでは、再度、私のほうでヒアリングをして、適当な理由を考えた上で、再度融資の申込をし、運よく実行にこぎつけましたが、それでOKになる人はそれほど多くはありません。
ほとんどの場合は、政策金融公庫でダメなら、保証協会に、磐石の事業計画書を用意して融資の申し込みをします。
自己資金がゼロの場合は難しいですが、そうでなければ大半の人は、融資を受けることが出来ます。

私がここに書いた方法を忠実に実行すれば、まず融資を断られることはありません。
自信を持って申込をしてください。

もし、それでも不安に感じられる点がありましたら、直接私にご相談下さい。
出来る限りの協力はするつもりです。

2.融資は、「自己資金」がすべて

これまで何度も書いているように、「開業資金」の申込に関しては、「自己資金」の金額が大きなウエイトを占めます。

あなたが起業に際してどれだけのお金を貯めたかということは、イコール、事業に対する熱意です。

一言で「お金を貯める」と言っても、そう簡単なことではないのは、あなたもよくご存知のとおりです。
買いたいものもガマンし、生活費も節約して、長い年月をかけてコツコツ貯めるのが自己資金です。
その自己資金がゼロに近いというのでは、あなたの起業に賭ける想いを疑われても仕方ありません。

「自己資金の多さ」というのは、あなたの「起業に対する熱意を計るモノサシ」なのです。

私は、これまで数多くの起業家を見てきました。
上場企業から脱サラの人であれば、1,000万円以上の自己資金を準備している人も珍しくはありません。
しかし、それであっても、資金不足で倒産するのです。

こうしたケースは、決して珍しいものではありません。
それほど、起業というのはリスクが高いものなのです。

だからこそ、数十万円程度の自己資金で起業しようとする若者を見ると、その先の苦労がわかるだけに心配でしょうがなくなるのです。

自己資金がない状態で開業資金を申し込んでも、まずOKになることはありません。
仮に、そのままの状態で起業したとしても、一年後には、融資の申込が必要になる可能性は極めて高いと言えます。

初回の申込で、自己資金がないから融資を断られた人間が、その一年後に、「お金がないから貸してくれ」では、金融機関にしてみれば「だからやめておけと言っただろう」と言いたくもなります。

ですから、自己資金は、起業を遅らせてでも貯めてください。
つらいことだとは思いますが、必ず、後で「良かった」と気づくときが来るはずです。

起業して本当に成功したいのなら、これだけは最低限肝に銘じておいてください。

3.起業時には出来るだけ多めに借りておく

「なぜ必要もないのに借りるんだ」と疑問に思われる方もいるとは思います。
しかしながら、起業家の場合は、出来るだけ最初にたくさん借りておいたほうが良いケースがほとんどです。

その理由は2つあります。

・開業資金が一番借りやすい
・開業後、追加融資を受けようと思っても、貸してくれないことが多い

まさかとは思いますが、あなたは、「銀行は困ったときに助けてくれる」とは考えていませんよね?
そんなことは幻想に過ぎません。

銀行は、儲かっている会社にはお金を貸しますが、資金繰りで困っている会社は相手にしません。
お客様から預かった大切なお金を、返済できるかどうかわからない会社に貸すわけがないのです。

ですから、審査が甘い政策金融公庫の開業融資は、出来るだけ早く利用してください。
あなたの決算書が出来上がってからでは、もう遅いのです。

よほど順調に事業が進まない限りは、一期目の決算書の財務内容は悲惨なものになります。
当然、そんな決算書を提出しても、お金など貸してくれるわけがありません。

起業して売上が伸びないからといって、お金を貸してくれるほど、金融機関は親切なところではないのです。

また逆に、売上が伸びているからといって、貸してくれるものでもありません。

前に述べたように、政策金融公庫や保証協会は、初回の融資から最低6ヶ月を過ぎないと、次の融資には応じてくれません。

確かに例外もありますが、経営者であるなら、最初から例外を当てにしてはいけません。
借りられなかったときのことを前提に、行動すべきです。

先ほどの売上不振とは違い、事業が順調に進みすぎて、資金が必要になることもあります。
売上が上がれば、それに伴う「仕入資金」や「人件費」が発生しますから、そのためのお金が不足するのです。

これは、飲食店などによくあるケースです。
出来たばかりの店は、物珍しさから最初は繁盛します。
開業時からお客が入らないほうがおかしいくらいです。
しかし、開業して1年くらい儲かったからといって、それがその先何年、何十年も繁盛し続けるという保証はどこにもありません。

金融機関の人間は、物事を否定的に考えます。
たとえ売上が伸びているからといっても、「開業時の一過性のもの」と判断するのです。
あなたが自信満々で追加融資を申し込んでも、「そんなの、最初は儲かって当たり前だよ」と、冷静に判断しているのです。

あなたが飲食店の設備資金を、7年返済で開業時に借りたとします。
予想外に繁盛したので、半年後に追加融資を申し込みます。
あなたは、儲かっているのだからお金を貸してくれて当たり前だと思うかもしれませんが、金融機関の考え方は違います。

あなたは、前回の融資の約束である7年のうち、まだその10分の1にも満たない期間しか返済義務を果たしていないのです。
そんな状態で追加の融資を申し込んでも、「もう少し状況を見させてください」と断られるケースが多いのです。
「もし、融資を受けたいのであれば、別の保証人を用意して欲しい」といわれることもよくあります。

ですから、起業時は、出来るだけ多めにお金を借りておくことです。

必要なときに必要なだけお金を借りようという慎重な人も結構いますが、こと起業時だけは、多めに借りておくことをお勧めします。

借りすぎて結局使わなければ、早めに返済すればよいだけのことです。
それがあなたの信用にも繋がります。

現在の金利など、タダ同然なのですから、金利は保険料と割り切って下さい。
それが、後々、あなたを資金繰りから救うことになります。

「借りられるうちに借りておく」ということは、金融機関と付き合う上での鉄則です。

最後に、一つ注意して頂きたいのは、この鉄則は、「ビジネスローンには適用できない」ということです。

ビジネスローンについては、別のカテゴリーで詳しく説明しますが、これだけは計画的に利用しなければなりません。
ここで借りられるだけ借りてしまうと、後々、経営に支障をきたします。
そのあたりのことは、後で詳しくお話します。

4.背水の陣でスタートしない

最後になりましたが、これは起業家にとって非常に大切なことです。

これが守れなかったため倒産した会社を、数多く見てきました。

ほとんどの起業家は、自分の希望する金額を融資してもらえず、スタートすることになります。
金融機関から、これが上限だと減額されれば、それに従わざるを得ませんから、当然といえば当然です。

事業資金というものは、あなたが予定した金額を下回ることは滅多にありません。
私の経験上では、予定の2倍の額は最低限必要になるものです。

それにもかかわらず、ギリギリの状態でスタートしたらどうなるか?

おそらく、半年も経たないうちに資金不足に陥り、四面楚歌の状況に追い込まれることとなります。
もちろんその時に、金融機関に助けを求めても無駄です。

ですから、予定の資金が調達できなかった場合は、潔く事業計画を練り直してください。
調達できた資金を元に、事業の規模を縮小すべきです。

これが、あなたを地獄から救うことになります。

この勇気ある撤退ができないばかりに、地獄の苦しみを味わい倒産していった会社を、私は数多く見てきました。

これは起業家が陥りやすいワナなので、くれぐれも肝に銘じておいてください。

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