● 値引きしたら、何個売らなくてはならない?
「20%の値引きをしたのだから、売上も20%アップすれば、同じだけ儲かる」とは考えないで下さい。
プラス20%の売上アップでは、同じだけの利益を確保することは出来ません。
値引きと販売個数の関係を甘く見ていると、大変なことになってしまいます。
■ 値引きと販売個数の関係を計算してみよう
まずは、現在の売上から計上される利益を計算してみます。
1個1,000円の弁当が、100個売れているのですから、1日の売上は、
1,000円 × 100個 = 100,000 円 です。
粗利益率は40%ですから、利益は40,000円です。
100,000円 × 40% = 40,000円
では、2割の値引きをしたらどうでしょうか?
1,000円の弁当を2割引するわけですから、800円です。
値引きをしたからといって、原価が減るわけではありませんので、
利益は、1個につき200円になります。( 800円 - 600円 )
つまり、40,000円の利益を確保するためには、
40,000円 ÷ 200円 = 200
なんと、2倍の個数を売っても、同額の利益ということです。
このように、値引きをすると、増やさなくてはならない販売個数は、
あなたがイメージしているものよりはるかに多いのです。
下図は、値引率と粗利益率の関係を表にしたものです。
これをご覧になって、値引きの怖さを感じていただけたらと思います。
■ 値下げ前の価格で100個売った場合の「利益」を確保するためには
この表から分かるように、「値引き」というのは、「利益」に多大な影響を与えます。
粗利益率40%の商品を、3割引で売ると、なんと4倍もの個数を売らなければ、
同じだけの利益を確保できないのです!
それと同時に、粗利益率の高い商品は、少々の値引きをしても、販売個数にはさほどの影響を与えないという点もチェックしておいて下さい。
だからこそ、商品の付加価値を高めることが重要なのです。
■ 全体図から、お金の流れを把握することが大切
これに付随してですが、大切なことを述べておきます。
先ほど、冒頭の問題の解答方法を記しましたが、この計算方法は、一般向けのやり方です。
経営者であるなら、「全体図からお金の流れを把握する」のセクションで紹介した、
粗利益率を基に計算する方法を使わなくてはなりません。
→「全体図からお金の流れを把握する」はコチラ
これは、小さいことのように思えるかもしれませんが、こうした思考回路を身につけることが、あなたの数字的センスをアップさせることになりますので、意識しておいてください。
1,000円の弁当の原価が600円ということは、変動費が60ということです。
それに対し、粗利益は40あります。
1,000円の弁当を2割引するということは、売上が100から80になります。
変動費60は変わりませんので、粗利益は80-60=20です。
つまり、40の粗利益が20になるということです。
したがって、同じ利益を確保するためには、2倍の売上が必要になるということです。
このように、「全体図からお金の流れを把握する」のセクションで紹介した図形を基に、頭の中で視覚的に利益を捉えて下さい。
これは、いろいろなケースで応用が利きますので、何度も図形を見て、体の一部に
なるまで、繰り返し反復してもらえばと思います。
● 値上げしたら、どれだけ減っても大丈夫?
■ 仕上げと販売個数の関係を、全体図から把握しよう
1,000円の弁当の原価が700円ということは、変動費が70ということです。
それに対し、粗利益は30あります。
1,000円の弁当を2割値上げするということは、売上が100から120になります。
変動費は変わりませんので、粗利益は 120-70=50 です。
つまり、30の粗利益が50になるということです。
したがって、同じ利益を確保するためには、
100個 × (30÷50) =60個
60個売れれば良いということは、売上が40%減っても、値上げ前と同額の利益を確保できるということです。
値上げによる売上減少から生じる利益減少は、あなたが思っているほどではありません。
先ほどの値引きの表と比べれば、その違いが分かるはずです。
■ 値上げ前の価格で100個売った場合の「利益」を確保するためには
値上げをするのは、勇気のいることです。
当然、値上げをすれば、売上が減少することもあります。
しかし、この表を見ても分かるように、あなたがイメージするよりも、値上げによる売上ダウンは、決定的なダメージにはならないのです。
その上、値上げをすることのメリットは、単に「利益を上げる」ことだけにはとどまりません。
・同額の利益を確保できる分だけ売上が減ったとしても、その分、コスト面での削減が図れます。
減少したコスト部分を、別の部門や事業に集中させることが出来ます。
・単に値上げをするだけでは、売上は落ちてしまいます。
売上を落とさないためには、値上げに値するだけの「付加価値」を考える必要があります。
そうした発想を常に持つことにより、これまで以上の高付加価値の商品を研究する姿勢が身につきます。
つまり、自分でも気づかないうちに、経営者としての危機感が持続できるということです。
もう一つ、この表から気づいてもらいたいことがあります。
それは、「粗利益率の低い商品ほど、値上げの効果が高い」ということです。
粗利益率の低い商品を取扱っている場合、ほんのちょっとした市場の変化で、
赤字に転落してしまうケースが多々あります。
また、薄利多売になるため、どうしても仕入コストもかかりがちになりますし、
在庫リスクも高くなります。
これが、資金繰りを圧迫する要因になります。
ですから、粗利益率の低い会社ほど、自社の商品に「付加価値」をつけて、高く売るべきなのです。
付加価値の考え方や、具体的な方策については、別のセクションで解説しますが、
粗利益率の低い商品を扱っている経営者の方は、ぜひ、高く売ることを検討してみて下さい。