経営の原理原則

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経営判断・起業の心得

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同じ経験からどれだけのものを感じ取れるか

ヒト・モノ・カネ・情報、これら全てがそろったとしても、それ以外のたった一つの要素で会社は潰れてしまいます。

それが「経営判断」です。

他の要素は、本やネットで勉強すれば、ある程度までなら、知識として吸収することが出来ます。
しかし、経営判断だけは別です。

経営判断は、経験の絶対数がモノをいいます。
それと同時に、その経験から何が学べたかが大切です。

会社が同じ状況にあったとしても、「このままでイイ」と思う人もいれば、
「何かイヤな予感がする」と感じる人もいます。
これはすべて、過去の経験が、「どれだけ、自分の血となり肉となっているか」に起因しています。
ですから、あなたは、この章は何度も読み返さなくてはなりません。

自分が経験したことのない状況を、どうやって切り抜けるべきかということを、
「知識」としてではなく、「感覚」として感じ取って下さい。

ワカッた気になるな

その場合、大切な注意点が一つあります。

それは、「わかった気にならない」ということです。

「知識」として吸収している限り、いつまでたっても、この「カン」が養われることはありません。
全神経を集中して、文章にある、本当の意味を感じ取って下さい。
必ず将来、「このことか・・」と思い返し、失敗を未然に防ぐことが出来るはずです。

成功体験から学ぶものはない

特に、自らの「成功体験」には注意して下さい。
この成功体験が、あなたの経営判断を狂わせます。

ビジネスで生き残る唯一の方法は、「変化の先頭で、物事を判断する」ということです。

これが出来なかったばかりに倒産した会社は、数え切れないほど存在します。
そのために最も邪魔になるのが、「過去の成功体験」です。

会員用ページでは、より深い経営判断のやり方とともに、
企業が倒産に至った過程を、過去の実例を通して解説していきます。
数多くの倒産事例から、「成功と失敗の分岐点はどこにあったのか」を感じ取ってもらえたらと思います。

はじめに

ここでは、起業家が陥りやすい経営判断のワナについて述べていきます。

それと同時に、起業家として身に付けなくてはならない考え方や、心構えも述べてみたいと思います。
当たり前のことは、極力排除したつもりです。

起業家を目指す、もしくはすでに起業したあなたは、これから未知の世界に旅立ちます。
当然、これまで経験したことのない困難や障害が待ち受けています。
一つの判断ミスや考え方の相違が、回復不可能な事態を招くことも、しばしばです。

ビジネスの世界とは、絶対的な正解のない問題に対して、いかに誤りの少ない解答を見つけるか、
より誤りの少ない方が勝ち、という勝負の世界です。

結局、最後には、カンに頼るしかありません。

ただし、この「カン」は、「山カン」のことではありません。
それまでの経験や努力の末に身に付けた、独特の「匂い」のようなものです。
これだけは、情熱や根性で超えられるものではありません。

もちろん、情熱や努力は必要ですが、それは起業するなら持っていて当たり前のものです。
当たり前のことで成功するなら、ビジネスの世界に競争など起こりません。
当たり前以上のレベルで闘っているのが、ビジネスの世界なのです。

これまで私は、銀行員の時から通算すると、3,000社以上の会社の経営に携わってきました。
成功している会社もありますが、ほとんどの会社は、経営に四苦八苦しています。
ここでは、「こうした判断をしたら失敗する」という、失敗の共通点を中心に述べていこうと思います。

私の持論は、「成功体験からは何も得られない」ということです。

それは、「成功体験のモノマネをしても、同じような成功を収めることは、ほとんど無い」という、
私自身の経験からきています。

「失敗」の中にこそ、経営の真実があります。

失敗には、必ずその原因があります。
それを学習することで、あなたの会社が同じような過ちを犯さないよう、注意して頂けたらと思います。

すべての経営判断の失敗例を挙げていたら、100や200の事例では到底終わりません。
ここでは、起業家がカン違いしやすい経営判断や考え方について厳選したものを、10だけ用意しました。
どうか真摯な気持ちで、何度も読み返し、頭に叩き込んでください。

私がこれまで見てきた失敗例については、会員用ページで具体的に掲載していくつもりです。
数が多いだけに何年かかるか分かりませんが、

最終的には、経営における判断ミスを集約した「失敗例大全」のようなものを作ることを目標にしています。
起業家の人が判断に困った時、「これを見れば大きな失敗は防げる」というものを完成させるつもりです。

大事なことは、これを読んで「分かったような気にならない」ことです。

経営判断とは、数限りない経験を通して、徐々に、その「本当の意味」が理解できるものです。
決して、安易に読み飛ばさないで下さい。

なお、経営判断や考え方の記述について、内容が正反対の結論になるケースもあると思います。
それは、会社規模や財務体質の変化に応じて、判断の基準も変化するためです。

レベルも徐々に上げていく予定なので、それに対応した記述になるということをご了承下さい。

会社組織を作るべきか?

あなたは、「企業は人なり」という言葉を聞いたことがあると思います。

この「人」とは、誰のことだと思いますか?
あなたは、これを「従業員」のことだとカン違いしていませんか。

正解は、社長である「あなた自身」です。

従業員1,000人以上の会社であれば、確かに、従業員次第で業績も上がるでしょう。
しかし、50人以下の小さな会社では、あなたの経営者としての力量が、業績のほとんどを左右します。

事業の目的は、利益を上げることです。

この当たり前のことが理解できていない起業家がたくさんいます。
起業家は、得てして、大企業のマネをして、ピラミッド型の組織を作ろうとします。
特に、「大企業出身の経営者」に、この傾向が見られます。

確かに、大企業のように係長を作り、課長、部長を作り、さらに自分以外の役員もつくって、

ピラミッドの頂点に君臨すれば、気分も良いし、何となく会社が大きくなったような気持ちになります。

しかし、このピラミッド型組織というものは、会社員が多い大企業であれば必要なことかもしれませんが、
小さな会社では、「無用の長物」にしか過ぎません。

それどころか、むしろ、会社の存続すら危ういものにしかねないのです。

なぜ、そうなのか。

まず第一に、人は、地位や役職を得ると、
「なんで、課長のオレがこんなことをしなければならないんだ」という「変なプライド」が出てきて、雑用を嫌がるようになります。
つまり、役職者を増やすと、雑用をする人が少なくなってしまうのです。

しかし、会社が小さいうちは、
この雑用の中にこそ、ビジネスチャンスや効率化のヒントが潜んでいることが多いのです。

起業間もない会社であれば、従業員一人一人があらゆることをこなさなければ、なかなか成長していきません。
「同じ釜の飯を食った仲間」ではありませんが、

同じ目的のために全員が一丸となって、分け隔てなく働く中で、強力な連帯感が生まれるものです。

第二に、いくら会社が小さくても、役職が多いと、必ず「派閥」が生まれます。
上司と部下の関係が多いわけですから、そこには、他の人間関係よりも強い連帯感が生まれます。
派閥間の相性が悪ければ、小さな会社の中で、いがみ合いが発生します。
場合によっては、社長であるあなたに造反するかもしれません。
あなたが、このままでは若手に悪い影響を与えるからといって、役職を外せば、その社員はメンツを潰され、やる気を失います。

起業したばかりの小さな会社であれば、こうしたマイナスは致命傷となります。
そのためには、「社長以外の上下関係はなくす」ことです。

横のつながりを重視し、社員が連携して働けるよう、
社長であるあなた自身を中心に、会社のシステムを構築すべきなのです。

そのためには、あなた自身が、かなりしっかりしていなければなりません。
「企業は人なり」という「人」とは、「あなた自身」のことだという意味は、こういうことです。

私の経験上、会社として利益体質であるための、役職抜きで経営できる限界点は、
・営業会社や建設・内装工事業で15人
・飲食業や小売業で25人
・製造業で40人です。

それ以上になると、経営者の目が届かなくなりますので、役職者を検討すべきだと思います。

社員を採用すべきか?

あなたは「80対20の法則」を知っていますか?

これは、「投入・原因・努力のわずかな部分が、産出・結果・報酬の大きな部分をもたらす」という法則です。
ビジネスの大部分に活用できる、この法則により、

今までより、はるかに少ない努力で、はるかに大きな成果を上げることが出来ます。

この法則を、経費節減に応用します。
つまり、総経費の20%を重点的に管理すれば、全体の80%の経費を抑えることができるというわけです。

経営において、総経費科目の中で、最も重要なものは何だと思いますか?

それは、「人件費」です。
私が企業再生をする場合でも、最初に手をつけるのが、人件費です。

一般的に、人件費は、粗利益の半分以上を占めます。
人件費を粗利益で割った数字を、「労働配分率」といいますが、この数字が60%以上なら、「倒産予備軍」です。
(ただし、この数値は業種によっても違いますので、あくまでも業界平均値と比較すべきです)
私がこれまで経験した倒産会社の労働分配率は、すべて60%を上回っています。
「人件費」については、起業家が知っておかなければならない知識の、トップランクに位置するほどの最重要項目です。
詳しくは、会員用ページで解説しますが、起業家として知っておいてもらいたいのは、「人件費は極力増やさない」ということです。

「経費節減」とは、「人件費節減」とイコールだと言っても良いと思います。
それをカン違いして、経費節減のために「昼間は電気を消せ」とか、「メモ用紙はコピー紙の裏を使え」だとか言ったところで、その効果は微々たるものです。
社員が数千人もいる大企業なら、そうした努力でそれなりの効果はあると思いますが、
起業したばかりの小さな会社で、同じ事をマネしてみたところで、経営全体に与える影響はほとんどありません。

まさに「80対20の法則」の、「効果の少ない80%の部分に力を入れてしまう」ことと同じです。

従業員というものは、入れるのは簡単ですが、クビにするのは、大変な労力を必要とします。
法律上の規制もあり、仕事が出来ないからといって、簡単に辞めてもらうわけにはいきません。

起業してまず考えるべきことは、「すべて自分でやれないか」と考えてみることです。
無理だと思えば、次は、「パートやアウトソーシングで対応できないか」と考えてみてください。

そうして、出来るだけ、人件費の負担を減らしてください。

人件費のことを「固定費」といいますが、会社を存続させるコツは、「固定費を減らすこと」です。

「固定費」とは、売上が伸びようが伸びまいが、必ずかかる経費のことです。
それに対して、売上に連動して増減する経費のことを、「変動費」といいます。

起業家にとって、貸借対照表を分析することより、何倍も重要なことは、
この「固定費」と「変動費」のお金の流れを理解することです。

これを理解するだけで、会社の経営に必要な「数字」の、50%はカバーできます。
それほど、起業家にとっての必須項目といえます。
この「固定費」と「変動費」については、会員用ページで分かりやすく解説しますので、じっくりと熟読してください。

では、「社員はいるけれども、もうこれ以上人員カットは出来ない」という人。
その場合は、今いる社員に、二つの仕事、三つの仕事を一人でこなしてもらうより方法はありません。
決して安易に社員を増やしてはいけないのです。

そういう意味では、社員募集の際にも、限られたことしか出来ないワンパターン人間は採用しないことです。
小さな会社は、社員一人ひとりがいくつかの作業を掛け持ち、手すきの時には他の人の仕事をフォローできるようでないと、
そのうち、「人件費の負担から倒産」という、最悪の結果を招くことになるのです。

誰を接待すべきか?

起業した人にありがちなカン違いは、 会社の経費で落ちるからといって、飲み食いの接待交際費を気軽に使ってしまうことです。

得意先開拓のため、あるいは得意先との関係を深めるためにと、自分に言い訳をして、
会社の財務状況も考えず、器量以上の接待・飲み食いを繰り返します。

起業家であれば、最初は自分が接待されることが少ないため、接待される側の気持ちが分かりにくいとは思いますが、
本当にあなたにとって良い関係を築ける得意先ほど、接待されることを好みません。
普通、接待とは、自分より力量が高い人に対して行うものです。
当然、あなたの下心は見透かされますし、
堅実な経営者であれば、あなたのそうした正攻法でないやり方に、嫌悪感を抱くものです。

そう考えると、あなたの接待に心を動かす得意先は、非常にレベルの低い経営者ということになります。
つまり、自分の優位な立場を利用して、あなたからお金を吐き出さそうとしている得意先です。

こうした得意先は、カネの切れ目が縁の切れ目ではないですが、
あなたに利用価値がないと分かれば、さっさと後ろを向いてしまいます。
商売の基本は、投下した資金がいくらの利回りを上げるかですから、
これでは、無駄な投資となってしまいます。

見返りを期待しても、裏切られるのがオチなのです。

「じゃあ、安い居酒屋で接待したら良いじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、本音と建前は違います。

いくら相手が、「無理しないで、安いところでいいよ」と言ったところで、
本当に安い店で接待しようものなら、「この会社は、うちを軽んじているのか」と、逆に誤解してしまうケースもあるのです。

なぜなら、得意先というのは、根本的に「接待されて当然」と思っているからです。
だから、どうしても得意先を接待する場合は、多少なりとも格好のつく店を選ぶ必要があるのです。

そうすると当然、接待費が高額になる割には、見返りが少ないということになります。

しかし、だからといって、私は、接待の全てを否定するつもりはありません。
要は、接待する相手を間違えなければいいのです。

では、誰を接待すれば良いのか?

答えは、仕入先、外注先、アウトソーシング先です。

「モノを安く仕入れて、高く売る」というのは、商売の基本原則です。
一般的に、ビジネスの世界では、モノを売るよりも、買う立場の方が、絶対的な優位性を持っています。
だから、買う側は、その優位性を行使して、仕入先を屈服させようとします。
購買力を背景に、高圧的に仕入れの値段を叩こうとします。

しかし、仕入先も人間です。
値段を叩かれ、価格が低すぎて商売そのものがキツくなれば、

「こんな値段でやってられるか」と、低品質のモノやサービスを持ってくるようになります。
そうなると、あなたの会社は、安い値段で買っているつもりが、逆に高い買い物をするという結果になります。

ビジネスの世界では、信用が第一です。
一度落ちた信用を取り戻すには、何倍もの努力と資金が必要になります。
コストダウンのつもりでやっていることが、全くの逆効果ということになるのです。

このように、目先の利益に走るあまり、仕入先との関係を崩してはいけません。

特に起業家の場合は、日頃から、注文をくれる得意先に気を使い、頭を下げている反動からか、
自分が仕入先にモノを注文する立場になると、高圧的な態度になりがちです。

起業したばかりの小さな会社にとって、仕入先は、非常に重要な意味を持ちます。

どうしても最初は、売り先に気を取られるため、仕入れについては、ついつい見落としがちですが、
売上の少ない状況において、仕入れは、とても重要な意味を持ちます。
「変動費」とも関わることですので、会員用ページで詳しく説明しますが、
経営において重要視すべきは、得意先以上に、「仕入先」なのです。

粗利益率を高めることは、ビジネスの基本です。
得意先というのは、あなたの会社にお金を払ってくれるかもしれませんが、
やれ「値引きだ」「急な注文だ」とか言って、粗利の少なくなるようなことや、経費のかかることを平気で要求してきます。
これがあなたの会社が儲からない原因になります。

一方、仕入先というのは、良い関係さえ保っていれば、
「仕入れ購入が下がる」という直接的なプラスだけでなく、「ビジネスの拡大につながる有益な情報」をもたらしてくれます。

例えば、あなたの会社の売上げが伸びれば伸びるほど、運転資金が必要になってきます。
銀行等の資金調達でまかなえるうちは良いかもしれませんが、そのうち、どうにもならなくなってきます。
資金繰りを回すためには、得意先の入金を早めてもらうか、仕入先の支払を遅らせてもらうしかないという状況に陥ります。
その場合、どちらの交渉がやりやすいと思いますか?

また、資本提携や出資といった、会社の規模拡大のための戦略を立てやすいのも、
「仕入先」や「外注先」です。
「得意先」からの提案である場合は、最悪の場合、会社の乗っ取りも考えられます。
これは、どちらの立場が強いかということを考えてもらえれば、容易に想像できると思います。

だから仕入先に対しては、無理な要求をしないで、友好的な関係を築くことが大切なのです。
そのためには、多少の出費になろうとも、同じ金額を接待費に使うのであれば、
利益率を下げる「得意先」よりも、利益率を高める「仕入先」に使った方が有益だということです。

これは、外注先・アウトソーシング先についても、同様のことが言えます。
これらは、通常の仕入先と違い、目に見えるものではなく、資金繰りの面でも影響してきます。

そのためには、トップ同士の人間関係を築いておくことが重要になります。
あえてこちらから接待し、相手の社長に、

「本当はこちらが接待すべきなのに、なんて律儀な人だ」と思ってもらえれば、友好的な関係が築けます。
「あなたの会社の仕事だけはキッチリやろう」と考えてくれるはずです。

同じお金を接待に使うのであれば、より利益が上がるように工夫するのが、経営者の仕事なのです。

経営における最も大事な数字とは?

これも起業家が陥りやすい過ちですが、やみくもに売り上げを増加させようとします。 確かに、経営のモノサシの一つに、「売上高」があります。 他社と比べて売り上げが伸びていれば、「今期はこれくらいになりそうだ」と周りの人達に自慢できるかもしれません。

しかし、本当に大切なのは、「利益を出す」ということです。
値引きや特売で、いくら売り上げをアップさせたとしても、肝心の粗利益率が低下していたのでは、意味がありません。
商品仕入れのための資金が必要になるだけで、資金繰りを苦しめることになります。
こんなことにならないためにも、「経営のモノサシ」を変えなくてはなりません。

起業家のあなたは、まず、「粗利益」中心の経営を目指してください。

「粗利益」とは、「売上高」から「売上原価」を引いたものです。
「売上原価」とは、小売業の場合は「仕入れ価格」、製造業の場合は「製品を作るためのコスト」の事を指します。

「粗利益」は、ビジネスにおいて最も大切な数字です。

経営における数字面では、何を知らなくても、これだけは理解しておかなくてはならないのが、「粗利益」です。
営業利益、経常利益などのいろいろな利益の「おおもと」になるからです。
つまり、会社の各種利益は、すべてこの粗利益から生まれてくることになるのです。

また、それだけでなく、会社を存続させるための管理数値は、ほとんどのものが、この粗利益をもとに計算します。
商売の基本となる価格設定さえも、粗利益の考え方をもとに、決定します。
「利益」を理解するための基本となる、「変動費」「固定費」といった考え方も、
すべての根底には、「粗利益」の思想が流れています。

公式にすると、「粗利益=売上高-売上原価」という単純で分かりやすいものですが、これほど重要かつ深い意味を持つものはありません。
「私は数字が嫌いだ」という起業家でも、これだけは絶対に理解して下さい。

これ抜きには、商売の基本となる「利益のカラクリ」「会社の資金の流れ」を理解することは不可能です。
いつまで経っても、効率よく利益を上げることはできませんし、あなたのビジネスにおいて、新しい発想が生まれてくることもありません。

私が企業を再生する場合に、まずチェックするのは、各部門ごとの「粗利益率」です。
その数字をもとに、変動費や固定費のバランスを調整し、理想の財務体質に改善していきます。
私はこの方法で、これまでに数多くの倒産寸前の企業を建て直してきました。

会社にとって最も恐ろしいことは、「増収減益」です。
意外に思うかもしれませんが、「減収減益」よりも始末が悪いのです。

「減収減益」であれば、会社は強い危機感を持つため、経費などの身近なところから、支出を抑えようと努力します。
しかし、「増収減益」の場合には、売上自体は上がっているため、
社員はもちろん、経営者も、「利益が出ている」と錯覚してしまうのです。

そして、もっと売り上げを伸ばすために、経費を使い、人を増やして、倒産への道をひたすら走り続けます。
そして、資金繰りに窮したときには、もう手遅れです。
会社の内部は、ガン細胞に犯され、あとは死を待つのみです。

中小企業の財務内容は、そのほとんどが、贅肉のかたまりです。
無駄な経費がかかり過ぎています。
その元凶は、会社の「利益」についての知識不足が原因です。

特に、起業家の場合は、「何が必要で、何が必要でないのか」の判断基準がありませんので、
「気がつけば、贅肉だらけの財務内容になっていた」というのが現状です。

一度付いた贅肉をそぎ落とすには、大量の出血が必要となります。
体力のある会社なら再生も可能でしょうが、起業家のように小さな会社であれば、
その作業に耐えられず、倒産してしまうこともあります。

だからこそ、起業家のあなたには、最初から、「粗利益」を中心とした経営体質を目指してほしいのです。
人間は誰でも、自分を少しでもよく見せたいという気持ちがあります。
そうした虚栄心の強い経営者であれば、
その会社は、見せかけだけの、贅肉だらけのものになってしまいます。

本質的に強い企業にしようというのであれば、
起業家であるあなた自身が、自分や会社を、「実力以上によく見せよう」という誘惑に打ち勝たなければなりません。

そうした強い意志を、起業時から持ち続けることが大切なのです。

利益を大きくするには、「相手の立場に立つ」ことが、一番の近道です。

お客さんが一般消費者ならば、「満足する」ことを求めています。
また、会社であれば、「自分の会社が儲かる」ことを求めています。
相手の立場に立ち、何をしてもらえば「満足するのか」「儲かるのか」を、徹底的に考え抜くことです。

経営の目的は、「売り上げ規模を拡大する」ことではなく、「利益を出す」ことです。
重要なのは、見せかけの売上高ではなく、「生き残ること」なのです。

会員用ページでは、「粗利益」の詳しい解説と、それに基づく「利益のカラクリ」について、
具体例を交え、分かりやすく説明いたします。
起業で生き残りたい人は、ぜひ何度も読み返して、脳に刷り込んでください。

商品の価格設定はどうするか?

あなたは、自分の商品・サービスの価格をどうやって決めていますか?

おそらく、ほとんどの起業家は、自分の都合で設定したり、
競合他社より安くすれば売れるだろうと、安易に考えているのではないでしょうか。

経営者としての経験を積んで、数字に強くなればなるほど、
「価格設定が、会社の利益に与える影響の大きさ」に愕然とします。

価格は、単に売るため、注文をとるためという営業だけの問題ではなく、
一歩間違えると、経営の死命を決するほどの最重要項目です。

価格で失敗すれば、もうその時点で、あなたの会社の運命は決まってしまいます。
安い値段を設定すれば、どんなに経費を節減しても、利益を上げることは出来ません。
また高い値段をつけてしまうと、山のような在庫を抱えて、資金繰りに行き詰ってしまいます。

また、売上は、価格×数量の公式で表わすことが出来ますが、

この数値を最大にするためには、価格が大きく関わってきます。
値段を高く設定し、少なく売って商売するのか。
値段を抑えて、大量に売って商売するのか。
価格設定により、その経営戦略も大きく変わってきます。

価格設定の方法には、大きく分けて、2つあります。
「積み上げ方式」と「付加価値方式」です。

・積み上げ方式 ・・・ 価格=仕入原価(製造原価)+流通経費+適正利益
・付加価値方式 ・・・ 価格=仕入原価(製造原価)+流通経費+付加価値

両者の違いは、利益になる部分が「適正利益」なのか、「付加価値」なのかの差です。

起業家のあなたは、今から新しい商売を始めるわけですから、基本的には、後者の「付加価値方式」で価格を決めてください。

顧客が納得し、喜んで買ってくれる最大の値段。
「それ以上高ければ、注文が取れない」というギリギリのところを、ピンポイントで設定するのです。

一般の会社のように「積み上げ方式」で、コストに標準的な利益をプラスして、値段を決めるべきではありません。

この場合、値決めの判断基準となるのは、「あなたの商品の顧客にとっての価値」です。

つまり、お客さんがその値段で買って、十分な価値があると認めてもらえるなら、
コストの大小に関わらず、その値段で販売できるのです。
顧客満足とは、高いお金を出して買ってくれたお客さんに対して、あなた自身がその期待を超えようと努力した結果として生まれるものです。

顧客の購買意欲がなくなる手前のギリギリの高価格をつけることは、
あなたにとって、相当なプレッシャーになると思います。
しかし、起業したばかりの小さな会社が生き残るには、この方法しかありません。
大企業や中堅企業には、低価格戦略もあり得ますが、起業家には原則として、低価格戦略はあり得ません。

自分の商品やサービスに高い値付けが出来ないのは、単にあなたのスキルに自信がないだけの話です。
そういう意味でも、価格設定の段階で、あなたの起業家としての将来が決定すると言えます。

最近は、売り方についてのノウハウ本が書店に並んでいますが、
会社の業績を決める基本中の基本は、「価格」です。
この最初の試金石をクリアしない限り、いくら小手先のテクニックを弄しても、いつかはそのツケが回ってくるのです。
これは、私の経験上、間違いないと断言できます。

成功事例はマネすべきか?

このところの起業ブームで、書店に行けば、成功した経営者のノウハウ本がたくさん並んでいます。 また、いろいろなセミナーが開催され、そうした経営者の話を直接聞くことも出来ます。

確かに、そうした人の話は、評論家やコンサルタントによる机上の空論のような話と違い、

実際に成功したノウハウですから、起業家のあなたが聞いても、実戦で役立つことがたくさんあると思います。

しかし、あなたが覚えておかなければならないのは、
「そうしたノウハウをそのまま実践したからといって、必ずしも同じように成功するとは限らない」ということです。

大事なことは、「そのやり方が、自分の性格や能力に合っているかどうか」です。
自分が得意とする方面のノウハウなのかどうかを、一歩引いて冷静に考えてみることです。

そのためにはまず、「自分自身の性格や能力を、深く吟味してみる」こと。
そして、「あなたの会社の経営資源や性質を正しく把握できているか」が、ポイントになります。

例えば、「どうすれば粗利を確保できるのか」という問題があるとします。
一般的には、次の3つの方法に集約されます。

1.利幅を高くして売る
2.利幅が低くても、数を売る
3.商品の回転率を高める

同じ粗利を確保できた場合、利幅を低くして数を売った方が、売上高は大きくなります。

つまり、「見かけの年商が大きい」ということです。
もともと見栄張りで、対外的にイイ顔をしたい経営者であれば、この方法は合っているかもしれません。
しかし、その分、仕入資金がかさみますから、会社の資金調達能力も必要です。

また、こうした性格の人が、無理して利幅を高くして売ろうとすると、どうしても経営自体がちぐはぐになってしまいます。
「利幅を高くして売る」ということは、売上高はそれほど伸びませんし、在庫を抱えるリスクも大きくなります。
また、利幅を高くするためには、商品力がなければなりません。
当然、経営者自身に、その商品に関する知識が必要になります。
それと同時に、営業センスも求められます。

つまり、「利幅を低くして数を売る」ケースに比べて、経営判断が、慎重かつ堅実にならざるを得ないということです。

それにもかかわらず、本来見栄張りで堅実性に欠ける経営者が、この方法を選択すると、
それほど商品力のない商品を高く価格設定してしまい、
市場競争力をなくして、売り上げを低迷させてしまう結果になるのです。

逆に、こうした人が無理して堅実経営をやっていると、ここぞという時に打って出ることが出来なくなってしまいます。
本来は、積極的な性格なのに、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまい、
欲求不満から、経営自体が面白くなくなってしまいます。

こうしたことは、起業したばかりの、経営判断能力に乏しい起業家が、陥りやすい落とし穴です。

自分と、自分の会社のことを吟味しないで、マネしても、
経営を危うくするだけの結果になってしまう、ということを覚えていて下さい。

それと、これに関連してですが、

ほとんどの経営者は、過去の成功体験に縛られ、一度うまくいった方法で困難を乗り切ろうとします。
しかし、同じ方法が通用するかといったら、そんなことはありません。

なぜなら、顧客や市場の変化は、めまぐるしいほどのスピードで動いているからです。
頭では「今は変化の時代であり、過去の成功体験は通用しない」と分かっていても、

ついつい無意識のうちにとらわれてしまいます。
過去にそのやり方で成功し、評価されただけに、過去の成功体験を捨てきることがなかなか出来ないのです。

成功体験から得ることが出来るものは、
困難を乗り越えたという「自信」や、障害を克服するための「信念」といった、「普遍的なもの」だけです。

それ以外の「ノウハウ」や「ハウツー」めいた方法論は、
邪魔なだけで役に立たないどころか、あなたの経営判断を狂わせます。

そういう意味では、過去の成功体験に基づいたノウハウ本やセミナーなどは、聞いても意味がないということです。
成功者の話を聞いて、その行間が読み取れるだけの経験とセンスがあれば良いでしょうが、

経営経験の乏しい起業家が聞いても、ついつい即効性のありそうな方法論に目がいってしまいます。

つまり、モノマネは、所詮モノマネだということです。
絶対、本物以上にはなれないし、「ナンバーワン」も「オンリーワン」も取ることは出来ません。

モノマネは、進むべき道が制約されてしまい、挙句の果てに、市場競争に巻き込まれてしまいます。
モノがあふれている時代では、「いかに新しいものを生み出せるか」が勝負だというのに、
自分で勝手に制約をつくっていたら、いつまで経っても成功などあり得ません。

ちまたにあふれている「ノウハウ」というのは、
過去の成功者たちの「しぼりカス」だということに、早く気づいてもらえたらと思います。

事業が不調なときどうするか?

会社を経営していると、「事業が不調で資金繰りが大変だ。何とかしたい」と、窮地に追いやられることがよくあります。

こうした状況になると、ほとんどの起業家は、
一発逆転の奇策はないかと、いろんな本やセミナーに出席して、起死回生のノウハウを見つけようと、あがき始めます。
しかし、その努力が報われることは、滅多にありません。

なぜなら、事業が不調になった原因は、別のところにあるからです。

3~5年以上事業をしてきて、それなりに収入も上がり順調に来た会社が、
「どうもこのところ資金繰りが大変だ」というのは、突然そうなったわけではありません。
元々、その会社の体内に巣食っていたガン細胞が、徐々に増殖し、
ある一定の潜伏期間を経過した後、表面化したに過ぎません。

突発的なトラブルにみまわれ、その失策から苦境に立たされたわけではないのですから、そうしたノウハウめいた奇策は通用しません。
その原因となる、ガン細胞を取り除くしか、方法はないのです。

「これまで順調にきていた会社が、原因不明の病の末、死に至る」というのは、決して珍しい事例ではありません。
むしろ、倒産会社には、良くあるケースです。
こうしたケースでは、会社の構造的な問題や、市場の環境的な問題に原因がある場合がほとんどです。

本来であれば、そうした状況に陥ることを前もって予測し、そのため改善策を弄しておくべきだったのですが、
悲しいかな、ほとんどの起業家は、将来そうなることも予測できませんし、その対応策も知りません。
気づいたときには、手遅れになっているのです。

何度も言いますが、この状態で、苦しまぎれの奇策を用いてはいけません。
それが、効果のある逆転技になることは、皆無といえます。

このケースでの失敗は、「単なる失敗」では終わりません。
かすり傷どころか、致命傷を受け、再起の可能性を断つことになります。

では、どうすれば良いのか?

ひたすら、「我慢」することです。

我慢というと、いかにも無策のように感じるかもしれませんが、そういう意味ではありません。
攻撃をしないで、「防御」に徹するということです。

経営における防御とは、「財務体質を改善する」ということです。
まずは、自らの出血を最小限にとどめ、

チャンスが来たら、いつでも攻撃に転じることが出来るように、体力を温存しておくのです。

私はこれまで、数多くの倒産寸前の企業を建て直してきましたが、まず最初にやることは、「出血を止める」ということです。
出血が多すぎて、体力が持たない会社もありましたが、ほとんどの会社は、財務体質を改善することで再生できました。

ガン細胞に犯されている部分は切り落とさなければなりませんから、多少の痛みは生じますが、生き残ることはできます。
生き残ることが出来たら、次は、輸血です。
資金調達をすることにより、もとの体に戻します。

事業が不調になる根本原因のほとんどは、「固定費」と「変動費」のバランスの悪さです。
これについては、会員用ページで詳しく述べますが、
起業家の方は、こうした状況に陥らないよう、事前に財務体質のチェックと、その改善策を知っておくことが必要です。

この点については、「決算書」のカテゴリーで説明します。

致命傷を負って後悔しても、もう手遅れなのです。

成功した経営者に共通したものとは?

起業することは誰でもできます。 しかし、会社を継続させ、勝ち残っていくことは、そうたやすいことではありません。

誰でもこんなことは、一度は聞いたことがあると思いますが、
起業家のあなたには、具体的にイメージできないのではないでしょうか。
起業とは、その準備段階から、ある程度の具体的障害を意識して、計画的に物事を進めておかないと、
逆境に立たされた時に、いとも簡単に挫折してしまうものです。

今後あなたに降りかかるであろう障害と、その予防策については、このHPでお伝えするつもりですが、

ここでは、精神面について述べてみようと思います。

これまで私は、3,000社以上の会社の経営者と接してきましたが、
成功している経営者に共通しているのは、「ハングリー精神」です。

こう書くと、あなたは、「な~んだ、そんなことか」と思われるかもしれませんが、
成功している人は、このハングリー精神が、異常なほど頭抜けています。
目標達成のためには、どんな壁が立ち塞がろうが、どんなトラブルに見舞われようが、ひたすら邁進し続けます。
それはもう普通ではありません。

それと同時に感じるのが、
その気持ちを、何年経とうが、どれだけの資産を手に入れようが、持ち続けているということです。

誰でも初めのうちは、「何としてでも成功してやる」「会社を大きくしてやる」と、

ハングリー精神むき出しで頑張るものですが、なかなかそれを継続させることは難しいものです。

もしあなたの会社が、年商50億位の売り上げを上げるようになったとしたらどうでしょうか。
純利益で2億程度のお金が手に入るわけですから、相当優雅な生活が出来るはずです。
都心に豪邸を建て、ベンツに乗り、休暇は別荘でのんびりと、家族団らんの時間をすごせます。

そうなると、ほとんどの起業家は、スタート時のような、ハングリー精神を失ってしまいます。
その生活を守るために、あえて新しいことに挑戦しなくなり、防御に回るようになります。

会社という生き物は、不思議な性質を持っていて、
守りに入ると、売り上げは伸びなくなるどころか、落ち込んでいきます。

年商50億の会社が、あっという間に奈落の底へと落ちていきます。
残るのは、借金だけです。

それほどまでに、ビジネスの世界は厳しいものなのです。
だからこそ、会社の成長には、ハングリー精神を持続させるということが大切なのです。

このハングリー精神の持続を、強力に阻害するものがあります。
それが、プライドです。

私が起業したばかりの頃の話です。
ある取引先が、私に無断で、別の取引先に損害を与えてしまいました。
本人に問い正すと、言い訳ばかりをしてらちがあきません。
くやしい思いをしましたが、私が全額その損害部分を立て替え、両者の関係を修復しました。
本当なら、自分のプライドを守るために「なんて事をしたんだ、おたくとはもう付き合えない」とタンカの一つも切ればカッコ良かったのでしょうが、
私はあえてそうしませんでした。
なぜか?
それは、その取引先に、まだ利用価値があったからです。

私は昔から、そうしたやり方をとる人間を身近に置きませんから、
その後、その取引先との関係は断ちましたが、それまでの期間は、私の収益を上げるために利用させてもらいました。

起業家にとって、一番大切なのはプライドではなく、成功です。
表面的なプライドのためにカッコつけることは、男らしいことでも何でもありません。
単に、「成功したい」という意欲が少ないだけです。

人の道に外れない限りは、利用できるものは利用するという「貪欲さ」が、起業家には必要です。
バカと言われようが、何と言われようが、目的達成のためには、我慢する。
自分の中の怒りや悔しさをコントロールして、どうすれば勝てるのかを冷静に考える。
そうした炎と氷の両面を持つことが、起業家には必須条件です。

私は昔から破天荒な人生を送ってきたせいで、知人からは猪のように思われているみたいですが、実は、冷静に準備してから行動する人間です。
決して、危険な雪山を無防備で登るようなことはしません。
ただし、いったん安全だと思ったら、たとえ鋭角の絶壁だろうと、脇目も振らず、頂上を目指して上って行きます。

ビジネスの世界で勝ち残るためには、いかに「安全な賭け」を見抜くことが出来るかが、勝敗を分けるのです。

成功者の根底に流れる考え方とは?

前述の「ハングリー精神」について、もう一つ言っておくことがあります。
それは、「なぜ成功者は、それほどまでに強烈なハングリー精神を持ち続けることが出来るのか」ということです。

これも、ほとんどの成功者に共通していることがあります。
それは、「マイナスの感情」です。
幼少の頃からの劣等感や敗北感、悔しさ、惨めさといった、コンプレックスのような感情です。

私なんぞは、成功者のはしくれにもならない様な人間ですが、私自身も起業の動機は、このマイナス感情が原点になっています。
幼い頃から、異常なほどの貧乏だったため、周りの友達からバカにされないよう、常に一番を目指してきました。
たとえ一番になれなくても、何度でも挑戦し続けます。
そのための努力や苦労などは、何とも思いません。
「いつかは絶対勝ってやる」と、その気持ちだけでやってきました。

もちろん、成功者がみんなこうしたマイナスの感情を持っているわけではありません。
そんな感情抜きで、成功した方もたくさんいらっしゃいます。

ただ、そうした感情に根ざした人のほうが、逆境に強いのは確かだと思います。
要は、打たれ強いということです。

幼い頃から打たれまくられていますから、少々のことではへこたれません。
それに、心を緩めると、劣等感のカタマリだったあの頃に逆戻りしてしまうという恐怖から、

多少の財産を手に入れたとしても、絶対に気を抜きません。
それと、本来自分は負け犬だということを自覚していますから、変なプライドを持っていません。
他人の意見を謙虚に受け止める土壌が、出来上がっています。

ですから、もしあなたが劣等感のカタマリであるのならば、
それは、起業家として、必要な資質を持っているということです。

他の人よりもアドバンテージを握っているのです。
変なプライドを捨て、どうか自信を持って、起業の準備をしてください。

それに関連してですが、起業に際して非常に大切なものがあります。
それは、「経営理念」です。
起業の「動機」「志」とも言い換えることができます。

起業家を志すあなたは、本などで何度も、「経営理念が大切だ」という言葉を聞いてきたと思います。
経営者として苦労したことのない人からすると、これは単なるお題目のように聞こえると思いますが、

実はこれは、本当に大事なことなのです。
「これなくして起業の成功はあり得ない」といっても、過言ではないと思います。

これについては、起業家の最重要項目なので、会員用ページで詳しく述べますが、

会社の存続にとって欠くべからざるものです。
おそらく、経営理念の持つ本当の意味は、

ある程度経営を続けないと、実感として捕らえることは難しいと思います。

ただ、ここで知っておいてもらいたいのは、
「経営理念」というものは、あなたの本心と一致していないと、何の意味も持たないということです。

どこかで借りてきたような、「技術と信頼」とかいったような経営理念を壁に飾ったとしても、何の効果もありません。

自分に正直な経営理念という意味では、私は、最初は、「金持ちになりたい」でも良いと思います。
何がなんでも金持ちになりたいと、心底思っているのであれば、それで構いません。
お題目のような経営理念を掲げるよりは、何倍も効果があると思います。

ただし、ここが一番大切なところなのですが、
いつまでも、こうした「私心」にとらわれた理念では、いつかは失敗します。

経営理念というものは、経営者の成長と共にあるべきものです。
経営を続けていると、様々な障害が立ち塞がってきます。
最初のうちは、それほど苦労しなくても乗り越えることが出来ますが、年月を追うごとに、その壁は巨大なものになってきます。
その壁を目の前にして、「私心」では、精神的に耐えられないのです。

なぜなら、「私心」というものは、自分の欲のことですから、「いくらでも状況に応じて縮小可能」だからです。

クルーザーが無理だと思えば、ヨットにすればいいのです。
しかし、一度自分の志を縮小してしまえば、後は歯止めがききません。
もう二度と、その壁に立ち向かおうとは、考えられなくなってしまいます。
そして、徐々に、会社は下降線をたどります。

強い意志を持ってその壁に立ち向かうには、やはり、誰が聞いても納得できる大義名分が必要なのです。
もちろん、それと同時に、経営者としての心の成長も必要です。
それが、「経営者の器以上には、会社は大きくならない」という所以でもあります。

そういう意味では、経営理念とは、経営者の器を測る「モノサシ」ともいえると思います。

起業家の基本姿勢とは?

苦境に立たされたとき、その敗北感が次のステップのためのエネルギーになると言いましたが、

その敗北感を、プラスのエネルギーに変えるには、「すべては自分の責任だ」と割り切ることが必要です。
そうしないと、いつまで経っても次の目標に向かうことが出来ませんし、

エネルギーが心の内側へと入っていき、目標すら見失ってしまいます。

あなたは、起業家として未知の荒波に向かっていくわけですから、

これから、今まで経験したことのないような裏切りに遭遇することになると思います。
「どう考えても相手が悪い」というケースもあると思います。

しかし、それでも、「こんなことが起こったのは、自分が悪い」と考えなければなりません。
それが、あなたを、経営者として成長させる唯一の道です。

どんなトラブル、障害にも、必ず原因があります。
会社に起こったことであるなら、あなたに責任が無いわけはないのです。
「今回の出来事は、何が原因だ。どこをどう直せば良かったんだ」と考えることで、
次に同じようなことが起こったとき、教訓として生かされるのです。

それが、あなたを、「プロの経営者」として成長させます。
その繰り返しによって、経営者としての実力が養われていくのです。

それに関して、もう一つ付け加えておきたいことは、
人から裏切られることはあっても、「自分が、人を裏切ってはならない」ということです。

ビジネスの世界は、生き馬の目を抜く、熾烈な世界です。
起業したのであれば、当然、同業他社を攻撃したり、出し抜くことがあっても構いません。
それこそが、ビジネスの醍醐味でもあり、面白さでもあります。
ここに甘さがあると、反対に出し抜かれてしまいますから、個人の感情は抜きにして、徹底的に攻撃を仕掛けるべきです。
そうでないと、成功などあり得ません。

しかし、対人間においては、絶対に不誠実なことをしてはいけません。

起業したばかりの小さな会社では、あなたの信用が、すなわち会社の信用です。
起業というものは、この「信用」をコツコツと積み上げていく作業かもしれません。
まだ会社に体力のない段階で、信用に傷が付くと、それが致命傷になる場合が少なくないからです。

起業したばかりのときは、「あなた自身の信用が、会社の信用」だということを肝に銘じ、
誰からも後ろ指を指されることのない様、行動することが大切です。

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