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資金調達・銀行融資

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ナニワ節ではカネは借りられない

昔から、経営に必要なものは、ヒト・モノ・カネ・情報といわれます。
ヒト・モノ・情報は、やる気や情熱があれば、ある程度は手に入るかもしれません。

しかし、カネ(資金)だけは、いくら情熱があっても調達することは出来ません。

銀行の窓口で、「俺は成功するまで諦めない!そんな俺を見込んで1,000万円貸してくれ!」と、いくら熱弁をふるったとしても、

お金をしてくれる銀行は皆無です。
銀行が、ナニワ節などで融資するワケがないのです。

あなたは貸す側の判断基準を知っているか

私のところにも、多くの経営者や起業家の方々が、資金調達の相談に来られます。
彼らは決まって、「○○万円あれば会社を持ち直すことが出来るんだ」「ビジネスモデルには自信があるので、あとは資金調達だけなんだ」と、熱い想いを語られます。
それらの言葉は、確かに迫力はありますが、

逆にこちらから、「なぜそんなことになってしまったのですか?」「借りたお金はどうやって返済するつもりなのですか?」と質問すると、

明確な答えが返ってきません。

起業家のケースだと、これから始める事業について1時間近く説明をしてもらっても、

気持ちが先に立つせいか、どうしても肝心な部分が抜け落ちていて、事業内容に不安が残ります。

しかし、「コチラから色々な項目についての質問を行い、それに回答してもらう」ことで、
融資可能な案件に組みなおすことができます。
つまり、「資金調達したい人の説明や提出資料」と、「銀行が欲しがる説明や提出資料」に、ズレがあるということです。

これはすべて、「貸す側が、どこで判断するのか」を知らないことが原因です。

これでダメなら、もう資金調達は諦めたほうがいい!

もちろん、ほとんどの人は、「銀行にいて、貸す立場を経験した」ことがないわけですから、無理もないことだと思います。
しかし、経営者であるなら、それでは済まされません。
「たった一つのこと知らなかったため、会社を潰すことになる」というのが、
「資金調達」の怖さです。

この章では、私が銀行員時代を含め、35年以上にわたり、実際の現場で、社長と共に資金調達のお手伝いをしてきた、実践ノウハウを公開します。
「銀行」「公庫」「投資家」から資金を引き出すコツを、「貸す側」の立場から、具体的に解説します。

「どんな事業計画書を書けば良いのか?」
「銀行は、決算書のどの部分をどのように分析して、融資を決定するのか?」
「銀行や投資家の質問には、どのように答えればよいのか?」

机上の空論ではない、
実際の現場・実務から導き出された、究極のノウハウがここにはあります。

これだけ知っておけば、もう資金調達には困らない!!
そう断言できるだけの内容であると自負しています。

資金調達の壁を乗り越え、あなたの夢が実現することを心から願います。

起業に必要な資金をシュミレーションしてみよう

起業に必要な資金は、「どんなビジネスをやるか」で千差万別ですが、
一般的には、「設備投資」と「運転資金」という分け方をします。

設備資金・・・商売を始めるにあたって最低限の設備を整える資金

例:事務所・店舗の保証金、敷金、内装費
   什器・備品の購入費、事務用品の購入費

運転資金・・・商売を始めて、月々に必要になってくる費用

例:在庫商品の仕入れ代金、事務所の家賃や事務経費
   社員・バイトの人件費

「設備資金」「運転資金」という区別は、銀行で融資を申し込む場合の大切なポイントになりますので、よく覚えておきましょう。
どうでもいいように感じるかもしれませんが、非常に重要なことです。

なぜなら、

1、銀行は「資金使途」を重要視するため、 申し込みに際して、「この区別が曖昧だと、融資の対象にならない」ことがあります。
2、「設備資金」と「運転資金」では、借入限度額や返済年数に違いがあります。また、「運転資金」とは別枠で、「設備資金」が融資してもらえる場合があります。

つまり、どの部分を自己資金で補い、どの部分を「借り入れで」補うかによって、
起業後の資金繰りに多大な影響を与えるということです。
もちろん、借り入れをする順序も大切です。

これらは、後で変更はききません。
なぜなら、貸す側(銀行)にとっては、「資金使途が変わってしまう」ことになるからです。

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必要資金の試算表を実際に作ってみよう

ここでは、「設備資金」「運転資金」という分け方ではなく、「初期投資」と「ランニングコスト」に区別して算出します。

次の表を、埋めていってください。
もちろん、現実的な数字でなければ意味がありませんので、分からない場合は、自分なりによく調査することです。

この段階でアバウトなようだと、事業で成功することはありません。

実際に起業すれば分りますが、この程度の見込み額の算出は、努力のうちに入りません。
経営に携わると、毎日が、その何十倍もの苦行の連続です。
起業前からドンブリ勘定では、いつか必ず失敗します。

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注1.
起業してからのランニングコストは、「3ヵ月分で計上する」こと。
売上がたってすぐに入金があるケースは少なく、入金は、2ヶ月後、3ヵ月後の場合が多いものです。
そのため、3ヵ月間は未収入でも大丈夫なように、運転資金を確保しておくことが必要です。

注2.
ここで算出した必要資金は、最低限だと心得ること。

実際に起業すると、お金が足らなくなることはあっても、余ることはありません。

思った以上に、目に見えないお金が出ていくものです。
ここで計算した資金は、必要最低限の数字であり、
実際には、倍近い資金が必要になるケースが多い、ということを頭に入れておいてください。

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資金不足の場合、どこで調達すればいいのか

起業に必要な資金の算出が出来たら、次は、「どうやってその資金を調達するか」です。

「算出額のすべてを自己資金でまかなう」ことが理想ですが、現実的には難しいものです。
実際には、「必要資金の半分程度の自己資金しかない」というのが、現実ではないでしょうか。

では、その不足分を、どこから調達するか?
大きく分けると、以下の3つとなります。

A.親・兄弟・友人・知人
B.金融機関
C.ベンキャーキャピタル・投資家

A.親・兄弟・友人・知人

これが、最も現実的な調達先ではないでしょうか。
起業を決心したなら、出来るだけ早めに当たってみることです。
ここでいくらの資金が調達できるかが、起業の第一関門です。

もし、自分が予想していたよりも調達できないようなら、
起業そのものを、もう一度考え直してみるべきかもしれません。

その理由は2つあります。

1.起業すれば、毎日が「説明の連続」となります。

協力者を得るために、ビジネスモデルの説明、取引先開拓のために商品・サービスの説明、
融資を受けるために、銀行・投資家への説明、優秀な社員を獲得するために、経営理念の説明等々。

彼らは全員、あなたの説明を聞きたくて、わざわざ時間を作ってはくれません。
アポを取ること自体が、難しいケースもたくさんあります。
要するに、「いかに短時間で、相手の興味を引くことが出来るか」がポイントです。

親や友人のように、あなたのために十分な時間を割いてくれるわけでもありませんし、前向きに検討してくれるわけでもありません。
親や友人ですら、「よし、それならお金を出してやろう!」と説得できないようでは、
「説明能力が不足している」か、「ビジネスモデルそのものに問題がある」かです。

好意的な人間ですら動かせないようなら、その何十倍も難しい、起業の世界ではとうてい通用しません。

2.あなた自身に問題があるのかもしれません。

説明もキチンと出来たし、ビジネスモデルも気に入ってもらえた。
でも、お金の話になると、腰が引けてしまう。
これは、あなたのこれまでの行動に、問題があることが多いです。

いくら親や知人とは言っても、経営に関しては、素人です。
あなたの事業内容を説明しても、なんとなく儲かりそうだと思うかもしれませんが、「絶対に成功する」とは考えないでしょう。

そうなると、「お金を出す、出さない」の判断基準となるのは、
「これまでの行動から判断して、こいつは失敗しないだろう」という、人間性の部分になります。

あなたを良く知る人間が、「こいつなら大丈夫だ」と太鼓判を押すくらいの信用を得ていなければ、
なかなか自分のなけなしのお金は出してくれません。

商売の基本は、「信用」です。
その「信用」が、あなたにないのなら、起業しても、成功はおぼつかないと思います。

では、ここで資金を用意してくれる人たちが見つかったとします。
そのお金を、どう処理すべきでしょうか?

大きく分けて、処理の仕方は2通りあります。

1.あなた個人の借入金にする
2.会社への出資金にしてもらう

1. 借入金の場合

借入金である限りは、「返済条件」と「利息」を提示しなければなりません。

返済条件については、「最低1年以上の据え置き期間」を設けて下さい。

会社というものは、設立して1~2年は、赤字になる可能性が高いものです。
無理な返済条件を提示することは、あなたの信用にかかわる重大な問題です。

また、利息については、出来るだけ、年3%以下に押さえて下さい。

業種にもよりますが、営業利益で20%以上も儲けるのは、至難の業です。
このあたりの計算方法は、会社を継続する上で、経営者なら必ずマスターしておかなければならない重要なことです。
会社を正常に機能させるために、最低限知っておかなくてはならない数字については、会員用ページで説明します。

私は、調達したお金については、出来るだけ、「個人への借入金」で処理することをお勧めします。
なぜなら、お金さえ返してしまえば、後腐れがないからです。

出資金で処理すると、その出資比率により、後々さまざまな問題が発生します。
経営に口をだされても文句は言えませんし、利益が出れば配当も支払わなくてはなりません。
また、増資が必要になった時にも、問題が起こります。
そうした問題が原因で、空中分解してしまった会社を、これまで数多く見てきました。

特殊なケースを除き、出来るだけ「個人の借入金」として処理することをお勧めします。

次に、個人の借入金として調達したお金を、どうするかという問題です。
あなたは単純に、「銀行に入金すれば良い」と考えるかも知れませんが、それだけではダメです。

同じお金であるなら、もっと先を睨んで、有効に活用すべきです。
そのあたりの注意事項については、最後にまとめて述べてみます。

2.出資金の場合

出資金の良いところは、当面、「提供してもらったお金を、返す必要がない」ということです。

しかし、利益が出れば、配当を支払わなければいけませんし、相手は、事業経営に対して、発言権を持ちます。
増資が発生する場合にも、特殊比率や役員の問題でトラブルが発生することが多くなります。

出来れば、個人から調達を受ける場合は、出資という形は避けるべきです。
どうしても、出資金としてしか処理できない場合は、
「契約内容」「出資比率」について、後々問題が起こりにくい形での契約を提示することです。

そのポイントについては、重要なことなので、会員用ページで説明します。

B.金融機関

今はあまり思わないかもしれませんが、商売を続ける限り、いつかは金融機関での借り入れが必要になります。
経営者としての仕事の半分は、「資金繰り」だと考えていて下さい。

どんなに会社の利益が上がっても、資金がストップすれば、会社は倒産します。
会社に必要な資金を、利益の中から調達することはほとんど不可能です。

つまり、どういうことかというと、
「いつでも銀行で融資を受けられる財務内容を、継続しておく」ということです。

これからの銀行融資は、「決算書の内容のみで判断される」方向に進みます。
以前のように、事業の可能性だとか、社長の人柄で判断される部分のウェイトは、どんどん減ってきます。
すでに、メガバンクの主力商品である、「ビジネスローン」の判断基準は、決算書のみです。

これからの経営者にとって、欠くべからざる知識は、
「銀行からの資金を調達するための、決算書はどう作るべきか」なのです。

銀行の審査に合格するためのチェックポイントについては、会員用ページで述べますが、

これを知っているのと知らないのでは、会社の存続にかかわる最重要項目です。
やっと売上が上がってきたのに、資金が調達できないために倒産することほど、後悔することはありません。
ぜひ、このことを覚えておいて下さい。

金融機関からの調達は、大きく分けて5つあります。(現在、国民生活金融公庫は、「日本政策金融公庫」に名称変更)

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国民生活金融公庫

民間の金融機関に比べ、融資が通りやすいのが特徴です。
特に、起業家にとっては、「開業資金の融資に応じてくれる」という点が魅力的です。

融資対象も、金融業や一部の遊興娯楽業を除いては、特に問いません。
次に挙げる、信用保証協会と同じく、起業家が最も調達しやすい金融機関です。

ただし、注意点もたくさんあります。

「自己資金が開業資金の50%以上ある」ことや、「資金使途」について、チェックが入ります。
また、特徴として、「預金通帳」に対して、厳しい審査があります。

逆に言えば、そうしたチェックポイントを予め知っていれば、「前もって資金を調達するための準備が出来る」ということです。

あと忘れてならないのは、新規開業融資を申し込む場合には、「決算書の提出が不要」だということです。

「そんなことは当たり前だろう」と思われるかもしれませんが、これはとても重要なことです。
なぜなら、「1年後に決算書が出来てから申し込んでも、落とされることが多い」からです。

中小企業の決算書の8割は、点数に換算すると、30~40点程度の財務内容です。
合格点は、およそ60点くらいですから、はるかに及びません。

つまり、「これが、最後のチャンスになるかもしれない」ということです。

後もう一つ知っておかなければならないのは、審査基準です。

融資がOKかどうかの判断は、「開業計画書」で決まります。
決して、絵に描いた餅の「事業計画書」ではありません。
ここを履き違えると、通る融資も通らなくなります。

また、そのポイントとなる「開業計画書」ですが、日本政策金融公庫では、ご丁寧に「開業計画書の記入例」を配布しています。
それぞれのチェック項目についての記入例を掲載していますが、
その記入例を真に受けて、空欄を埋めていくと、通るものも通らなくなります。

「開業計画書」にも、書き方のコツがあるのです。

何も知らない税理士先生やコンサルタントが、
「記入例を参考に書けば大丈夫です。申し込みをすれば面接がありますから、そのときに事業に対する熱意やポイントを伝えましょう。」
と、いい加減なアドバイスをすることがあります。

ここではハッキリ言っておきますが、面接官は、あなたの事業にかける情熱や夢など、全く聞いていません。
「開業計画書」に書いた文章がすべてです。

開業計画書の書き方のコツや、融資のポイント、クリアすべき条件とそのための準備に必要とされる裏ワザについては、会員用ページで詳しく説明します。

信用保証協会

銀行では、「保障協会」「信保」「マル保」と呼ばれているものです。
これも、前述の公庫と同様、開業資金も融資しますし、難易度も低めです。
起業家にとって、魅力的な機関といえます。

公庫と大きな違いは、「必ず銀行を窓口にしないといけない」ということです。

これは、とても重要な違いです。
つまり、公庫では、公庫の審査さえ通れば資金調達できますが、
保証協会では、「銀行が了承しないと、お金が借りられない」ということです。

これは、両者のシステムに、その原因があります。
公庫の場合は、お金を出すのは、あくまで公庫です。
しかし、保証協会の場合は、お金を出すのは銀行であり、保証協会は、その保証をするに過ぎないのです。

「保証しているのなら、銀行も文句言わないで融資すればいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、

実際は、そう簡単なものではありません。
延滞をすれば督促もしなければなりませんし、もし代弁(保証協会が債務を肩代わりすること)になれば、

保証協会に支払う保証料も上がり、銀行にとってはデメリットとなります。
だから、銀行は、融資に慎重にならざるを得ません。

銀行が審査するわけですから、
公庫に比べて、「事業計画書」の出来不出来が、合否を分けるというのも特徴の一つです。
公庫の「開業計画書」と同様、保証協会の「事業計画書」の書き方にもコツがあります。

また、保証協会で融資を受けるためのポイントや、そのために前もって準備しておかなくてはならない裏ワザもあります。
それらについては、会員用ページで詳しく説明します。

ビジネスローン

これは、メガバンクが5~6年前に開発した、画期的な商品です。
今後の資金調達においては、
「この商品の攻略法をマスターしなければ、会社の存続にかかわる」というくらいの必須商品です。

では、ビジネスローンとは、どんな商品なのか?
その特徴とメリット、デメリットについて述べてみます。

1. スピード審査

なんと、申し込みから一週間程度で、融資が実行されます。
これは、今までの銀行融資では、考えられないことです。
これまで銀行融資では、実行まで3週間程度、場合によっては1ヶ月以上かかっていましたが、

この商品ではスピード審査が可能になりました。
このスピードこそ、ビジネスローンの最大の特徴であり、起業家にとって大きなメリットです。

2. 担保がいらない

いままで銀行融資といえば、担保・保証人を請求していました。
今でもそう思っている人も多いと思いますが、それは過去の話です。
担保も保証人も、全く必要ありません。
これにより、今まで不動産や保証人がいないため、融資が受けられなかった多くの会社が救われることになります。

3. 新規取引でも融資してくれる

これも、画期的なことです。
これまで銀行は、最低でも一年以上の取引がないと、融資の対象外でした。
たとえ一年を経過したとしても、よほどの会社でない限り、融資することはありえませんでした。
それが、この商品では、普通預金の口座すらなくても、審査にさえ通れば、融資してくれます。
これにより起業家は、数多くのビジネスローンに申し込むことができるようになります。

4. 審査は決算書のみ

これが、ビジネスローンの特徴のすべてです。
メリットでもあり、デメリットでもあります。

上記述べたように、この商品は、起業家にとって数々のメリットがあります。
しかし、裏を返せば、「銀行にとっては、リスクの高い商品」だというこということです。
なにせ、何の実績もない会社に融資するわけですから。

銀行は、こうした「起業家にとってのメリットと、銀行のリスクを同時に回避する」方法をあみ出しました。
それが、「スコアリング」と呼ばれる、評価の仕組みです。

これまで銀行は、融資の申し込みを受けると、担当者が、その会社の事業計画書や決算書を分析して、稟議書を書いていました。
私も夜遅くまで、こうした作業をやった記憶があります。
ところが、この商品では、コンピューターに決算書の内容を入力するだけで、審査できるようになったのです。
これにより、取引がなくても、異例のスピードで融資の可否を検査することが可能になりました。

反面、デメリットもあります。
それは、「決算書の数字がすべて」ということです。

起業家のように、発展途上の会社は、「決算書に表れない、様々な良いところ」を持っています。
今は赤字でも、やっと今期から黒字転換する見通しがついたとか、
長年、研究開発してきた商品が、やっと日の目を見ることができそうだとか。

しかし、ビジネスローンでは、そうした決算書に表れない要素は、すべて削除されます。
決算書に出ていない、どんなに優れた点があっても、それは評価されません。
決算書の数字がすべてです。

これまで私は、数多くのビジネスローンを実行してきました。
もちろん、すべてのローンが通ったわけではありませんが、銀行に長年いたおかげで、決算書の審査基準は知っています。

現段階では、ビジネスローンの合格基準は、60点ぐらいではないかと推測しています。
しかし、悲しいかな、一般の中小企業の決算書で、そこまでしっかり作成されたものにお目にかかることは、滅多にありません。
点数に換算すると、30~40点程度です。

これは仕方のないことです。
税理士は、あくまで税金を計算する専門家であって、融資の専門家ではありません。
もちろん、銀行の審査基準など知るよしもありません。

よく税理士が、生命保険を導入して節税対策をしている決算書を見かけますが、銀行融資では逆効果にしかなりません。
損金計上したため、決算書の財務バランスが悪くなり、融資枠がなくなるのです。

起業家の人は、常にいつでも銀行から融資が受けられる準備を整えていなければなりません。
いざというときに、資金調達できなければ、会社は倒産します。

融資を受けたいのなら、提出する決算書は、単なる伝票の集計ではいけません。
コンピューターの分析に耐えうるだけの財務バランスが必要とされます。
「この決算書を提出したら融資は受けられないかもしれない」
そう予想できたら、早めに何らかの手を打っておく必要があります。

借りるための見せ方もありますし、工夫も要ります。

もちろん、それは、粉飾とは違います。
「体は小さくとも、筋肉質な決算書にする」ということです。

では、どんな決算書なら良いのか?

これは、狙う点数により、そのポイントが違います。
ビジネスローンという商品は、決算書の点数しだいで、「融資額」「借入期間」「金利」が決まります。

つまり、「点数が高いほど、有利な条件で融資が受けられる」ということです。

ギリギリの合格ラインを狙うのなら、それほどたくさんの注意ポイントはありません。
最低で、3~4ポイント程度でしょうか。

それらのポイントについては、会員用ページで詳しく説明するつもりですが、これだけは覚えておいてください。

これからの資金調達は、ビジネスローン抜きでは考えられない。
そして、その合否は、「決算書の分析結果だけで判断される」ということを。

銀行のプロパー融資

「銀行が、自らの判断で貸し出す融資」のことをいいます。
そのため、プロパー融資は、当然のことながら、リスクは銀行がすべてかぶります。

銀行はリスクをとるのがイヤですから、実際には、中小企業に対して、新しいプロパー融資はほとんど行いません。
ましてや、起業して間もない会社に融資することなど、ありえないと考えてもらって結構です。

ただ、ここで知っておいてもらいたいことがあります。
それは、銀行が融資判断する場合の、判断基準です。
これを「格付け」といいます。

「格付け」は、金融庁の金通検査マニュアルにのっとって行われます。
この「格付け」には、「定性評価」と「定量評価」の2種類があります。

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「定性評価」とは、社長の人柄や会社の技術力、将来性といった、数字では評価しにくい要素を見るものです。

「定量評価」とは、自己資本や自己資本比率、キャッシュフローといった財務指数を分析して評価するものです。

上の表を観てもらえば分ると思いますが、メガバンクの「定性評価」はゼロです。
つまり、「社長の人柄も、会社の将来性も、全く見ない」ということです。

その点、地銀や信金などは、会社の将来性や社長の人柄も、評価してもらえます。
同じ財務内容でも、格付けが上がるわけですから、「起業家が借りるなら、地銀や信金のほうが有利」だということです。

ただし、前述のビジネスローンのところでもいいましたが、
これからは、地銀・信金も、「定量評価」の割合を上げていく傾向にあります。
つまり、ますます「財務内容を重視していく」ということです。

そうなると、この「定量評価」の配点基準が、どんなものなのかが気になることと思います。
詳しい配点基準については、会員用ページで表にしますが、起業家の人にも、これだけは知っておいてもらいたいことがあります。

銀行は、決算書を分析する場合、全部で100以上の数値を分析します。
それぞれの数値は、「安全性」「収益性」「成長性」など5つの項目に分けられます。
そのうち、最も配点が高いのは、「安全性」「企業規模」です。

その中でも、特に高配点なのは、「自己資本額」と「自己資本比率」です。
この2つだけで、100点満点中、40点を占めます。

これをなぜ起業家の人に知っておいてもらいたいのかというと、

これからますます増加するであろう、「1円起業」と密接な関係があるからです。
あなたは「新会社法」の施行により、「簡単に会社が設立できるようになった」くらいにしか考えてないかもしれませんが、

一円起業ということは、「資本金ゼロの会社」ということです。

資本金ゼロなら(資本金50万程度でも同じことです)、「自己資本額」も「自己資本比率」も、配点はゼロです。
つまり、この時点で、「定量評価」では、100点満点中60点ということです。

他の分析数値が満点ということはあり得ませんので、

残念ながら、会社を設立した時点で、融資を受けられる可能性はゼロです。
あなたは、これからの長い道のりを、銀行から資金調達なしでやっていかなくてはなりません。
無借金経営で会社を成長させることは、ほぼ皆無だといえます。
いずれ近い将来、倒産することになるでしょう。

銀行のプロパー融資に限らず、ビジネスローンも公庫も保証協会も、すべて資本金を重視します。
本当に会社を存続させたいのであれば、「ある程度、自己資金を貯めてからの起業」をお勧めします。

どうしても自己資金がないという方も、裏ワザがありますので、直接相談にこられた方にはお教え致します。

また、銀行との取引を継続する上で、絶対に身につけておかなくてはならない知識があります。
それは、銀行があなたの会社に対して、「融資に前向きなのかどうか」を感じ取ることのできる知識です。

この読みを誤ると、アテにしていた融資が土壇場でひっくり返されてしまい、会社が窮地に陥ることになります。
銀行員の「考えておきます」「次の融資もあり得ます」「検討します」といった言葉を真に受けてはいけません。

銀行員には、「銀行独特の言葉の使い方」があるのです。

こうした言葉の持つ本当の意味や、銀行の本音の見分け方、交渉術については、会員用ページで詳しく説明します。
また、起業家のメインバンクの選び方や、融資を前向きにさせる付き合い方などもお伝えします。

ノンバンク・商工ローン

あなたは、ノンバンクも商工ローンも同じようなところだと思っているかもしれませんが、
この両者は、明らかに違います。
簡単にいうと、ノンバンクとは、オリックスやリコーリースのような、いわゆる「クレジット会社」です。
それに対し、商工ローンとは、いわゆる「マチ金」です。

企業に融資するという点では、どちらも同じですが、その融資方法は全く違います。
詳しくは後で述べますが、ノンバンクの場合は、銀行の金利が高いバージョンだと考えて下さい。
審査基準も、「決算書」が中心になります。

これに対し、商工ローンは、「決算書」は見ません。
彼らは、「申し込みに来た会社は潰れる」という大前提で融資しますので、
審査基準は、「担保」です。

この「担保」も、銀行が請求する「不動産」や「保証人」だけではありません。
換金できそうなものは、すべて担保に取ります。

その最たるものは、「売掛金」です。
将来入金予定の売掛金を、「停止条件付債権譲渡」という形で、担保に取ります。
つまり、売掛金の返済が出来なかった場合は、「取引先から売掛金を譲渡してもらって、債権を回収する」ということです。

あまりピンとこないかもしれませんが、
この回収方法は、企業にとって、死活問題となります。
なぜなら、債権譲渡という方法で債権を回収されたら、「今後一切、その取引先とは、取引できなくなる」からです。

あなたがマチ金と取引していることもバレますし、当然、先方の取引先にも、マチ金の人達が訪問することになります。
取引先にとっては、いい迷惑です。
「お前のおかげでえらい目にあった」と、さんざん罵倒されることとなります。
もちろん、取引がなくなることも、十分考えられます。

まず、大前提として、「ノンバンク・商工ローンには手を出さない」というのが大切です。

ノンバンクであっても、銀行は、「銀行で調達できないから、こんなところで借りたんだ」と解釈します。
いずれにせよ、「銀行の融資が難しくなる」ことに、違いはありません。
時々、商工ローンをそのまま載せている決算書を見ることがありますが、これは問題外です。
永久に、銀行から融資を受けることは出来ません。

ただし、「ノンバンクや商工ローンは、絶対に使ってはいけない」というようなものでもありません。
ケースバイケースで、会社にとっては、起死回生の一発になる場合もあります。

ノンバンクでも、最近は、「無担保で、運転資金を5%以下で融資する」ところもあります。
銀行とは違った、特色のある融資商品を開発しているところもあり、資金調達の間口を広げる意味で活用できます。

また、商工ローンにしても、「銀行で融資を受けるための条件をクリアする」ために使うことがあります。

ただし、これらは「危険物」ですので、
一般の危険物の取り扱いと同様に、細心の注意を払わなければなりません。

一歩間違えると、会社は倒産してしまいますので、出来るだけ、その方面の専門家に相談することをお勧めします。

よくあるケースですが、来月入金予定のお金をあてにして、「短期だからいいか」と商工ローンから借り入れしたりします。
これが、地獄への第一歩となります。

商売をやっていると、入金ズレなどは日常茶飯事ですが、
商工ローンで借り入れすると、その内容は、「信用情報」に登録されます。
「じゃあ、商工ローンを返済してから、銀行に申し込めば大丈夫」と思われるかもしれませんが、そんなに単純なものでもありません。
今日返済したから、「明日には、データベースから名前が消えている」というわけではないのです。

最終的に、データベースの借入残が消えるまでは、ある程度のタイムラグがあります。
これは、各々の商工ローン先によりまちまちですが、あなたが考えているよりは、長期間残ります。

また、たとえ借入をしなかったとしても、「照会履歴」が残ります。
この履歴が、商工ローンからのものだった場合は、その時点でアウトです。
あなたの会社は、今後、銀行から目をつけられることになります。

利用するのであれば、
すべてを理解した上で、タイミングを考え、ミスの無いようにしないと、取り返しのつかないことになるのです。

ノンバンク・商工ローンの効果的な利用方法については、会員用ページで詳しく説明します。
それまでは、こうした金融機関の利用は、極力控えてください。

ベンチャーキャピタル・投資家

これまでの話は、すべて「融資」についてです。
「融資」であるからには、当然「返済」の義務があります。
先方の関心事は、「この会社は返済することが出来るのかどうか」に集中します。

しかし、資金調達にはもう一つ「投資」を受けるという方法があります。

「投資」だから「返済」の義務はありません。それが、ベンチャーキャピタルです。
また、最近では、個人の投資家(エンジェル)も増えてきました。

あなたの説明を聞いて、独自性・将来性があると思えば、投資が決定することもあります。
起業セミナーやビジネスアイデアコンテストに提出するなど、方法はいくらでもあります。

ただし、これはかなりの難関です。
なかなか投資までには至りません。

また、一応投資金額の上限はかなりの額に設定してありますが、実際には、100万から1,000万くらいが一般的です。
中には、1年以上そうしたベンチャーキャピタルにチャレンジし続けている方もいらっしゃいますが、

そうした人には、やはり落とされるなりの理由があります。

審査基準は、人物50%、事業計画書50%です。
そのどちらともが、審査員の目を引くものでなければなりません。

まず大事なのは「事業計画書」の内容です。

投資家サイドは、毎日のように、投資を求める起業家の人達の熱弁を、イヤというほど聞いてきています。
あなたにとっては、特別な思い入れがあるのかもしれませんが、相手にしてみれば、大勢の中の一人にしか過ぎません。
その中で、いかにして、興味を持たせることが出来るか。
それが、「事業計画書」にかかっています。

ほとんどの事業計画書は、論点が整理されておらず、「投資家サイドの立場を考えていない」ケースが大半です。
これでは、投資家も、事業計画書での不明な点を質問しようという気にもなりません。
投資家は、「事業計画書」に興味を持って初めて、「人物」を評価するための質問をするのです。

ほとんどの起業家の「事業計画書」や「プレゼンテーション」は、単に情報を詰め込んだだけのものです。
いくら饒舌であっても、パワーポイントの使い方が上手くても、「中身」がなければ意味がありません。

言葉は、つたなくてもかまいません。
「具体的かつ簡潔に、セールスポイントを明確にプレゼンする」ことが大事なのです。

投資家が必ずする質問の一つに、「あなたの商品は何ですか?」というのがあります。
私はこれまで、この質問に明確に答えることが出来た人を、見たことがありません。

大半の起業家は、「インターネットをつかって○○を売ろうと思う」「苦労してやっと完成した○○です」といった回答をします。
残念ながら、それらは「製品」であって、「商品」ではないのです。

お互いの貴重な時間を割いて面接しているのに、そんなプレゼンしか出来ないような起業家は、仮に、ビジネスモデルが高く評価できる内容でも、起業後の営業活動に支障をきたすことは間違いありません。

ベンチャーキャピタルや投資家向けの、「事業計画書」の書き方のコツは、銀行に提出するものとは全く違います。
また、質問内容にも、大きな違いがあります。

このあたりのことは会員用ページで詳しく述べますが、
私は、起業家を目指すのであれば、まずは、「銀行融資に的を絞るべき」だと思います。
「銀行からの資金調達を考える課程で、あなたのビジネスモデルや商品に精度が増してくる」からです。

起業家にとって、唯一の経営資源である「時間」を、ムダに使うことほどもったいないことはありません。
「楽してお金を手に入れよう」などと考えないほうが、結果的に、早道になると思います。

資金調達・これを知らずに起業したら大変!!

ここでは、「最低限これだけは知っておかなければ後悔する」という資金調達のポイントをいくつか書いてみます。

詳しい解説は、会員用ページに譲りますが、どれも起業家にとっては必須項目です。
繰り返し、頭の中に入れておいてください。

■ 起業に必要な資金の50%以上は、自己資金でまかなう

必要資金の半分以上を借金で始めるケースの倒産率は、8割以上です。

有力な支援者が後ろ盾になってくれる場合は別として、

それ以外のケースでは、半分以上の借金は、経営の自由度からも足かせになります。
銀行の融資のみならず、会社の安定性からも、問題が多すぎます。

そもそも起業家を志す人間なら、
独立を目指して、貯蓄くらいキチンと出来なければ、その資格すらないと判断されても仕方がありません。

■ 公庫・信用保証協会は使ったモン勝ち

起業家にとって、決算書の提出を必要としない「創業支援融資」は、
もしかしたら、「最初で最後の、資金調達」になる可能性もあります。

「必要でなくても借りておく」ぐらいの気持ちで、トライすべきです。
後々、本当に資金が入用になった時は、得てして融資は受けられないものです。
また、自分のビジネスモデルを見直す意味でも、大変有意義です。
金融機関に信用をつける役目も果たしますので、
将来のことを考えるのであれば、ぜひ借りておいた方が良いと思います。

■ 融資申込の6ヶ月前から、すでに戦いは始まっている

金融機関が、あなたの自己資金を確認する方法は、「預金通帳」です。
厳密にいえば、預金通帳だけでなく、株や国債、投資信託といった、換金性の高いもので確認します。

保証協会などでは、申込の6ヶ月前までさかのぼって、自己資金を確認します。
つまり、どこから一時的にお金を借りて、それを自分名義の通帳に入金しただけでは、ダメだということです。
たとえ申し込み時に、預金通帳に1,000万円のお金が入っていたとしても、

6ヵ月前に100万円しか確認できなければ、自己資金は100万円と判断されます。

特に、公庫は、自己資金の確認が厳格です。
6ヵ月以上さかのぼるケースもありますし、お金の出所もチェックします。
「タンス預金をしていた」などという言い訳は、一切受け付けません。
明確に証明できなければアウトです。

なぜなら、公庫や保証協会は、「自己資金の額」を目安に、融資額を決定するからです。
自己資金と同額、もしくは2倍までと、厳格なルールがあります。
融資額の判断基準となる「自己資金」に神経質になる理由がお分かりいただけると思います。

ですから、最低でも、借入申込をする6ヵ月前から、金融機関との交渉は始まっているのです。
自己資金のない人が、その戦いに勝つ前には、
少なくとも6ヵ月以上前から、そのための準備をしておかなくてはなりません。

その方法については、会員用ページで解説します。

■ 資金調達は、起業家の実務面での最重要項目

会社が倒産する原因の大半は、「資金が調達できない」からです。
いくら売り上げが倍増して、利益が出ても、資金が調達できなければ、会社は倒産します。

また、すでに起業されている人は分かると思いますが、日々の資金繰りに追われていると、新しいアイデアを発想することができなくなります。
「まずお金」という考えに心を囚われ、ついつい甘い話に乗ってしまったり、利益の出ない仕事を請けざるを得なくなります。
つまり、経営判断能力が著しく低下するのです。

経営者になったからには、あなたの仕事の半分は、「資金繰り」だと考えて下さい。
「資金繰り」のコツについては、別のカテゴリーで説明しますが、ここでは、その核となる「資金調達」の方法について解説してみます。

下の図を見てください。

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これは、キチンと自己資金を用意して、会社を設立した場合の、「資本調達予定表」です。

(融資金額については、担保・保証人がいないことを前提に作成しました)
この予定通りに資金調達するためには、あなたは、たくさんのことを知らなければなりません。

A.この時期は「自己資金」の確保に努めて下さい。

出来るだけ自分の力でためることが大前提ですが、どうしても目標金額に不足する場合は、裏ワザがあります。

また、法人を設立してしまうと受け取ることが出来ない「助成金」もあります。
よく調べた上で、後悔のない様に準備して下さい。

B.法人を設立したら、すぐに公庫・保証協会の申込を行って下さい。

もしかしたら、最後のチャンスになるかもしれません。

チェック項目はたくさんありますが、逆に言えば、それを事前に知っていて、その準備を完了していれば、さほど恐れることはありません。
要は、「そのポイントを知っているかどうか」だけです。

準備が完了しているなら、あとは、「事業計画書をどう書くか」がポイントになります。
また、「自己資本の額」により、融資額が決定することを覚えておいて下さい。

C.1期目の決算書が出来たら、再度、公庫・保証協会に申し込む

公庫・保証協会は、借入後6ヵ月以上(実際は1年程度)延滞することなく返済していれば、比較的簡単に追加融資をしてくれます。

そのときのポイントとなるのは、「決算書」と「事業計画書」です。

「決算書の財務部分」については、別のカテゴリーで詳しく解説しますが、まずは「赤字」にしないで下さい。
ほんの少しでもいいですから、「黒字」の決算書にしておいて下さい。
赤字ということだけで、審査が厳しくなります。

また、事業計画書についても同様です。
開業の場合と違い、1期目の決算書が作成された段階では、事業計画書の精度が問われます。

そうはいっても、この時点での「事業計画書」のチェックポイントは決まっていますので、

それさえクリアしていれば、さほど怖がる必要はありません。

D.メガバンクのビジネスローンに申し込む

ここからが、本格的な資金調達の手法を必要とします。

大半の中小企業の決算書では、ビジネスローンの合格点に達しません。
また、タイミングの悪いことに、起業後2~3年後経った頃が、一番資金が必要になる時なのです。
これは、会社がうまくいっていようとなかろうと、同じことです。
ここで資金が調達できなければ、会社は、致命的なダメージを負うことになります。

私が、「起業して成功するかどうかは、起業3年目までにかかっている」というのは、こうした意味を含んでいます。
会社の存続に必要不可欠な、「資金調達」が出来なければ、どんなに良い商品をお客様に提供していたとしても、そこでアウトです。

見通しが立っているだけに、商工ローンに手を出したりするのも、この時期です。
商工ローンを使うと、個人情報のデータベースにあなたの名前が刻まれますから、それ以後の銀行融資は諦めてください。
会社が潰れるまで、高い金利を払い続けることになります。

前述したように、ビジネスローンの判断基準は、「決算書のみ」です。
「事業計画書」も、提出する必要すらありません。
決算書に現れる財務内容がすべてです。

起業準備中から、起業後3年までの資金調達の予定図を見てもらえばお分かりだと思いますが、

「経営」というのは、すべての総合力を必要とします。

やる気・情熱を持ち続けることはもちろんですが、それだけでは超えられない壁があります。
「知らなかったから、もう一度やり直そう」では済まされないことがたくさんあるのです。

あなたも、それが現実だということを理解したうえで、じっくりと起業について考えてみるのも良いかと思います。

■ 起業時には、お金を多めに借りる

起業後1年以内に、「売り上げが思うように伸びないから、融資してほしい」と金融機関に頼んだら、助けてくれると思いますか?

絶対にそんなことはありません。

「資金繰りに窮する会社は、それなりの理由がある」と考えますし、
「貸したお金が戻ってくる確率は低い」と判断しますから、まず融資の対象になることはありません。

そうならないためには、「起業時に、あらかじめ多く借りておく」より方法はないのです。

中には、「必要なときに、必要なだけ借りよう」と考える人もいますが、私は、その方法をお勧めしません。
開業時に300万借りて、半年後に500万借りようとしても、その時に、必ずお金を貸してもらえる保証はどこにもないのです。

「借りられるうちに借りておく」というのは、起業時の銀行の付き合い方の鉄則といえます。

では、希望通りの金額が、借りられなかったらどうするか?
この場合は、事業を縮小するか、時期を遅らせるかして、身の丈にあった経営をするより他はありません。

ここで無理をすると、近い将来必ずそのシワ寄せがやってきます。
最悪の場合は、倒産も覚悟しなければなりません。
「まずは起業ありき」という発想は、やめて下さい。

会社というものは、継続してこそ価値があります。
資金面で無理をして起業したとしても、会社が継続することはありません。
立身出世物語ばかりがもてはやされていますが、

現実には、そうした人達も身を削るような、金融機関との交渉を行っています。
押さえるべきところを、押さえているからこその、成功なのです。

■ ビジネスローンは、限度額いっぱいまで借りない

ビジネスローンの仕組みのところで説明しましたが、この商品は、借入限度額があらかじめ提示されます。
「あなたは、3,000万円まで借入出来ます」という連絡が入るのです。
この言葉を真に受けて、限度額いっぱいまで借りてしまうと、後が大変です。

銀行が提示する金額は、「あなたの会社が現時点で借入できる、ギリギリの金額」という意味です。

ビジネスローンの借り入れ限度額は、決算書を提出するたびに毎年変わるのです。
「どうせ返済した金額くらいなら、また貸してくれるだろう」と安易に考えていたら、
イザというときに、資金繰りに窮してしまいます。

ビジネスローンの借り入れ限度額というのは、「これ以上の借入は危険だ」と、コンピューターがはじき出したバロメータでもあるのです。

銀行員の口車に乗らないで、「必要な額を必要なだけ調達する」という気持ちでないと、
ビジネスローンは、失敗してしまいます。

その一番の大きな理由は、「返済期間」です。
公庫や保証協会に比べて、「返済期間が短い」のです。

詳しくは、「資金繰り」や「決算書」のカテゴリーで説明しますが、

借入の返済が、会社の財務内容に及ぼす影響は、あなたが考えているほど、低いものではありません。

できるだけ借金に頼らなくてもすむように、財務体質を変えることで、徐々に資金需要を回避する方向へと手段を講じる必要があるのです。
それが、「資金調達」と同様、経営者がなすべき仕事の最重要項目です。

■ あなたの会社はいくらまで借りても大丈夫なのかを知る

会社を継続していく上で、絶対に知っておかなくてはならないのは、「会社の借金の、上限はいくらなのか」ということです。

私はこれまで、数多くの倒産寸前の会社を見てきましたが、その経験から一つ言えるのは、
「資金調達」や「財務」の知識が不足していたばかりに、資金繰りで行き詰る会社が多いということです。

「そんなことをしたら、借りられなくなるのは当たり前だ」と思えることを、平気でやってしまう経営者がいます。
「もう少し早く、銀行借入や財務のコツをある程度でも知っていたら、

決して、そんな最悪の結果にまでならなかっただろう」と悲しくなるのです。

そんなことにならないために、あなたが知っておくべきノウハウは、たくさんあります。
詳しくは、会員用ページで述べますが、

「資金調達」についてまず知っておくべきことは、「あなたの会社の借入限度額」です。

かつて、私が銀行員だった頃は、「月商の何ヶ月分か」という考え方が主流でした。
小売業なら月商の3ヶ月分、製造業なら6ヵ月分というように。

しかし、最近の銀行では、総資産をベースにした考え方に、方向が変わってきています。
これは、ビジネスローンの影響で、「決算書」主体の判断基準になってきたためと思われます。
この考え方での目安は、総資産の6割です。
これはギリギリの数値であり、健全性を求めるのでれば、半分以下に押さえるべきです。

また、「税引後利益+減価償却費の10年分」が、ボーダーラインという考え方もあります。
これは、産業再生機構で、買い取った会社が立ち直ったかどうかを判断する指標として使われています。

借入限度額の計算方法については、会員用ページで分りやすく説明しますが、

これを知らないで安易に借入をすれば、決算書はすぐに汚れてしまい、もう二度と借入のできない決算書になってしまいます。

また、決算書の借入明細書に載っているのは、必ずしも、銀行からの借入だけではないケースもあります。
社長からの借入金や車・備品のローンが含まれていたりします。

これは、小さな会社にありがちな、資金調達を念頭に入れていない決算書です。
内容次第では、「未払金」に計上したほうが、財務内容はずいぶんスッキリします。

いずれにせよ、あなたの会社の借入限度額を知り、計画的に借入を起こすことが大切です。

■ メインバンクは地銀・信金にする

起業家であれば、「メインバンクを何処にするか」で、すでに勝負は始まっています。

メインバンクの選択の基準は、唯一、「将来プロパー融資をやってくれるかどうか」です。

融資をしてくれない銀行と付き合っても、何のメリットもありません。
そういう意味では、メガバンクは論外です。
前述したように、「定性評価」のウェイトの高い、地銀か信金にするべきです。
くれぐれも、規模やネームバリューに惑わされないようにして下さい。

将来のプロパー融資を見込んでいるのであれば、売上代金の振込口座も、その銀行に集中させるべきです。
日々、残高は増減するものの、いつも一定以上の金額(平残)は残っているはずです。
銀行の考え方として、預金の口座は正式な担保ではありませんが、一定の債権保全効果があります。
返済が滞った場合に、差し押さえることが出来るからです。
それが、無担保融資枠を広げる結果となるのです。

いくら取引しても、一番簡単な融資形態である「手形割引」すら、優良上場銘柄に限定していたり、

保証協会付き融資しかしない銀行は、「あなたの会社に対して、全くリスクをとる考えはない」ということです。

そんな銀行は、付き合っても何の意味もありませんので、早めに変更すべきです。
保証協会付きの融資であれば、他の銀行で、喜んで肩代わりしてくれるところもあります。

「自社にとって役立つ銀行」の見分け方については、会員用ページで詳しく解説します。

■ 「債務超過」という言葉の意味を知る

融資を受ける上で、是非とも避けておかなければならないのが、「債務超過」です。

債務超過とは、「資産よりも負債が多い」状態のことで、

これになると、貸借対照表の「資本の部」の合計が、マイナスになります。
債務超過の会社は、どんな金融機関に行っても、門前払いになります。

つまり、債務超過とは、「ダメ会社の烙印を押された」のと同様だということです。

債務超過については、大事なことなので、会員用ページで詳しく解説しますが、今は、
「これになったら会社は終わり」とだけ覚えておいて下さい。

債務超過という言葉は、このHPのそれぞれのカテゴリーである、「法人設立」「決算書」
「資金繰り」にも、たびたび登場します。

今流行の一円起業は、この「債務超過」予備軍といえます。
あと一歩どころか、あと数センチで債務超過です。

また、決算書上は、債務超過になっていなくても、「実質的な債務超過」というケースもあります。
これを、「隠れ債務超過」といいます。

銀行は、決算書を分析する場合に、資産を時価に引きなおして計算しますから、
銀行員に、「実態は債務超過ですね」と言われた方もいらっしゃると思います。

債務超過を短期間で解消するには、増資するしかありませんが、そう簡単には資金が捻出できるものではありません。
しかし、これにも合法的な裏ワザがあります。
それが「債務の株式化」です。

その方法については、会員用ページで解説しますが、
まずそうしたテクニックを理解するためには、決算書の基本的なルールについて、知っておくことが大切です。
それについては、「決算事務」「資金繰り」のカテゴリーで詳しく解説しますが、そんなに難しいものではありません。

あなたは、決算書というと、「簿記」を連想するから、イヤになるのだと思いますが、
こと「経営」に関しては、簿記は必要ありません。
ちょっとしたコツさえつかめば、すぐに理解できます。

分るようになれば、財務分析は楽しくてしょうがなくなります。
自分の会社のウィークポイントが数字でハッキリと表示されるからです。

これほど明確な目標はありません。
目標が明確であればあるほど、あなたの起業にかける情熱は高まっていきます。

私は常々思うのですが、現在出版されている起業家向けの書籍は、道徳論の域を出ていません。
「そんなふうに考えれば成功するのか」と感じても、実際に経験したことがないため、本当には理解できません。

人間は、一つのことをマスターするのにも、
何百回、何千回と、同じ事を繰り返し練習しなければ、身につけることはできません。

それが、本を一回読んだだけで身につくのなら、誰も苦労はしません。

やはり、「技術」を身につけるために、努力をする。
その苦しい努力の過程において、「精神面」が鍛えられていく。

それが、自然の理ではないでしょうか。

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