失敗しない起業とは?
~ ゼロから着実にスタートするために ~
● はじめに
私が相談を受ける起業家の人達は、自分の大成功を願っているのはもちろん、
それ以上に、「失敗しない起業の方法」や、「着実なスタートアップの方法」を知りたがっています。
起業家の多くは、大成功した経営者の話を聞いても、「へぇ~、すごいね」と他人事で終わってしまうことが多いのです。
彼らが、本当に知りたいのは、
何も持ってない自分と、同じような人が成功するまでに、いったいどんな困難とぶつかり、
どうやって切り抜けてきたかなのです。
そんな起業家である「あなた」に向けて、私なりの経営ノウハウを述べてみようと思います。
私自身も、「ヒト」「モノ」「カネ」全てが不足した状態から起業しました。
その足りない資源を、どうやって手に入れたかについても、話したいと思います。
今後の皆さんの行動の参考にしてもらえたらと思います。
私がいつも起業家に言うことがあります。
それは、「できるだけ短期間に、小さくてもいいから、成功体験をする」ということです。
なぜか?
それは、成功体験こそが、次の成功を導くからです。
小さな成功体験を積み重ねることが、大きな成功を生むきっかけとなります。
小さくても成功すると、自分の仕事が面白くなります。
面白いと感じれば、次の成功に向けてのモチベーションも上がってきます。
起業家にとって、モチベーションの向上は、成功するために、なくてはならない重要な要素なのです。
小さくても良いですから、「できるだけ早く成功体験をする」ことが、失敗しない起業の秘訣です。
特別なアイディアは必要ない
● シンプルなビジネスモデルをつくる
新しく事業を考える人が陥りやすい失敗があります。
それは、ビジネスモデルが複雑になりすぎてしまい、「顧客に理解されにくいもの」をつくってしまうことです。
商売の大原則は、「より安く仕入れて、より高く売って、儲ける」ということです。
そのシンプルなビジネスモデルを実行するために、
お客さんや取引先の情報をキャッチするという、シンプルなマーケティングモデルを確立するということです。
物を作って売り、その利益で儲けるには、
仕入れコストや流通コスト、販売コストよりも、高く売れば良いわけです。
そのためには、より安く作ってくれる「取引先」、より安く作れる「場所」を探すことが大切であり、
より高く買ってくれる「人」に、より高く売れる「場所」で売ることが重要なのです。
シンプルに考えれば、これほど簡単なことも、事業計画を作っている本人には、理解できないケースが多く、
細部に気をとられたあげく、儲からない事業プランを作ってしまいます。
起業家のアイデアの多くは、思いつき程度のものか、苦しまぎれのものであり、
単なる「妄想」であることが多くあります。
妄想には、自分の「売り」が生かされていないことが多く、まったく未経験の業界のものであることも多いのが現状です。
まず、自分の「売り」を見つけ、妄想を捨て、自分に出来ることを考えることです。
その結果、ある「モノ」を売ることにしたとしても、それだけではまだ「商品」とはいえません。
商品とは、売れる形(価格、パッケージ、マニュアル等)になって、初めてそういえるのです。
そのためには、まず市場調査を行い、「販売価格」や「製造原価」を確定しなければならなりません。
それと同時に、「販路」を見つけなければなりません。
この場合、注意することを2点挙げておきます。
■ 販売価格を決めるのは、市場であり、消費者である。
いくら理想が高くても、売れなければ意味がない。
■ 代理店を通してモノを売る場合、卸値は、販売価格の4~5割と見積る。
問屋は、いくら商品が良くても、儲からなければ扱いたがらない。
こうして、自分の商品がいくらで売れそうなのかを調査し、
大体の見当がついたら、逆算して、製造原価や卸値をはじき出します。
原価が高すぎるようなら、原価を落とす交渉を、取引先と詰めていきます。
もしくは、販売価格を上げても売れる方法がないか、考えてみます。
こうした一連の作業において、その行動の障害となるものが一つあります。
それは、「プライド」です。
特に、大企業出身者や、高い地位にあった人、リストラされた人にその傾向は強く見られます。
起業する以上、昔の会社の看板などまったく通用しないことを、認識しなければなりません。
ハッキリ言いますが、あなたはどこかの馬の骨であり、誰も知りませんし、信用もありません。
起業家は、最初は皆、馬の骨なのです。
過去は過去、大企業も辞めたら無関係。それ以上でもそれ以下もありません。
過去の肩書きや実績は、会社のものであり、自分ひとりのものではありません。
あなたに出会う誰もが、「あんただれ?」「なにができるわけ?」と思っているはずですし、
それを感じるからこそ、自分を認めてもらえるよう、必死に頑張るしかないのです。
過去の栄光や肩書きは、自分の気持ちの中からさっさと捨ててしまい、
まずは一人でも、一社でも多く、馬の骨を拾ってくれるところを探すしかないのです。
信用は、会社の看板や肩書きが与えてくれるものではなく、自分で仕事をしながら、築いていくものなのです。
重要なのは、「自分の今いるポジションをしっかりと把握し、自覚する」ことです。
そうすれば、おのずとあなたがこれからやらなければならないことは見えてくるはずです。
あなたはこれから、自らの手でビジネスを生み出そうとしているのです。
過去のくだらないプライドではなく、良い意味でのプライドをもって欲しいと思います。
そうすれば、やがて周囲が、自然にあなたを認めてくれることになると思います。
● 自分のできることを見つける
まず、今までの経験や特技、資格などを紙に書き出してみます。
これを書き出すことによって、「自分の可能性」と「自分のスキル不足」が把握できます。
出来ることが何もない人もいるかもしれませんが、その場合は、「何ができそうか」でも良いです。
そうすれば、「どんなスキルを身につければよいか」「どんなスキルを持っている人を協力者にすればよいか」が、はっきりイメージできます。
したがって、自分の持っている人脈についても、書き出す必要があります。
「自分の棚卸し」は、ビジネスプランと自分のスキルに、ギャップをつくらないための、重要な作業となります。
より現実的に考え、「自分でできるかどうか」を自問自答してみます。
ギャップがあるなら、企画段階から、専門知識のある人に協力してもらうか、自分で勉強してスキルを習得するしか方法はありません。
自分の棚卸しは、起業ネタを見つける作業であると同時に、
「自分自身が、起業で何を実現したいのか」という、目的を明確にさせるプロセスでもあります。
この準備段階で、あなたにとっての「成功の形」を、具体的にイメージします。
人により、「成功の形」の大きさは、違っていて当たり前です。
億万長者になりたい人もいれば、
サラリーマン時代と同じくらいの収入を得ることが出来れば、後は、自分の自由な時間が持てさえすれば良いと考える人もいます。
起業の目的が、コンパクトであるからといって、志が低いと言うことではありません。
大きなリスクを取ってビッグビジネスを手がけるのが、必ずしも幸せとは限りません。
失敗が怖いのなら、我慢できるレベルの失敗で済むようなビジネスモデルを考えれば良いわけです。
経営資源の不足している起業家にとって、自分のやりたい事と、今できる事に相違があるのは当然であり、
最初は、自分の身の丈にあったビジネスから、スタートすべきです。
無理して、初めからすべてを揃えようとすれば、スタートの時点から経営が悪化することになります。
また逆に、足りないモノが多いからスタートできないという人は、いつまで経っても事業をスタートできません。
まずは、「今自分が持っているもので、いかに勝負していくか」を考えます。
これは、起業における、基本中の基本です。
一度、失敗してみればよく分かることですが、
慎重派の考え方を持つ起業家が厳守しなければならないのは、下記の2点です。
■ 利益が出て初めて必要なモノに投資し、徐々に、自分の本来したかった事業に手をつけていくこと。
■ 新しい事業を始めるときは、失敗するとしたらどんな失敗が考えられるか、いくらの損失が出るかを計算しておくこと。
その額が、自分の手持ち資金の範囲内であれば、その事業に取り組んでみること。
もちろん、業種によっては、スタートの段階で借り入れが必要な場合もありますし、商機を逃さないためには、先行投資も必要な場合もあります。
失敗しても腹がくくれる人はそうしたらいいですし、怖いと思うなら、自分でまかないきれる失敗しかしないような、自分サイズのビジネスをすれば良いのです。
私自身も、かなりの慎重派なので、独立当初は、自己資金と利益の範囲内で事業に取り組みました。
何度も失敗を繰り返しましたが、幸いにも大事に至らなかったのは、無くなってもいいレベルの投資しかしなかったからです。
ただし、この方法だけでは、会社を大きくすることは出来ません。
いつか必ず、博打に近い経営判断が必要になる時が来ることを明記しておきます。
アイディア発想のコツ
まず、何を取り上げて、フォーカスするかを考えます。
・あなたの趣味に関するもので、何か無いか?
・生活の中で、不便に感じられているものは無いか?
・あなたの経験や専門分野を、別の業界に当てはめられないか?
・競争が激しくなく、旧態然とした市場は無いか?
次に、アイデア発想のコツについて説明します。
これから述べる方法は、事業開発や商品開発などの企画の現場でよく活用されている方法です。
あなたの売りたい「商品」を、これから説明する思考展開法に当てはめていくと、どれかの項目でひらめくはずです。
見つかるまで何度でも当てはめてみましょう。
■ エクステンション
すでにあるヒット商品の顧客層を、「年齢」を軸に、上下に動かすことから発想する方法です。
ヒット商品の顧客年齢を想定し、同じ商品を、別の年齢層の市場にいる顧客の好みに合わせることで同一効果を狙います。
例:毛糸のパンツ
本来、体を温めることが目的の毛糸のパンツは、子供と老人用として定着化していましたが、若い女性をターゲットにしたデザインのものがヒットしました。
これは、生足&ルーズソックスのブームを作ったコギャル世代の女性にフォーカスしたことで、売り上げが伸びたといわれています。
■ トランスファー
ヒット商品を、横にずらすことから発想する方法です。
海外や地方でヒットしているものを持ってきたり、女性向けのモノを男性用にしたり、
人間にヒットしているものをペット用にしてみます。
海外のホームページを見るだけでも、ビジネスのヒントは無限にあります。
例:男性用化粧品、タカラの「バウリンガル」
■ マトリックス
発想したいものの属性を書き出し、それぞれの属性のうち二つを掛け合わせることから発想する方法です。
既存の商品にはない新しい組み合わせで、何か無いかを考えます。
例:食べ物を発想する場合
「黄色くて辛い食べ物」はカレーだが、「黒くて甘い食べ物は」はどうか?と考えます。
■ 関連予想法
流行しているモノの普及が進むにつれて、その関連で需要が活性化するモノを予想する方法です。
まず、先端商品を中心にして、売れ始めているモノを考えます。
成長率の高い商品であれば、その周辺に関連するものを見つけることによって、息の長い商品になりやすいからです。
最先端の技術を要するビジネスモデルは、儲けるまでに膨大な時間とリスクが伴いますが、その関連商品であれば、資金投資額も少なくて済みます。
例:携帯電話 → ストラップ、着メロ配信サービス
■ ブレーンストーミング法
これらの発想のコツを分かった上で、アイデアをより現実的にブラッシュアップさせることのできる技術が、ブレーンストーミング法です。
これは、企業の企画会議や研修でも良く使われる方法で、アイデア発想のためには最良の手段と言えます。
数人のグループを作った後、まず課題を決めます。
進行役は、出されたアイデアの課題や進行を行います。
↓
先ほどの4つの発想法を使い、自由に発想し合います。
ここで注意するのは、出されたアイデアを絶対に批判しないということです。
より多くのアイデアや発想を自由に出し合います。
↓
多くのアイデアが出される過程で、それらのアイデアを組み合わせ、改善し、発展させることによって、優れたアイデアを作っていきます。
一人より数名で取り組むことにより、アイデアの元となる情報源が増加します。
発想は、自由奔放に行うこと。 後で意見を集約すればいいのです。
これらの方法を使えば、アイデアは面白いぐらいに湧いてきます。
発想のコツさえつかめば、今の仕事やこれからやろうとしている仕事が面白くてたまらなくなるはずです。
すぐに思いつかない人は、すでに売れている商品が、この4つの発想法のどれに当てはまるかを分析することで、アイデア発想のトレーニングが出来ます。
「なぜあの商品が売れているのか?」「どの発想法に当てはまるか?」
を考えることで、発想のコツが身につくはずです。
他人の商材を売る
起業家の場合、資金やノウハウが不足しているため、新たなビジネスを立ち上げることが難しいケースが多々あります。
特に「失業中であり、再就職が難しいから起業したい」という人は、起業を前提に準備してきたわけではないので、具体的なプランが無いことがほとんどであり、同時に、時間的余裕が無い人がほとんどです。
こうした人の最優先課題は、「いかに早く事業を立ち上げて、生活費を稼ぎ出すか」です。
そのためには、他人の手がけているビジネスの一部分や、研究成果を応用して、自分の事業として手がけることを考えてみることです。
技術開発や商品開発を自分で手がける必要が無いため、取り扱っている商品に、開発費や時間を掛けることもありません。
スピーディーかつ低リスクで事業を手がけることが出来ます。
● 商材の選び方
さて、その「商材」の選び方ですが、最低限注意しなければならないことがあります。
1. 販売経費はどれくらいかかるか
販売するためには、どれくらい広告宣伝費や営業経費がかかるのかを算出し、十分な利益があるかどうか検討します。
2. 入金と支払いのサイトは大丈夫か
支払いサイトが短く、入金サイトが長ければ、運転資金が必要になります。
また、商品が売れれば売れるほど、大きな運転資金が入用となり、同時に資金の回収リスクも高まるので注意を要します。
3. 商品供給はスムーズか
安定的に商品供給が可能なのか?
自分が販売したいだけの少ロットでも供給してもらえるのか?
受注が増えた場合も対応できるのか?
こうした面での話を詰めておかないと、後々、お客さんや取引先の信用をなくすことになります。
4. 値段は適正価格かどうか
あなたが想定している販売価格は、消費者に対して本当に売れる値段なのかどうかを調査し、仕入値段とのバランスを調整します。
5. 市場において、商品自体の寿命はどのくらいあるのか
どんな商品にも「ライフサイクル」があります。
ライフサイクルは、4段階に分けて考える必要があります。
● 商品のライフサイクルについて
1. 導入期
認知度が低く、商品を知ってもらうために、多額の広告宣伝費を要します。
また、未完成品も多いため、思わぬ出費が必要となることもあります。
2. 成長期
市場に認知されだしたため、商品の売り上げが上がっていきます。
それほど、宣伝をしなくても購入者が増え、それに伴い、競合他社も参入してきます。
商品価格は、競合の参入により、下がり始めます。
3. 成熟期
広告しなくてもリピート客が商品を購入してくれ、収益性は上昇します。
しかし、需要より供給が多くなるため、価格競争が激化し、商品価格も崩れてきます。
4. 衰退期
需要が縮小し、淘汰が始まるため、シェアの小さな会社や差別化の出来ない商品は、撤退を余儀なくされます。
商品に改良を加えないと、継続が難しくなるケースが多くなります。
● ライフサイクルの見分け方
あなたの手がける商品が、ライフサイクルのどの位置にあるかを知るためには、次の点をチェックしてみましょう。
・同じ時期に競合他社の参入が目立ったのはいつか?
・いつごろから、その商品を目にするようになったか?
・類似品が市場に登場したのはいつか?
・市場価格が下がり始めたのはいつか?
<短期間で爆発的にヒットした場合の売上高の推移>
<長期間売れ続ける場合の売上高の推移>
一般的に、導入期の期間と、成長期・成熟期の期間の長さは、正比例するといわれています。
短期間で爆発的にヒットしたものは、すたれるのも早いのです。
● 儲けるには導入期を狙う
他人の商材を売る場合、どの時期の商品を扱うべきかは、いろいろな考え方がありますが、ライフサイクルの後半になるほど、儲けにくくなるため、手がけるなら、「導入期」か「導入期前」の商品を狙うべきです。
まだ他社の参入していない市場であれば、収益性もあり、事業規模の小さい起業家の場合は、最もリスクが少ないからです。
ただし、導入期は、市場に認知されるかどうかというリスクと、認知させるための初期投資を要するというデメリットもあることを肝に銘じておくことが必要です。
失敗する起業家の多くは、「売れているから安心だ」と成長期後半や、成熟期にある商品に手を出し、最初から儲からない仕組みの中で戦い続け、最後には力尽きてしまいます。
この点は、陥りやすい間違いですので、注意して下さい。
● ライフサイクル後半の商品のポイントと売り方
もう一つの方法として、ライフサイクルの後半に差し掛かっている商品に改良を加えることで、新しい商品展開をするという手もあります。
ライフサイクル後半の商品の場合、消費者に認知されやすく、売りやすいというメリットがあります。
うまく既存の商品と差別化できれば、十分な勝算があります。
ただし、その場合は、その商品の本来のライフサイクルよりも短くなる傾向があるので、注意しなければなりません。
また、すでに類似品が大量に存在する商品であるため、綿密な販売戦略と製造コストの削減が必要となります。
次に、「成熟期」や「衰退期」に入ったビジネスに、新たな寿命を授けるテクニックを列挙します。
1. 利便性を付加する
当たり前の商品・サービスでも、それに、利便性向上のためのサービスを付加すれば、
消費者には大変ありがたいものです。
2. こだわり商品に特化する
市場が成熟すると、消費者は、より安い価格の商品を求めるようになります。
しかし、その一方で、贈答品などのように、特別な機会に必要な商品を求めます。
消費者や一部の消費者たちは、高級感のある商品を選ぶ傾向があります。
3. 商品をパッケージで販売する
単品では売りにくくても、ほかの商品と組み合わせることにより、売れる可能性もあります。
消費者の利便性を考慮した組み合わせを考えると良い場合があります。
4. 認知度が高い商品に相乗りする
人気のある商品に乗って、商品パッケージや売り場を考えます。
5. 仕入れコストを削減する
仕入れコスト、製造コストを大幅削減することによって、取り扱い業者は利益率が高くなるため、あなたの商品を優先的に売ってくれるようになります。
儲かるビジネスモデルを考える
一生懸命働けば、いつか儲かるというのは幻想に過ぎません。
儲かる仕組みができていなければ、永遠に儲かることは無いのです。
儲かっているビジネスには、いくつかの共通点があります。
● 儲かるビジネスの共通点
■特定層の人たちの指示を得ている
儲かっている商品やサービスには、それを支持する特定層の顧客がいます。
特定層の支持を得ることが出来て初めて、その周辺の層の顧客にも支持されるようになります。
大事なのは、まず特定の絞り込まれた層の顧客から、熱烈な支持を得ることにあります。
■自分も欲しいモノを売っている
あなたの商品やサービスが売れるかどうかの目安は、「自分も欲しいかどうか」です。
「この商品は売れるに違いない」とか「売らなければならない」という思い込みを捨てて、冷静に、「自分が欲しいかどうか」を考えてみることです。
■セールスポイントが直感的に伝わってくる
自分のビジネスを、20秒以内で分かりやすく説明できるか?
セールスポイントが、3つ以内であるか?
顧客から見て直感的に分かりやすい商品・サービスでなければ、消費者は興味を示しません。
ビジネスモデルは出来るだけシンプルに整理し、消費者に欲しいと思わせるもので無ければなりません。
ネーミングにしても、印象に残るものにすべきです。
● ターゲットを絞り込むとはどういうことか
ターゲットを絞り込まなければ、顧客のニーズにあった商品を作ることなど出来ませんし、顧客の心をひきつける広告を打つことも出来ません。
あなたは「何を、誰に売ろう」と考えているのでしょうか?
「何を」とは、商品そのもののことではありません。
お客さんが、あなたの商品を購入することに対して得られる「メリット」のことです。
あなたの商品のどんな要素に魅力を感じるかにフォーカスしなければなりません。
「誰に」とは、あなたの商品を、誰が、何の目的で、いつ、どんな風に利用するために
購入するかを考えなければなりません。
こうして考えることが、顧客ニーズ発掘の最初のステップです。
「顧客の立場に立って物を考える」とは、こういうことなのです。
ターゲットとなる顧客は、どんどん絞り込むことです。
絞り込みながら顧客のニーズをくみ上げると、儲かるビジネスの形が見えてきます。
ターゲットを絞るということは、狭い市場にアプローチすることだと錯覚する人がいるかもしれませんが、それは間違いです。
具体的にターゲットを絞り込んでいくと、いくつかの顧客層が見えてきます。
そして、それぞれの顧客層に対し、的確なアプローチをすればよいのです。
顧客の心をつかむアプローチをしなければ、商品を購入してもらえません。
逆に、この点をしっかり考えることにより、今まで見えなかったアプローチが見えてくることもあります。
このあたりのことを、具体例を通して説明します。
あなたが、大豆を作っている農家だとします。
当然、競争相手の農家は無数にありますが、これを「大豆の栽培セット」として、大豆の種、土、肥料、鉢、栽培マニュアルを、一式にまとめて売り出すことにします。
これまでの大豆は、「食」という市場で売られていましたが、それを「教材」という市場に売り出すのです。
こうすることにより、今までとは異なる顧客に対し、別の付加価値の商品を売ることとなり、まったく別分野での商品に生まれ変わるのです。
さて、そこで、この商品を「誰に売るか」ですが、まず考えられるのは、家庭菜園が趣味の中高年世代です。
彼らに「何を売るか」は、「栽培に手間がかからない」という「利便性」と、「食べておいしい」という「食感」です。
それにピッタリ合った大豆の品種を選ばなければなりません。
次に考えられるのは、小学生の教材として売るということです。
「誰に売るか」はもちろん小学校です。
「何を売るか」については、学校の教材である限り、必ず芽が出なければなりません。
つまり、「100%芽が出る」という「学習効果」です。
味などは、どうでもいいわけで、そのためには、発芽率の高い品種の大豆を選ばなければなりません。
さて、ここまで考えて、家庭菜園が趣味で「食」に興味があるターゲットに対し、別の商材はないかと考えます。
大豆以外に、手軽にみんなが食べたいと思うものはないか?
そこで思いつくのが、ビールのつまみとしての「枝豆」です。
枝豆の栽培セットを作っても、ニーズはあるように思います。
枝豆用の栽培セットは、たしかにビール好きな人や、その妻が興味を持ちそうだと思いますが、そこで思考がストップしてしまうともったいないのです。
枝豆セットを、「誰か他のターゲットに売り込めないか」と考えます。
そこで思いつくのが、ビールメーカーです。
「何を売るか」については、ビールの販促品としての「広告効果」です。
この広告効果に焦点を当てた企画書を作成し、ビールメーカーに持ち込めばよいのです。
このように、自分の商材を考える場合、まず、「誰に売るか」にフォーカスすることによって、商材はいくらでも変化します。
商材を絞り込む前にまず、ターゲット層を絞り込むこと。
これが、売れる商品を見つけるコツです。
こうして、さまざまな仮説を立て、ターゲット層にヒアリングしながら検証を繰り返し、商品を絞り込んでいきます。
「誰に売るか」によって、どこで売るべきか、パッケージのデザインはどうすべきかといった具体的イメージを膨らませていくのです。
次はマーケティングについてですが、この栽培セットを、どこにどんな広告を出せばよいのかを考えます。
まず、ターゲットを、「家庭菜園を行っている主婦」にフォーカスします。
ここで、さらなる絞込みができなければ、「主婦がよく読んでいる雑誌に掲載しよう」と安易な選択をしてしまい、発行部数の一番多い主婦向けの雑誌に、「誰でも自宅で栽培できます!」という広告を載せてしまうことになります。
これでは、雑誌を買った顧客は、ダイエットや化粧品の広告に混じった、異質な広告を眼にすることになります。
結果、「私には関係ない」と読み過ごされてしまい、広告費用だけが高くつき、悲惨なこととなってしまいます。
ではどう考えるか?
同じ家庭菜園とは言っても、家計の節約のためにやっている人と、こだわりを持って野菜を作っている層では、平均所得が異なることに気づきます。
家計の節約のためにやっている人であれば、味よりも値段が安いということが重要になるので、ホームセンターなどと競合することになります。
これでは、価格競争に巻き込まれることになり、収益を上げることが出来ません。
そこでターゲットを絞り、「こだわりを持つ高所得者層」に焦点を当てます。
そう考えると、主婦向けの週刊誌より、専門誌のほうが効果があることが分かります。
どうせなら、少し高くなるかもしれませんが、無農薬栽培できるようなセットにして、
そのマニュアルも入れておくことにします。
こうして、あなたは、家庭菜園のノウハウを掲載している専門誌に広告を出すことにします。
キャッチコピーは、「こだわりの逸品を栽培したいあなたに!」
顧客層を絞った場合と、そうでない場合の差は、歴然としていることに気づかれたと思います。
広告費用にしても、発行部数に比例するため、後者の方が圧倒的に費用対効果が高いのです。
その上、高価格でも付加価値さえあれば購入してくれる顧客層なので、利益率も高く、今後の展開も楽しみです。
このように、「儲かる商品」と「儲からない商品」の違いは、ちょっとした発想の差だということに気づかれたと思います。
「誰に売るか」を突き詰めて考えることによって、あなたのビジネスモデルを、儲かるものにすることが可能なのです。
売れる仕組みとは?
ビジネスの世界では、同じ地域で同じものを売っているのに、売上に大きな差が出ることがよくあります。
もちろん、会社の知名度はどちらも高くなく、他の条件もほとんど同じ場合です。
なぜ、このような売上の違いが出るのか?
理由は簡単です。 「売れる仕組み」を理解しているかどうかです。
売れる仕組みを作るためには、「商品」について、以下の順番で具体的に掘り下げていく必要があります。
「ホームページで梅干を売る場合」を例にとって説明してみます。
1.「あなたの顧客は誰なのか」を具体的に絞り込む
梅干といえば、食卓になくてはならない品です。
普通に考えれば、日本全国の主婦をターゲットにすればいいと思うかもしれませんが、
それではダメです。
まず考えるべきことは、
「顧客がインターネットで商品を探して購入する目的は何なのか?」という点です。
梅干がほしいのであれば、近くのスーパーで買ったほうが、手間もかからないし、送料も考えれば安いはずです。
そうした主婦をターゲットにしても、儲かるハズがありません。
顧客がインターネットでモノを探す目的は、自分の好みやこだわりに合致した商品を見つけるためです。
「梅干のような日常的商品にこだわりを持つ」とはどういうことでしょうか?
このケースでは、「贈答品」として、梅干を探している場合が多いのです。
つまり、あなたの顧客は、ネット上で贈答用として梅干を探している人たちです。
2.顧客の心の奥に潜む「本当の欲求」を探し出す
友人や取引先に贈答品を送る人の、潜在的な欲求は何でしょうか?
贈答品というのは、日ごろ世話になっている人に対して、「私は、あなたのことをこんなに大切に思っています」というメッセージを伝えるためのものです。
このように考えると、顧客の本当の欲求とは、
「ケチったと思われたくない」
「実際の値段以上に価値がありそうに見える商品がいい」
ということです。
3.価格も含め、「他社よりも選んでもらえる商品」を作り込む
こうした用途で贈答品を選ぶ場合、顧客にとって商品が良いものであるということは当然ですが、それ以上に「価値があるように見える」ことも重要です。
まず、パッケージに高級感を出すことによって、支払った価格以上に見栄えをよくします。
それと同時にネーミングも吟味しなければなりません。
単に「紀州の梅」といった、他の競合品と同じ商品にするのではなくて、より印象的
かつ高級感のあるものにして、差別化を検討すべきです。
そして、価格設定については、ある程度高い価格帯を設定することです。
贈答品を求める顧客の中には、値段が高いだけで価値があると思い込んでしまう人が
多いからです。
逆に良心的な価格を設定したならば、顧客は送り先から「自分はこの程度の相手と思われている」と思われないかと不安を感じ、かえって逆効果となってしまいます。
4.商品を「どこで売るのが最も効果的か」を考える。
今回のケースでは、インターネット上での販売に限定してありますが、贈答品ということであれば、観光地やイベント会場、サービスエリアなど、「顧客の価値観がブレる場所」で売ることによって、高く買ってくれる可能性が増加します。
もし、小売店で売ることを考えるなら、あなたは事前にその店に足を運び、その店の棚や陳列の仕方、売れ筋商品などを吟味しなければなりません。
起業家の多くは、取引先や売り場のことをあまりよく知らず、問屋任せにしているため、損をするケースが多いのです。
売り場の研究は、あなたのビジネスの成功を左右する大切なポイントです。
売場や陳列方法の定石については、別のセクションで詳しく解説します。
店によっては、棚に平積みできる商品を好む場合と、壁にぶら下げて売ることを好む場合があります。
また、売れ筋商品は、消費者が手にしやすい中段か下段の棚に平積みされていることが多いのですが、その他の商品は、上段に無造作に積まれていることも多いのです。
もし、あなたの商品が棚の上段に平積みされているならば、パッケージを変更し、側面からでも商品のタグが見られるように改良しなければなりません。
また、パッケージの色、形なども他の商品と差別化を図らなければなりません。
どんなパッケージ、デザイン、ネーミングが売りやすいかをあらゆる点で吟味し、競合他社との差別化を検討しなければならないのです。
以上の説明で、あなたは理解できたはずです。
「誰に売るか」「どこで商品を売るか」によって、あなたの商品の価値が変化し、販売数や価格が大きく変わってしまうということを。
商品の価格設定について
商品の価格は、売り上げを左右する重要な要素であり、安易に自分の都合で設定したり、他社より安くすれば売れるだろうと考えるものではありません。
腰痛ベルトを例に考えてみることにします。
この商品の市場調査をした結果、3000円が相場であり、製造原価が1000円だとします。
このケースで、あなたはいくらでこの商品を売ろうとしますか?
一般的な考えとしては、まず3000円で売り出し、類似品と競争になると価格を下げていくという手法をとると思います。
しかし、もっと戦略的に考えるならば、あなたはこの商品を5000円で売ることもできますし、逆に1000円で売ることもできます。
その方法を説明してみましょう。
● 5000円で売るには
■ 付加価値がアップする「場所」で売る
観光地イベント会場など、顧客の価値観のブレる場所で売る
■ 付加価値がアップする「タイミング」で売る
記念日、誕生日、クリスマス、正月など顧客の感情が高揚しているときに売る
■ 付加価値がアップする「人」に買ってもらう
市場においては、顧客の価値観に影響を与える人たちが存在します。
そうした人に支援される商品は、それだけで付加価値が高まり、高単価でも取引が成立しやすいのです。
また逆に、そうした付加価値を生んでくれる人たちと対極にいる人たちを、意識的に排除することもひとつの方法です。
そうすることで、顧客は、自分たちを特別に扱ってもらえることに満足します。
■ 高くてもいいから欲しいと思わせる
希少価値があると感じれば、高価格でも売れるケースがあります。
● 1000円で売っても儲けるには
普通に考えれば、製造原価1000円のモノを1000円で売って儲かるわけがありません。
しかし、「商品を売る」というビジネスモデルを、他のサービスを追加することによって儲かるシステムを作ることができます。
例えば、腰痛バントを買ってくれた顧客に、治療院やカイロプラクティックを紹介してあげるというビジネスモデルを作ります。
あなたは、紹介先と事前に契約して、紹介した見返りとして紹介料を得るというシステムを作っておけば、1000円で売ったとしても儲けることが可能になります。
直接、商品で儲けるだけが方法ではない、ということです。
ただし、この方法は、あくまで考え方として頭に入れておく必要はありますが、中小規模の事業を考えている場合は、あまりオススメできません。
営業力も必要となり、キャッシュフローの面でのリスクも高いので、基本的には、高い価格で売る方法をまず考えるべきです。
こうしたことからわかるように、自分の商品に、安易に価格をつけてはいけません。
「いくらなら買ってもらえるか?」を考える前に、「いくらで売りたいか?」を考慮すべきです。
「あなたの希望する価格で売るためにはどうするか」を考え抜くことが重要なのです。
こうした戦略を考えることなく闇雲に売り歩いたとしても、さほどの効果はなく、わずかな儲けに甘んじることになるのです。
逆に、しっかりした戦略を立てて行動すれば、さほど動き回ることなく、大きな儲けを手にすることができるのです
販売について覚えておきたい考え方
● 販路をどうするか
商品を売る場合、「直販」と「卸し」の2通りの売り方があります。
製造原価500円、小売上代価格1500円の商品があった場合、A問屋は、卸価格1300円で扱ってくれ、B問屋は1000円で扱ってくれるとします。
直販の場合のあなたの儲けは、商品一個当たり1000円(1500-500)であり、A問屋を利用するなら800円(1300-500)、B問屋なら500円(1000-500)です。
インターネットを使って直販するのが、一番効率が良いようにみえますが、それには、どれくらいの経費がかかるかを試算する必要があります。
WEBの知識がないのに、安易に専門業者にホームページを作ってもらうと、最初は良いのですが、自分でページを更新できなければ、よほど商品が売れない限り、更新時のコストがかかりすぎ、儲けが出なくなってしまいます。
また今では、問屋に限らず、モノを売りたい人と、モノを買いたい人とをつなぐサービスを展開している会社もあります。
問屋のように商品を仕入れて販売するだけでなく、メーカーの販路を開拓したり、消費者のニーズにあった商品の改良点を教えてくれたりします。
つまり、どこの店や企業にいくらで商品を売ったらいいか、売るためにはどんな条件をクリアすればよいかを調べてくれるのです。
こうした会社は、全国のバイヤーとネットワークを持ち、バイヤーのほしがっている商品情報を管理しています。
もちろん、こうしたサービスは有料なので、事前に見積もりを提示してもらい、自分の商品にかかるコストと利益の兼ね合いを検討してから判断しなければなりませんが、高単価、高利益率の商品や、大量に商品を売りたい場合には、検討の余地はあると思います。
話は戻りますが、あなたが問屋に卸すと決めた場合、上述のケースで、A問屋とB問屋のどちらに商品を卸しますか?
おそらくたいていの人は、条件の良いA問屋を選択すると思います。
しかし実際には、A問屋よりもB問屋を選んだほうが、儲かるケースが多いのです。
その理由がお分かりになるでしょうか?
その答えは、問屋の立場になって考えてみれば、すぐに分かるはずです。
A問屋は、あなたの商品を小売店に販売しても、最大200円(1500-1200)しか儲かりません。
B問屋なら、最大500円(1500-1000)の儲けです。
ということは、A問屋が小売店に営業に行った場合、あなたの商品を他の商品と比べて優先的に売り込むこともないでしょうし、あなたの商品よりもっと儲かる商品から先に売り込みをかけるでしょう。
こうしたことが、何度も繰り返されることによって、あなたの商品はやがて、「売れない商品」というレッテルを貼られてしまうのです。
これは、メーカーに非常に多い過ちですが、大変重要なことです。
起業家は、自分の商品の価格設定に悩むことは多いのですが、「どこで売るか」については見落としがちです。
そのため、商品の製造原価と販売価格が近すぎて儲けが薄いため、問屋で扱ってもらえなかったり、扱ってもらったとしてもあまり売れないという状況に陥ってしまいます。
取引先については、まず最初に考えるべきです。
あなたが儲かる商品とは、「取り扱い業者も儲けられる商品」のことです。
これは、代理店方式で商品提供を考えている場合も同様です。
そのためには、製造、調達コストを下げるため、数多くの業者にあたり、粘り強く交渉を繰り返さなければなりません。
その一方で、高い価格で購入してくれる顧客のいる小売店や場所を探さなくてはなりません。
商品の希望小売価格を設定せず、オープン価格で商品を卸し、売り上げをつくるというの方法もあります。
いくら商品自体が優れていても、儲からない商品は、誰も取り扱ってくれないのです。
● 生産ラインを作るかどうか
「売れそうだから、生産ラインを作るかどうか」も頭を悩ますところです。
これを見誤ると、過剰な在庫を抱える羽目となり、最初は勢いよく売れても、最終的には再起不能の大損をすることになってしまいます。
そのときの判断基準として最も大切なことは、あなたの商品の「ライフサイクル」です。
あなたの商品が製造だけでなく、仕入れる場合であっても、商品のライフサイクルを見極め、慎重に発注数を決めなければなりません。
あなたの事業規模が小さいほど、この見極めが生命線となります。
ライフサイクルの見分け方については、以前に述べましたので、それを参考にしてください。
また、これに関連してですが、顧客のニーズを事前にリサーチしてビジネスに取り組んだにもかかわらず、商品が売れないというケースがあります。
こうしたケースはかなり多いのですが、その最大の理由は、「顧客の本音を聞いていない」ということです。
市場調査に関する書籍はたくさんありますが、ありきたりな質問では、顧客の本音は分析できません。
所詮、他人のことですから、それほど深くは考えないでしょうし、質問されても面倒な説明を求められるよりは、適当に話を終わらせたいという心理も働きます。
ましてや、自分の友人や親戚などに意見を求めても、まず本当のことはわかりません。
あなたに近い人ほど、あなたとの関係が壊れるのがイヤで、多少のホンネは語っても、本当のホンネまでは言えないというのが人情です。
こうした場合、質問の仕方を変えるだけでずいぶん違った結果が現れるものです。
要は、「他人事」ではなく、もう一歩踏み込んだ質問をすればいいのです。
「私はこうしたビジネスを考えてますが、近々事業を開始しますので、よろしければ仮契約のサインをもらえますか?」
この質問をしたとたんに、あなたの周りの人たちは本音を語り始めます。
ここで初めて顧客は、セールスされているという意識が働き、当事者としての心理状態となります。
そのため、それほど欲しくない場合は、断る理由を考えますし、「この値段なら買ってもいい」と本音を語り始めることとなります。
あなたが顧客の本音を聞きたいと思うのなら、相手の立場に立って、本音を語らざるを得ないような質問をしてみましょう。
人は悪気がなくても、他人事に対しては、本音は語らないものです。
ですから、ヒアリングやアンケートで調査するときは、質問の言葉そのものを吟味しなければなりません。
このあたりのことは、本ではなかなか書かれていない現場の実状です。
● 商品コストを計算する
あなたの商品をひとつ売るのに、いったいいくらのコストがかかるのか?
一人の顧客を獲得するのに、いくらのコストが必要なのでしょうか?
「商品コスト」を把握することは、起業家の場合、特に大切なことです。
例えば、原価120円で商品を作り、200円を売るとしましょう。
商品一個当たりの儲けは80円ですから、それを月に1万個売る場合には、
80円×10000=80万円ですが、利益は80万円ではありません。
当然これを売るためには、販売促進維持費などのコストがかかっています。
こうした「売るためのコスト」が50万円かかったとした場合、儲けは30万円です。
仮にこの商品がまったく売れなかった場合は、商品製造コスト120万円(120円×10000)と、販促費50万円の合計170万円の損となります。
つまり、170万円のリスクで、30万円儲けるビジネスということです。
それであれば、わざわざ起業しないで、サラリーマンとして給料をもらっているほうがまだマシです。
数字が苦手だと逃げ回っていては、自分にかかるリスクと儲けを理解できず、ビジネス自体が、起業してまでやるべきものなのかどうかを判断できません。
商品コストは、必ず、前もって計算しておかなければならないものなのです。
起業した直後の人脈の作り方
まったく人脈を持っていない起業家が、人脈を作るためにはどうしたら良いのでしょうか?
● 飛び込みで人脈を作る
新聞や雑誌で会いたいと思った人に連絡し、直接会いに行きます。
確かにこの方法は、相当の勇気を必要としますし、冷たくあしらわれるケースがほとんどですが、頼られて悪い気のしない人も多いので、意外と上手くいくこともあります。
なかなか飛び込みで会いに行く人はいませんが、だからこそ、そのことで自分を印象付けることが出来るのです。
相手に熱意さえ伝われば、仕事になるケースもあり、ダメモトでチャレンジしてみる価値は十分にあります。
また、初めて訪問した際には非常に冷たくあしらわれたりしますが、何度も訪問するうちに、顔を覚えてもらい、次第に打ち解けてきたりもするものです。
私の今の人脈には、このパターンで仲良くしてもらっている人たちも数多くいます。
この場合、注意することが2点あります。
第一に、自分が相手に望むことを明確にしておき、できるだけ短い時間で説明することです。
手ぶらで行くのではなく、自分の会社のプロフィールや企画書を持っていくのは当然ですが、必ず相手にもメリットのある話を用意することが大切です。
もう一点は、相手が時間をじっくりと取れるタイミングを見計らうことです・
忙しい時間に訪問しても怒鳴られるのがオチです。
事前に出入り業者をチェックして調べておくのも良い方法です。
そのためには、相手のことをある程度は知っておく必要があり、事前にその企業や経営者のことを調べておくことが重要です。
● セミナーに参加して人脈を作る
まず、あなたが必要とする人や企業が参加しそうなセミナーを探して受講します。
例えば、大手企業にあなたの商品を売り込みたいといった場合、中間管理職の人が受講しそうなセミナーを選んで申し込みます。
「部下をやる気にさせる方法」といったタイトルのセミナーです。
そのセミナーで発言するなどして顔を覚えてもらったなら、セミナー終了後に講師や受講者と名刺交換すればよいのです。
セミナーの受講者同士は、妙な一体感があるため、打ち解けやすいのです。
受講期間の長いものや、合宿研修のあるもの、講師との親睦会のあるものは、その場で、ある程度の関係が築けるケースが多いものです。
注意するのは、間違っても無料のセミナーには行かないことです。
有料で、しかも高額であれば、よりターゲットが絞り込まれていることが多いものです。
会社がその人のためにお金を出している場合も多く、それなりの人達が受講している可能性が高いからです。
オススメは、中小企業大学校のセミナーです。
ここは、公的機関の運営するもので、大学のビジネススクールや社会人向けのセミナーも開催しています。
ビジネスパートナーや取引先を見つけるには効果的です。
● インターネットで呼びかける
世の中には、あなたと同じような悩みを抱えている起業家の人たちも多いはずです。
同じ業界で、サイトを通して、そうした人たちと人脈を築き、組織化するのもひとつの方法です。
ある程度の人数が集まれば、ほかのグループからも声がかかるようになり、より大きな組織となっていきます。
大きな人の集まりを組織すると、それはひとつの市場となるため、大企業やマスコミから声がかかるようになり、いろいろな情報や仕事が舞い込むようになります。
そして、加速度的に人脈が広がることとなるのです。
● 地方に目を向ける
市場の大きなところは競争が激しいため、起業家が短期間で人脈を作るのには結構苦労しますし、なかなか注目してもらえません。
しかし、地方であれば、人口が多くないので、地元の名士の人たちが一堂に会する機会が結構あります。
もし、そうした会合に出席できれば、短期間に特定のエリア内で強力な人脈を広げることができます。
商工会議所や青年会議所、ライオンズクラブやロータリクラブなどの会員になって、会合に出席しても良いでしょう。
また、役所なども、ある程度通えば、すぐに顔を覚えてもらえます。
ビジネスパートナーの選び方
● 共同経営に平等はない
事業を始めるときに必要な人脈といえば、「ビジネスパートナー」を連想する人が多いと思います。
しかし、この「ビジネスパートナー」の選び方を間違えると、後々大変なことになってしまうので注意しなければなりません。
起業家のあなたは、パートナーと組んでビジネスをやろうとする場合は、「みんなで同じ金額ずつ出資して、とりあえず社長を決めて、実際の経営はその都度、全員で話し合う」というように、すべてを均等分して考える方法がベストだと思っていないでしょうか。
一見、平等に見えるこのやり方は、絶対にとってはならない方法です。
すべてを均等分するということが、いかに難しいことか、後に思い知ることになるでしょう。
ビジネスにおいて、トラブルの原因になるのは、ほとんどの場合、「お金」です。
事業がうまくいかないとなると責任のなすり付け合いになりますし、軌道に乗って儲かれば儲かったで、必ず取り分をめぐっての争いになります。
例えば、事業が思うように進まず、出資した資本金を食いつぶしてしまったらどうしますか?
銀行から融資を受けるのに、誰が保証人になるのですか?
また、会社の方向性にかかわる重要な案件の判断で、意見が食い違ったらどうしますか?
最初は、お互いに気を使って我を通すことはないかも知れませんが、こうした死活問題にかかわる判断を下さなければならないケースに遭遇すると、人は本性を露わにします。
● 共同経営を選択した場合の注意点
私は、基本的にはパートナーと組んでビジネスをスタートすることはオススメしませんが、もし、どうしてもやらざるを得ないケースの場合は、どうすればよいかについて述べてみます。
■出資も責任も平等という考え方はやめる
できるだけ出資者は一人にして、その出資者が権限を持つようにします。
どうしても複数の出資者になる場合は、必ず事前に、その中の一人が権限を持つことを納得してもらい、出資金はその経営者に贈与したものだと考えます。
できれば、起業前の段階で第三者に入ってもらい、それぞれの考え方や方向性を、本音でしゃべる機会を持つべきです。
当人同士であれば、どうしても遠慮したり、かっこつけたりするため、後でもめるケースが多いからです。
とにかく、事前に、お互いの立場と希望を整理しておくことが大切です。
■自分の分身のような人間をパートナーにしない
よくあるケースは、自分と同じような人をパートナーにして起業し、後で仲間割れして、顧客も売り上げも奪われてしまい、会社が立ち行かなくなるパターンです。
「得意分野も人脈もかぶる」というのは最悪のパターンで、気がつけば、最も身近な競合先だったということも多いのです。
起業したばかりのころは、どうしても自分と気の合う人ばかりを集めてしまいがちですが、パートナーは、自分と異なる考え方を持つ人のほうが良いのです。
自分の弱点を補ってくれるだけでなく、重要な決定を下すときに、別の視点でチェックを入れてくれるからです。
お互いがそれぞれに専門分野を持っているとか、相手の持ち得ない資源を提供し合えるというのがパートナー選びの基本です。
しかし、その人間は優秀であればあるほど、いつの日か必ず袂を分かつことになるので、そうなっても良いように、日ごろから準備しておくことが大切です。
それと同時に、事前に、事業が軌道に乗り儲かった場合と、軌道に乗らず資金繰りが苦しい場合、どうするかについて、具体的に決めておかなければなりません。
お互いが、その事業の参加の仕方をどうするかを、納得いくまで充分に話し合い、それからスタートすることが重要です。
■自分自身が強いリーダーシップを持っていない場合は、起業はあきらめる。
パートナーを求めるあなた自身に、強いリーダーシップがないならば、起業はしないほうが良いでしょう。
経営者の仕事とは、事業の全体像を把握した上で、進むべき方向性を決定し、その戦略を社員に徹底させることです。
当然、強いリーダーシップが要求されます。
リーダーシップを持つ経営者が、目標や方向性を示すからこそ、パートナーも同じベクトルで協力し合えるのです。
ここで注意してもらいたいことがあります。
リーダーシップには2種類あるということです。
立場上、権限を与えられているからこそのリーダーシップと、それとは別の意味で、人をひきつける魅力としてのリーダーシップです。
経営者は、この2種類のリーダーシップをどちらも共有しなければいけません。
これらのリーダーシップを別々の人間が所有しているのなら、組織は別々の方向に向かって進むこととなります。
こうしたケースでは、肩書きをいくら振りかざそうが、出資比率を持ち出そうが、実質上の立場がハッキリしなくなるため、社員にとって、非常に仕事がやりづらい環境を生み出すことになります。
そうして、最後には、会社は空中分解してしまうことになるのです。