特典-資金調達7-銀行の手の内を知れば融資はこんなに楽

銀行員は決算書のどこをどう見るのか

● 決算書を提出する際に守るべき鉄則

銀行に融資の申し込みをする際には、必ず決算書を持参しなければなりません。
銀行は、あなたの決算書をもとに財務内容を分析し、融資の可否を決定します。

では、銀行は、決算書のどこを見て融資判断をしているのでしょうか?

通常、銀行員と融資の話が進むと、「それでは決算書を見せていただけますか」ということになります。
細かい財務分析は後でジックリと行いますが、普通はまず、その場で出された決算書をパラパラとめくってみます。
交渉事はすべてそうですが、第一印象が大切です。
最初に、ある程度の好感触を与えておけば、後で銀行員が稟議書を書く際にもプラスに働いてくれます。

ここでは、「銀行員は決算書のどこを見ているのか」について述べてみます。
それを知っているのと知らないのとでは、融資の申し込みに必要な決算書の作り方がまったく違ったものになってしまうからです。

節税のためと税理士から勧められて、多少の赤字にしてしまったために融資が受けられなかったり、ノンバンクからの借入を
決算書に載せず、うまくごまかしたつもりだったのが、支払利息からバレてしまい、銀行の融資取引がなくなったりするケースは数多く見受けられます。
そうした取り返しのつかない事態を回避するためにも、銀行が決算書のどこをチェックするのかは必ず知っておかなくてはなりません。

「お金を借りるための決算書の作り方」については、中級編で詳しく説明しますが、ここでは、業績が安定している会社が銀行に決算書を提出した場合のチェック項目について解説します。

銀行のチェック項目についてお話する前に、まず大前提、借り入れの際に守るべき鉄則をお教えします。

それは、「余計なことは言わない」「余計な書類は揃えない」です。

イザという時の切り札としての書類を準備しておくことは必要ですが、銀行から指示された提出書類以上のものは出さないで下さい。
また、数字の計画も、最初からあまり細かいものは出さないで、言われたら出すようにして下さい。

人間は、自信がない部分になると、何も聞かれていないのに自分から口火を切ってフォローしようとします。
「少しでも有利に」と思うあまり、余計なことまでしゃべり出します。
その内容が提出書類と整合性がなかったり、銀行員から突っ込まれてうまく説明できなかったりすれば、それはヤブヘビになってしまいます。
銀行員以上に財務に詳しい自信があればそれも良いとは思いますが、おそらくあなたはそうではないはずです。
失策を犯し、「こんなことなら何も言わなければ良かった」と後悔しないためにも、会社の情報は言われてから開示して下さい。

ただし、これは、業績にこれといった問題のない会社の場合です。
明らかに業績が悪化している会社の場合は、こうした態度は逆効果になってしまいます。

銀行員は、決算書を見ればすぐに、業績の悪化した会社は分かります。
当然、あなたに、その理由と改善策を聞いてきます。
その時に、具体的な返答ができず、それに関する資料がないのでは、「この社長は財務のことを何も知らない」と疑心暗鬼になってしまうのです。
これでは、冒頭でお話したように、第一印象が悪すぎます。
おそらく、前向きに融資を検討してくれることはないでしょう。

業績の悪化している会社が、融資交渉を行う場合の方法については、ある程度高度なテクニックを要しますので、事例を挙げて、中級編・上級編で詳しく解説します。

それでは、これから、銀行のチェック項目についてお話します。

● 利益にウソはないか?

まず最初に見るのは、「儲かっているかどうか」です。

これは、損益計算書の最終利益で確認しますが、ここが黒字であれば、事業がうまく回っていることを表わしていると考えられますので、まずは第一関門突破です。
ここで利益がかなり上がっていれば、まずは問題ないでしょう。

注意しなければならないのは、ほんのわずかな利益の場合です。

なぜなら、こうしたケースでは、利益操作の疑いが頭をよぎるからです。
「かろうじて利益が上がっているように操作したのでは…」という、粉飾が行われた可能性を疑うのです。

粉飾の方法は、減価償却を必要額まで行わないという単純なものから、在庫を操作する複雑なものまであります。
通常、粉飾は巧妙に行われますので、決算書をざっと見ただけでは、それに気がつくということはありません。
しかし、もしその銀行員が優秀であれば、必ず違和感を抱くはずです。
そして、決算書を持ち帰り、徹底的に分析します。

私が銀行員だった頃の経験から言うと、中小企業の決算書の8割以上は、何らかの粉飾行為が行われています。
「見のがしてやろうか」と思える程度の軽い粉飾から、「これは明らかに悪意がある」といえるほどの大がかりな粉飾までさまざまです。

銀行員も、ある程度の粉飾までは目をつむってくれるかもしれませんが、融資において重要なのは、「まず疑われない」ということです。

「決算書が黒字なのか赤字なのか」は、財務の格付けの観点からいうと、天と地ほどの差があります。
それだけに銀行員は、この部分の粉飾についてはとても慎重になるのです。

この慎重にならざるを得ない最重要項目を、いかにもという形でごくわずかな黒字にしていたのでは、銀行員に疑われても仕方がありません。
全体のバランスを考慮した上で、調整することが大切です。

逆に、本当に赤字になってしまった場合、これは仕方ありません。
しかし、よくあるケースは、税理士さんの指導により、税金対策のために少額の赤字決算にしているケースです。
これは、銀行取引という観点からは自殺行為です。
おそらく一生後悔することになりかねない、重大な過ちといえます。

学校の試験や資格試験において、たった一点のケアレスミスのために落ちた経験のある方もいらっしゃると思います。
前述の行為は、まさにそれに当たります。
銀行の「信用格付け」において、融資に問題のない先である「正常先」と、融資に注意を要する「要注意先」の境目は、こうしたちょっとした利益のプラス・マイナスで決まってしまうことが多いからです。

赤字の要注意先以下にランクされてしまうと、今までのように気軽に融資を受けることは難しくなります。
へたをすると、2年先の決算書が上がるまで様子を見られることもあります。

税理士さんは、業種がら、自分で資金調達をしたことのある人はほとんどいません。
もちろん、試験科目に「資金調達」などありません。
ですから、彼らは、会社経営において、銀行の資金調達が占めるウェイトの大きさを、実感として知らないのです。
おそらく、具体的な経営手腕においては、あなたの方が優れているはずです。
税理士さんは、あくまで「税金のプロに過ぎない」のだという認識を持っておくことが大切です。

● 自己資本はいくらあるか?

次は、バランスシートの純資産の部(自己資本)を見ます。

担当者によっては、利益の次に売上を見る人もいるかもしれませんが、私が重視するのは、何と言っても「自己資本」です。
自己資本は、これまでの利益の蓄積がどれだけ行われているかを示しています。
これは多ければ多いほど、経営も安定していると言えます。

逆に、業歴が長いにもかかわらず、自己資本が少ない場合は注意が必要です。

さらに、自己資本の部分がマイナスになる、「債務超過」という場合があります。
これは、会社の資産よりも借金の方が多いということですので、銀行の融資の対象からはハズれてしまいます。

もちろん、債務超過だからといって、絶対に融資の対象にならないというわけではありません。
ここ2~3年は利益が計上されており、それ以前のマイナスが多かったため、債務超過を脱するまでには至っていないケースがそれです。
こうしたケースは、会社としての収益力はついてきていますので、利益さえ上がっていれば借金の返済は可能になります。
したがって、明らかに財務内容に回復傾向が見られる場合には、たとえ債務超過であったとしても、融資を受けることが可能になるケースもあります。

しかし、これはもちろん、何年で債務超過を解消できるのかという数字的な裏付けが必要になりますし、それを銀行員に納得してもらうだけの財務的な知識もなければなりません。
「頑張りますのでヨロシク」では、相手にもされないのです。
こうしたケースでの交渉術は、非常に高度なテクニックを要しますので、上級編で詳しく解説します。

「自己資本」についてですが、中小企業の場合は、経営者自身や家族から多額の借入金がある場合があります。
こうしたケースで使えるテクニックを一つ紹介します。

経営者や家族からの借入金を、資本金として出資に振り替えて下さい。

こうすることにより、会社の「借入金」が減少し、一方で「自己資本」も増加するという二重の効果が発生し、財務内容は劇的に改善します。

他にもバランスシートの財務内容を改善する手法はありますが、それらについては、上級編で解説します。

● 決算書に載っていない借入金はないか?

これは、借金をするなという意味ではありません。

他のカテゴリーでもお話しましたが、「借入」は、経営者にとって、応用編とでも言うべき慎重に吟味して行うものです。
決して、気軽に、「お金が足りないから」といって行うべきものではありません。
しかし、そうは言っても、無借金経営にこだわる余り、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまったのでは意味がありません。
中小企業の場合は、「適正な額の借入により会社が成長する」というのも、一つの重要な真実です。

その「借入金」について、銀行員はどこをチェックするのでしょうか?

もちろん、売上高や総資本との比率や、借金の返済期間について分析するのは当然ですが、実は、もう一つ必ずチェックするところがあります。
それは、支払利息とのバランスです。

先ほど、中小企業の決算書の大半は何らかの形で粉飾されていると言いましたが、銀行が一番怖れるのは、「決算書に載せていない借入金」の存在です。
決算書に載せられない借入金ということは、ほぼ間違いなく、高金利の借入ということになります。
銀行にしてみたら、そんな金利のお金を借りるような会社に融資をすることはあってはなりません。
ですから、必ずその部分をチェックすることになります。

例えば、損益計算書に支払利息が100万円あり、バランスシートの借入金の合計が1,000万円だとすると、年間10%もの金利を払っていることになります。
金利3%程度の低金利の時代に、この数字はどう考えても異常です。
どこからか、高い金利で調達しているとしか考えられません。
決算書の付属明細書に載っている金融機関の借入金にも、それらしきものがないとすると、それは簿外債務ということになります。

ここで疑われてしまうと、まず融資は無理だと考えて下さい。
こうした簿外債務はかなり悪質なものであり、決算書の信憑性どころか、あなた自身の人格まで疑われてしまいます。
最悪の場合は、出入り禁止になってしまうかもしれません。

なお、今回の計算方法は、単純に決算書の借入金残高で割りましたが、実際には、前期の残高と足して2で割って平均残高を求めることにより、より精度の高い算出を行います。

● 不正を疑われるような勘定科目はないか?

銀行員が決算書を見る際に、一番疑いの目を持って見るのが、「仮払金」「立替金」「前払金」「未払金」「借受金」といった雑勘定と呼ばれるものです。

実は、雑勘定などという勘定科目は、会計学上では存在しません。
雑勘定は、補足的な小さな勘定科目を総称したもので、実際には、どこにも行き場がなくなった吹きだまりのような勘定科目です。

特に、「仮払金」「立替金」「前払金」といった、流動資産の中でも棚卸資産から下に位置する雑勘定は、中小企業の決算書においては、粉飾の材料にされることがよくあります。
こうした勘定科目は、決算書の利益と直接関係があるため、銀行員はその内容を確認しようとします。
すでになくなってしまったものや、初めからないものなど、そうした内容の資産がここに計上されている可能性が高いからです。

特に、銀行員が注目するのは、「仮払金」です。
この数字が100万円以上ある場合は、必ずチェックします。

経営者は、通常、この「仮払金」という勘定科目をさほど気にしていません。
最終的な処理が未確定な支払いを一時的に処理するものとして、決算書では普通に計上されていると思います。
これは、決算書を作成する税理士さんも同様の感覚を持っており、銀行がこの勘定科目に神経質であるという事実を知りません。

しかし、実は、この「仮払金」こそが、お金を貸す側である銀行員と、借りる側である経営者の間に大きなズレのある勘定科目の代表格なのです。

銀行にとって仮払金とは、その名の通り一時的・経過措置的なもので、一日でも早く本来の適切な科目で処理すべきものです。
もし、この仮払金が適切な科目に計上された場合、貸借対照表のバランスが大きく変わることもあり得るからです。
決算書の数字を元に分析をかけている銀行の立場からしたら、仮払金の内容が気になるのも仕方のないことと言えます。

一方、銀行員は、決算書の中に仮払金という科目を見つけた場合には、「何か不正が隠されているのではないか」と疑うクセがついています。
ましてや、この金額が大きければなおさらで、すぐにその中味を調べようとします。
金融庁は定期的に銀行に対して検査を行っていますが、その検査においても、融資先のバランスシートの中に仮払金があれば、徹底的に調査されます。
こうした金融庁の調査において、その融資を行っている現場の支店長からキチンとした説明が聞けなければ、「この支店長は、融資先の財務内容を把握しないまま貸し出ししている」という印象を持たれてしまいます。
ましてや、この仮払金が実体のないものだと判明した場合には、検査官は、銀行に対して報告書を作成するよう要請します。
これは、支店長の出世にもかかわる重大な汚点となります。
そのため、銀行員は、決算書の中に仮払金がある場合は、必要以上に神経質になるのです。

ですので、こうした銀行側の動きを考慮した上で、仮払金の内容については、キチンと説明できるようにしておくことが大切です。
これはもちろん、仮払金に限らず、立替金や前払金、未払金、仮受金といった雑勘定科目すべてに言えることです。
特に金額が大きい場合には注意しておいて下さい。

仮決算を組んだ段階で、決算書の中にこうした勘定科目がある場合には、税理士と相談して適正な科目に振り変えるか、一時的にでも処理しておくことをお勧めします。

● 決算書の流れに整合性はあるか?

銀行が決算書を分析する場合、一期分だけで判断するということは通常ありません。
必ず、三期分の決算書を比較して分析します。

設立間もない会社であればいたしかたありませんが、決算書というものは一期間の会社の業績を示しているだけであり、その期が特殊な期であったという可能性もあるのです。
また、特殊な期でなかったとしても、その会社が順調に業績を伸ばしているのか、それとも低下傾向にあるのかといったことは、複数の期間の業績を比較検討しない限り、分かるはずがありません。

三期分の決算書の数字を比較すれば、次のようなことが分かります。

まずは、売上げ状況です。
会社の業績を計る場合、その年の売上の絶対額も大切な指標となります。
しかし、それよりも、前年、前々年と比較して、売上げが増加傾向なのか、減少傾向なのかということの方が、もっと大切です。
また、増加傾向にある場合には、その伸び率にも注目します。
業種によっては時流もありますので、同業他社との比較によって会社の勢いを判断します。

さらに、売上高のみではなく、利益との関連性にも着目します。
売上高は伸びているのに利益が横ばい、もしくは減少している場合には、必ずその理由を聞いてきます。
ここですぐにあなたが、その原因について明確に即答できないようであれば、銀行員は、あなたの財務能力に疑いの目を持ちます。

そして、銀行員が複数の決算書を比較する最大の目的は、「決算書の時系列に整合性はあるか」を検討するためです。
つまり、「粉飾決算を見破る」ために行うのです。

例えば、「売掛金」に二期連続して同額のものがあれば、この売掛金は不良債権ではないかと疑います。
これは、「受取手形」も同様です。
また、「買掛金」についても、連続して同額のものがあれば、資金繰りが悪化しているため未払いになっているのではないかと考えます。

手馴れた経営者であれば、売掛金の内訳書に個別の明細を示さず、「○○他、○件、全額○○万円」などとまとめて表示したりします。
しかし、これも、決算書を何期分か並べてみると、ある決算期から突然こうした表示になっていたりするので、「これはオカシイ」と疑われる結果となってしまいます。
中には、損益計算書と貸借対照表だけを持参し、その他の付属明細書が添付されていないケースもあります。
これだけで銀行員は、「何か知られたくない数字が隠されているのではないか?」と決算書自体の信憑性を疑います。

これまでの説明でお分かりのように、銀行員が決算書を見る目的は2つしかありません。
一つは、会社の業績を知るため、もう一つは、粉飾を見破るためです。

特に、粉飾については、十分注意しておかなくてはなりません。
本人にその気がなくても、税理士が処理に困り、仕方なくその勘定科目に計上していることもよくあるからです。
税理士は、あくまで伝票に基づいて決算書を組み上げるのが仕事ですから、「銀行がどの科目をどう判断するか」など知るよしもありません。
気がつけば、とても融資など受けることのできない決算書になっていたということは、当たり前のようにあります。

また、少しでも決算書を良く見せたいという経営者の方もいらっしゃいます。
そのため、決算書に小細工を労し、真実を隠そうとしますが、銀行員はそれほどバカではありません。
むしろ、決算書の分析にかけてはプロだと言えます。

銀行に入って数年目の新人ならいざ知らず、ベテラン銀行員になれば、これまで数え切れない量の決算書を見てきています。
中小企業の経営者が粉飾に使う勘定科目など、知りすぎるほど知っているのです。
その銀行員に対して、安易なゴマカシを行うことなどは自殺行為とも言えます。

「あなたが真実を隠そうとしている科目は、前もって目を光らせている」という事実を知っておいて下さい。
銀行員はそもそも、あなたの決算書に「何かウソはないか」と最初から疑いの目で見ているのです。

銀行は企業のどこに着目しているのか

●銀行員が使っている業種別参考書がコレだ!

この世には、数え切れないほどの業種の会社が存在しています。
また、同じ業種であっても、その業態は会社によりまちまちであり、一概に「この会社の特徴はこうである」とは言い切れません。

しかし、銀行から融資を受けるためには、あなたの会社を業種からとらえて、「どんな特徴があるのか」を知っておく必要があります。

融資交渉の中級編・上級編では、銀行に提出する資料の書き方について詳しく解説していますが、そこでのポイントの一つに、「銀行員が稟議書を書きやすい材料を与える」というものがあります。
いくらあなたの会社に将来性があったとしても、それが納得のいく形で銀行員に伝わらなければ意味がありません。
「私の会社はこんなに素晴らしいんだ!」と叫んでみたところで、何の効果もないのです。

そのためには、まず、「銀行員は、あなたの会社のどこに着目しているのか」を知る必要があります。
これが分かれば、その点について、銀行員が納得できるような材料を前もって準備しておけば良いだけのことです。

銀行員が融資案件を検討する際に必ず使っている、とっておきの本をお教えします。
それは、社団法人金融財政事情研究会が発行している「業種別審査事典」です。

この本は、全8巻に渡り、1,135業種もの業種が取り上げられています。
そして、業種ごとに「市場規模」や「問題点」はもちろん、「どのようなときに資金が必要になるのか」といったことまで、実に詳しく解説されています。
全巻揃えると、10万円以上もする高価なものですから、自分で購入する必要はありません。
大きな図書館に行けば置いてあるはずですから、自分の事業に必要なページだけをコピーすれば大丈夫です。

もちろん私の場合は頻繁に使いますので常備していますが、これは銀行と融資交渉を行う上で欠かせない本といえます。
この本を見れば、「銀行があなたの会社のどこに着目し、どの点をどのように突っ込んでくるのか」が一目で分かります。
まさに、融資交渉のバイブルといえる本です。

当然、それを知るだけで銀行員と対等に話ができるわけではありません。
そこに書いてある内容に添って、数字面での裏付けを説明する必要があります。

私のクライアントが融資の申し込みを行う場合は、この本に基づき、前もって私がレクチャーしますが、あなたの場合はそうもいかないかもしれませんが、知っておいて絶対に損はありません。
なぜなら、銀行が質問してくる内容が前もって分かるからです。
それを事前に知ることができれば、時間をかけてでも、その質問の答えを用意することができるのです。

また、説明できそうになければ、文書にして資料として提出すれば良いのです。
これだけでも、銀行側のあなたに対する見方は大きく変わります。

次のセクションでは、この本を簡略化した、業種別の銀行の着目ポイントについて紹介いたします。

●業種別 銀行の着目ポイント

前のセクションで話したように、銀行が着目するポイントは業種により決まっています。
それを事前に知っておくことで、あなたの融資交渉の成功率は格段にアップします。

また、すでに融資取引のある会社だけでなく、起業したばかりの会社が、政策金融公庫や保証協会付きの融資に申し込む場合にも、これを知っておくことは大きなアドバンテージを持つことになります。

別のカテゴリーで、起業家が、政策金融公庫と保証協会に「創業融資」を申し込む際に必要とされる「開業計画書」の書き方について解説しましたが、ここに書き込む内容についても、この着目ポイントを知ることは非常に重要な役割を果たします。

ぜひ、あなたの借り入れにお役立て下さい。

なお、ここでは、全ての業種の解説は行っていません。
また、解説についても、必要最小限のものに留めてあります。
実際は、これの何百倍もの量ですので、より詳しい内容をお知りになりたい方は、「業種別審査事典」をお読みになって下さい。

またこの本は、ある程度専門的な記述がされていますので、財務面が苦手な方や経営経験の不足している起業家の方であれば、読んでもよく意味の分からない箇所もあるかもしれません。
その場合は、私の時間が空いている時であれば、詳しく解説いたします。

しかし、最初から他人の力を借りるようでは、今後のあなたの経営能力向上のためにはあまり良い方法とは言えません。
できるだけ自分の力だけで理解できるよう努力して下さい。

「そんな殺生な…」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、心配にはおよびません。
なぜなら、ここに書いてある全てのカテゴリーの内容が身に付けば、そんな本の内容くらいスラスラ理解できるレベルになるようプログラムしてあるからです。
心配することなく学習して頂ければと思います。

また、ここに挙げた業種の中には、あなたの会社の業種とピッタリ一致するものがないかもしれません。
その場合は、似た業態のものを参考にして下さい。
また、そうした参考書的な使い方だけでなく、業種によって銀行はどんなところをチェックするのかを知る資料でもあります。
これを読むことにより、「銀行がどこまで分析するのか」の概要を知ることもできます。
今後の財務知識の習得に対して、モチベーションのアップにも繋がると思いますので、自分の業種がなかったとしても、読み飛ばすことのないようにして下さい。

それでは、業種別に銀行が企業を見るポイントについてご紹介いたします。

●業種別 金融機関の着目ポイント

製造業

◆繊維
・資産
繊維メーカーは資産がないと見られがち。代表者を含めた資産背景の調査をする。

・在庫・返品
季節ごとの在庫水準および返品の多寡を見る。
さらに、返品率と取引形態、販売先などにも重点を置く。

・出店
新店舗の展開余力を検討する。直営の販売店舗を持つところでは、今後の成長を左右する新規出店ができるかがキーとなる。
バランスシートでは、出店資金調達力(資産力、金利支払能力など)を見る。

◆自動車部品
・系列
下請構造によって収益が変わるため、自動車(完成車)メーカーの系列か、独立企業かを調べる。
現在、下請企業の選別・再編成を自動車メーカーが行っているので注意。

・減価償却
バランスシート上で減価償却不足がないかをチェックする。
設備が多様なため、耐用年数が異なることに注意する。

・在庫
一般的に製品在庫はあまり持たないので、在庫が増加しているときは要注意。不良在庫の場合がある。

◆電気計測器
・研究開発
ハイテク分野に入るため新規製品の開発や製造技術の改良などの研究開発状況を把握する。
特許の有無、独自のノウハウ、技術力を正確に調べる。

・人件費
研究開発のために、人件費負担が大きい。1人当たりの売上高や生産性をチェックする。

・企業家精神
新分野が常に生まれているため、旺盛な企業家精神が要求される。経営者のヒアリングは欠かせない。

◆紙器製造
・原材料費
原材料の板紙は市況製品。製造原価に占める原材料費の比率を見る。
また、仕入先との関係も重要となる。

・外注加工費
多品種少量生産で工程が多いため外注が一般的。金額とともに、支払条件などもチェックする。

・受注先
主要受注先の信用状況によって左右される。
また、取引の形態、受注量も調べる。

◆プリント配線基板
・収益
価格決定力が弱い企業が多い。
製品は多品種、少ロット、短納期を要求される。低収益体質になりやすい。
従業員1人当たり年加工高で調べる。

・機械設備
製品の多様化やコスト削減のため、新鋭設備の導入が不可欠。
導入状況とともに、稼働状況や過大設備になっていないかをチェックする。

・納入先
業界構造を調べるとともに、生産品目(民生用/産業用)も見る。

◆金型製造
・生産性
他の産業用機械製造業に比べて、従業員1人当たりの機械装備率が高い。
新鋭機械の導入と稼働状況をチェックする。

・収益性
加工単価は技術のレベルが直接反映される。
収益のポイントは、加工料×工程数となる。

・情報力
単に納入先との結びつきだけで、安易な経営に終始せず、海外展開を含めた積極的な経営をめざして情報収集をしているかを見る。

出版・印刷業

◆印刷
・競争力
印刷業者は数も多く設備の良し悪しで競争力が決まる。
バランスシートでは、機械装備率によってチェックする。

・受注先/仕入先
主な受注先を必ず見る。印刷会社の信用は受注先によって決まるといってもよく、年間受注額、取引年数は重要な尺度となる。

・外注加工費
バランスシート上でチェックされる重要な項目。
同業者間での外注が比較的盛んなため、製造原価に占める外注加工費の割合を見る。
この比率が高く、粗利益が低い場合は出血受注ととられることもある。

◆出版
・出版物
出版社は企画が命。企画には当たりはずれがあり、浮き沈みが激しい。
再版を重ねるロングセラーズがあるかを見る。

・在庫/返品
デッド化した在庫がないかを調べる。
同時に出版物の陳腐化の度合いによって在庫が変動するため、陳腐化の早い雑誌と遅い書籍の比率を見る。
返品率〔=(総売上高-純売上高)÷総売上高〕の目安は30%。当然低いほうが良い。

・宣伝力
業績を左右するのは宣伝力。広告・宣伝、販路の拡充に努力しているかを見る。

加工業

◆非鉄金属
・操業度/機械設備
機械の稼働状況を見る。24時間操業が一般的で、システム化、ロボット化の状況をヒアリングする。
過剰な設備となっていないか、受注能力以上の設備で収益を圧迫していないかをリース料の増減などからチェックする。
 
・収益性
成形加工技術とともに売上高総利益率を見る。
このとき、操業度、不良品率、固定費なども調べる。

・受注条件
下請け企業が多いため、受注条件は最重要点。
家電大手などの一次下請か下層下請か、加工単価はいくらかを見る。

◆機械切断
・資産
運転資金の需要を見る。
親企業の生産調整、手形のサイト、支払いの遅延などによって発生する資金をチェックする。

・設備
受注先の要請などからコストダウンが求められる。
そのための設備計画を聞き込む。

・粗利益率
業界平均(25%前後)と比較する。あまり低いと受注獲得のためにダンピングしているときがある。

◆プレス加工
・償却
金型の耐用年数は通常2年。短期間であるため償却費負担は大きいので、償却不足がないかバランスシート上でチェックする。

・機械設備
精密加工には金型の精度が重要。工場実査により、自動化・省力化、金型取替え状況、稼働状況を見る。

・多角化
下請体質、低付加価値のため受注先・親企業に左右されやすい。
収益確保の方策のヒアリングが重要。業務の多角化は有効な材料。

卸売業

◆鉄鋼卸
・不良債権
販売先が小規模な場合、不良債権が発生しやすい。
売上債権や長期貸付金などの内容に注意する。

・市況品
市況商品のため、価格変動が激しい。売上高や収益の動向をよく見ておく。

・資産
資産状況を調べるとともに、遊休土地の活用法など事業多角化のアイデアもヒアリングする。

◆酒類卸
・特約店
有名メーカーの特約店であるか否かは重要なポイント。
マージン率や商圏など、競争力に直接響く項目を見る。

・商品
酒類専門か食品も扱うのかなど品目構成によって収益構造が異なってくる。
商品構成を十分に把握しておく。

・値引き/リベート
リベートが慣習化されている。低マージンの業界なので収益に影響するので、その多寡に気をつける。

◆電子部品
・人材
要員数、採用状況を見る。
最新の情報や技術内容まで話せる人材が決め手。

・在庫
ライフサイクルの短い製品が多いので在庫は増加しがち。
商品回転率と売上高総利益率でチェックをする。

・取引条件
メーカーとの関係、リベート、保証金などを調べる。
系列商社、独立系商社、輸入商社の区分の把握も重要。

販売業

◆ディスカウントストア
・薄利多売
商売は薄利多売が特徴。
商品の粗利益率と在庫回転率を同時に見る。

・経営効率
パーヘッド売上高、坪当たり販売効率の推移をチェック。
パートなどによる経費圧縮の取り組み状況も見る。

・融通手形
小規模業者は即金即仕入れ、即販売が原則。
支払手形・受取手形が両建で増加するケースは、資金繰り悪化に伴う融手操作も予想される。

◆ブティック
・効率性
売場面積当たり売上高・従業員1人当たり売上高を競合他社などと比較してみる。

・棚卸資産
顧客の嗜好が多様なため、デッドストックが発生しやすい。
在庫水準と商品回転率、さらに粗利益率に注意する。

・クレジットカード
カードを取り扱っているかは案外ポイントとなる。活用状況を調べてみる。

◆木材
・収益力
需要が長期的に落ち込んでいるため、売上高はあまり伸びていないところが多い。
人件費、運送費、倉庫代などのコストを見る。

・在庫
在庫は1ヶ月が平均。適正在庫に留意する。
市況変動も加味して在庫管理能力にも注意する。

・手形
決済は手形が主体。融手の発生に注意を払う。

◆食品スーパー
・集客力
スーパーの販売は集客力が決め手。
集客力は、品揃え、適正な価格、他店との差別化で決まる。

・労働生産性
売上高人件費率や労働分配率(人件費/売上総利益)を見る。

・立地条件
売上に大きく影響するため、商圏内の人口推移、人の流れ、競合店などを見る。

◆中古車
・仕入れ
商品回転率と粗利益率のチェックと同時に、良質車を仕入れられる目利きがいるかを見極める。

・情報化
パソコン、通信機器などの設備の導入状況を見る。
情報武装化が遅れているところは競争力が低下する。

・売上債権
個人売りが主流なので、受取手形残高をチェックする。
特に同業者間の手形は注意する。

◆家具小売
・商品
主力商品は何か、仕入れ方法(委託方式か買取方式か)や商品回転率もチェックする

・坪効率
家具は展示スペースが必要なので、有効に売場を使っているか坪効率を見る。
坪当たり売上高の業界平均は約1.2百万円。

・店舗
生業的小売店は転廃業が多い。
店舗の新設や増改築などの投資意欲を聞く。

サービス・その他

◆居酒屋
・成長性
浮き沈みが激しい業界。店内の雰囲気や活気などをチェックする。
新規出店状況やチェーン展開状況を見る。

・経営者
近代的な経営センスを備えているか、コスト管理を十分行っているか、将来の夢などを聞く。

・収益性
平均的指標と比較してみる。
業界平均は売上高利益率40%、売上高人件費率30%、売上高営業利益率3~4%。

◆ファミリーレストラン
・店舗 
多店舗化でスケールメリットを追求するところが多い。
その際、各店舗ごとの採算、財務内容や資金調達力を調べる。

・システム化/マニュアル化
多店舗化に伴うシステム化、マニュアル化状況を見る。
接客マナー、従業員管理、食材調達などチェック項目は多い。

・効率
標準指標と比較する。
標準は平均客単価1,000円以下、客席回転率5回前後、人権費百万円当たり売上高は3.5百万円。

◆ソフトウエアハウス
・人件費
売上原価中の労務費、販管費中の人件費を合計した人件費を見る。
業界平均売上高人件費率は38.4%。

・受注形態
売掛サイトが長い場合が多いので注意する。
派遣の場合は比較的短く、通常翌月、請負の場合はソフト完成後の支払いが多い。

・人材
人材が決め手。技術者の定着率、募集状況、研修体制にも着目する。

◆広告代理店
・人的つながり
仕事は人につくため、人的つながりを見る。
業界の慣習や業務は煩雑なことが多い。

・受注
有力広告主の有無、業種・ロットの受注バランスを見る。
季節性や景気変動による影響もある。

・媒体
代理店の信用度、資金力によって有力媒体との取引条件が変わる。
直接取引の有無も要チェック。

◆ガソリンスタンド
・販売力
市況産業であるため、販売量の時系列把握が欠かせない。
業界では1SS当たり月間販売量80klが採算ライン。

・環境
SSは全国に6万ヶ所あり、7割が赤字である。
規制緩和、建設自由化で事業環境に厳しさが増している。

・制度融資
敷地立体化利用、統廃合のための設備資金の調達状況、(社)全国石油協会の利用状況なども調べる。

◆建築工事業
・受注先
大手ゼネコンの下請けが多い。
主要受注先を調べるとともに、回収代金のトレースも必要。

・粉飾
官公庁工事を主体としている業者は赤字決算が受注に影響するため、粉飾するケースがある。
完工時期の繰上げ、完工高操作などを見る。

・資金繰り
資金需要を見る。
工事請負代金は着工時、中間時、完成時の3分割で受け取るが、業者への支払は先行で立て替え払いが発生する。

◆個人開業医
・収支状況
診療科目によって差が出るが、平均値と比較してみる。
有床病院は年平均医療収入99百万円、無床の場合は63百万円。

・定性面
医師の名声、技術、信頼感など世間一般の評判は欠かすことができない。

・事業主勘定
バランスシート上で、この項目が多額であれば要チェック。
事業主貸勘定には院長報酬、税金、子弟の入学金支払など、事業主借勘定には家賃収入、受取利息などが含まれる。

◆専門学校
・帰属収入
売上は帰属収入(入学金、授業料)が中心。
チェックポイントは、帰属収入以外の臨時的な収入や減価償却の実施状況。

・前受金
前受金は「翌年度」の授業料、入学金、実験実習料施設設備金であるため、前受金以上の現預金があるかをチェックする。

・固定資産
土地・建物は所有が原則なので注目する。
B/Sの配列も固定資産→流動資産の順に表示されるのが特徴。

◆フランチャイズチェーン
・取引条件
本部との条件(加盟金、ロイヤリティなど)が特に重要。
本部の実力、経営指導力なども同時に調べる。

・売掛金・買掛金
カネの流れとともにモノの流れも十分につかむ。
本部から加盟店への一括納入、本部指定問屋から仕入れて直接支払うなど形態はいくつかあるので把握しておく。

・投下資本
加盟店の投下資本の回収期間は3~5年。
計画通り利益が上がっているかはチェックポイント。

◆トラック運送業
・運送効率
保有車両の台数と稼働率を分析。保有車両1台当たりの営業収益(営業利益)を見る。
業界では監督官庁に実働率と日車当たり営業収益を報告しているので、この数字を聞き込む。

・労働生産性
人件費率が高いので、労働生産性は重要な指標なので注意をする。

・車両償却
償却は適正か。新車両の導入状況もチェック。

◆ビジネスホテル
・人脈とコネ
人脈とコネが有利にはたらく商売。
オーナーが地元の名士や資産家であることも多く、その人脈を探ってみる。

・客室稼働率
客室単価の差は少ないため客室稼働率がそのまま売上に響く。
周辺のホテルや業界の平均稼働率と対比し、集客力も判断する。

・設備投資負担
総資産の80%が固定資産の産業。
借入依存度、投下資本回収期間などの指標を同種同規模ホテルと比較し、過大投資か否か判断。

◆不動産業
・金利
金利の薄価算入の有無を見る。
借入で不動産を取得している場合が多いので十分にチェックする。

・買掛金/売掛金
不動産売買は現金決済が原則。通常、売掛金・買掛金は発生しない。
計上されている場合は、十分に内容を把握すること。

・納税
税制の変更が大きく収益に影響する。
納税状況の把握は重要。

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