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資金繰り

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資金繰りは地獄の苦しみ

「こんなに利益が出ているのに、借り入れしなければ税金が払えない」
「明日の入金がないと、従業員の給料が払えない」
「月末の手形が落ちないと、会社が倒産する」
「資金繰りが苦しくて、前向きな仕事が全くできない」
すでに会社を経営されている方であるなら、一度はこうした苦しみを味わったことがあるでしょう。

この苦しみはまさに、「地獄」です。
これらはすべて、資金繰りが下手なために起こることです。

「決算書の勉強を怠っていた、その社長がバカなんじゃないの?」
経験の浅いあなたは、こう思ったかも知れません。
しかし、決してそうでないことは、事業を続ければ続けるほど、身に染みて感じるはずです。

事実、倒産した企業の原因のほとんどは、「資金繰り」によるものです。

全ての起業家は、将来の幸せを夢見て、日夜努力しています。
もちろん、「資金繰り」も、その例外ではありません。

あなたの資金繰りは間違っている

では、なぜそうした努力も虚しく、資金繰りの壁の前に力尽きてしまうのか。
ハッキリ言ってしまえば、彼らは、本当の資金繰りのやり方を知らなかったからです。

「資金繰り」とは、資金が不足しないように、お金の出入りをコントロールすることです。
明日、1,000万円の入金があるとしても、今日の100万円の支払ができなければ、会社は潰れてしまいます。

いくら会社が黒字でも、たった一回のミスで倒産してしまうのが
資金繰りの恐ろしいところです。
けれど逆に、いくら赤字でも、資金繰りの技術さえマスターすれば、
チャンスをモノにできるまで会社を存続させることができるのも、「資金繰り」です。

資金繰りは会社存続の最重要テーマ

では、どうすれば、資金繰りに苦しまなくて済むのか。

ここでは、会社経営にとって最重要テーマともいうべき、「資金繰り」について、その基本から実践的なノウハウまで、すべてお伝えします。

あなたが「資金繰り地獄」から抜け出す方法のすべてがここにあります!!

 資金繰りの苦しさは経営者にしか分からない!

● 資金繰りは税理士・会計士に聞いてもわからない

657円。
これは、私が友人と広告代理店を開業後、初めて迎えた年度末の現預金残高です。

従業員への給与、取引先への支払いも終わり、残ったのがわずか657円。
決して事業がうまくいっていなかったわけではありません。
むしろ毎月順調に売上が伸びており、どうやって節税しようかと悩んでいたくらいです。

私自身、会計事務所に5年勤務した後の独立で、曲がりなりにも会計士として多くの企業を見てきた自負もあり、

起業に際して、営業のことで悩むことはあっても、まさか資金繰りで悩むとは全く思いもしませんでした。

では、なぜ私の会社は、売上が伸びているにも関わらず、資金不足を招いたのでしょうか?
それは、この章を読んでいただければ、お分かりいただけると思います。

いきなり、私のお恥ずかしい話から始めましたが、
資金繰りは税理士・会計士に聞いても分かりません。

いやむしろ、経験があまりないと言った方が正しいのかもしれません。
彼らは、帳簿の作成・税金計算の2つを主な仕事としています。
実際、私が会計事務所に勤務していた時にやっていたことは、上の2つのみと言っても過言ではありません。

税理士や会計士は、税金計算のプロではありますが、「資金繰り」のプロではない、ということです。

仮に資金繰りまで依頼できたとしても、原則月に1回しか来ない人に任せるのは、危険であると言わざるを得ません。
なぜなら、資金繰りは、刻々と変わる事業の状況にすばやく対応しなければならないため、
外部の人間に任せるのは無理があるからです。

● 資金繰りは社長の仕事

では、資金繰りは誰がやるのでしょうか?
それは他でもなく、社長であるあなたです。

会社は利益をあげることで発展します。
しかし、会社は資金繰りがつかなくなると、その時点で倒産します。
赤字決算の場合は、翌年以降取り戻すことができますが、資金繰りの失敗は、取り返すことができません。
会社はその時点で、ジ・エンドです。

「黒字倒産」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
利益が出ているのに、資金繰りに失敗したため倒産することを、皮肉と警告の意味合いを込めて、そう呼びます。

「会社が利益をあげる」ことと、「資金がうまく回っている」というのは、別の次元の話です。

私がこれまで、多くの起業間もない社長と話してみて、よく勘違いされている点、理解されていない点はここです。

非常に大切なので、もう一度言います。
「会社が利益をあげる」ことと、「資金がうまく回っている」というのは、別です。

「資金がうまく回っている」という状態を、数式に表せば、1ヶ月の現金の入り≧現金の出ということになります。

「毎月きちんと利益が出ていたら、毎月の入金額は、出金額よりも多いのが当たり前だ」と思われる方は、
じっくりこの章をお読みください。

そして、会員用のページでは、より実践的な資金繰りを説明します。

売上を伸ばすこと・利益を出すことばかりに目を向け、経営者のもう一つの役割である、資金繰りをなおざりにすることは、
ブレーキのない車を運転していることと同じで、大変危険なことです。

しつこいようですが、どんなに利益を出したところで、資金繰りができず、資金不足に陥れば、会社は即倒産につながります。

つまり、資金繰りができなければ、「経営者失格」なのです。
しかし、逆を言えば、利益は出ていなくても、資金繰りさえできていれば、倒産しないのです。

● 「資金繰り」の役割とは?


これまで説明してきたように資金繰りは、会社にとって欠かせないものです。
しかし、ただ単に、「資金の過不足だけを把握すれば良い」というものではありません。

資金繰りには次の4つの役割があります。

① 日々の支払を円滑に行うために「お金の出入り」をコントロールすること。
② 向こう1年先くらいまでの資金繰り状態を把握し、資金不足であればその手立てを打つこと。
③ 日々の無駄な支出をつかみ、是正することにより資金繰りを楽にすること。
④ 会社の長期的成長という視点に立って、経営の判断材料にすること。

①と②の役割については、これまで説明してきたことでなんとなくお分かりでしょう。
しかし、この2つだけをやっていても、会社の資金繰りはいっこうに良くなりません。
借入ばかりが増え、いつかは行き詰ってしまいます。

そこで、③や④のような視点で資金繰りを見て、会社の無駄を省き、成長と借入金の返済などのバランスを取っていくことによって、
手元にお金を残しながら、会社を成長させていくことを目指します。

● 会社の資金はどう流れるのか

起業家のための資金繰りなので、まず第一段階として、「会社の資金はどのように流れているか」を見てみましょう。

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どんなビジネスをやるかによって、上記の図は少しずつ違いますが、一般的にはこのようなものです。

まず、起業時の資金調達から、流れをたどっていきましょう。

起業に必要な資金は、自己資金でまかなわれるのが理想ですが、
多くの場合、起業時の資金は、金融機関や親・友人から調達するケースがほとんどでしょう。
※起業時の資金調達の実践的ノウハウについては、会員用ページで細かく説明していますので、そちらを参考にしてください。

その資金で、事業を始めるために必要となる設備(固定資産)を調え(設備資金)、
さらに原材料や商品を仕入れ、製品を製造し、それらを販売します。
その販売代金は、売掛金や受取手形となり、回収されます。
材料や商品の購入には、支払手形や買掛金が充てられ、支払期日が来れば現金で支払われます。
この営業活動の流れの中で発生する諸経費(家賃や人件費など)も現金で支払われますが、
資金が不足した場合は、銀行から借入れを起こすことになります(運転資金)。

会社の原動力となる利益は、この営業活動のサイクルによって生み出されますが、
順調に推移しているときは、この流れの最初の現金が利益の分だけ多くなり、手元に帰ってくることになります。

 非常時の資金繰りの裏ワザ

商売を続けていると、どうしても月末の支払が工面できないケースがあります。

そういう場合でも、みすみす会社を潰すわけにはいかない。
では、いったいどうしたらよいのか?

これから述べることは、そうした経営者を、苦しい境地から救うための究極の裏ワザです。

しかし、それらの方法は、禁断の木の実であること頭に入れておいて下さい。
取り扱いを一歩間違えると、地獄へ真っ逆さまに落ちていきます。

「これしか方法はない」という場合以外には、決して利用しないで下さい。

● 融通手形を割引する

融通手形とは、商取引を伴わない、お金の工面のために振り出す手形のことです。

本来、手形というものは、商取引の支払分として振り出します。
手形を受け取った取引先は、それを銀行に持ち込み、割引をしてもらうことによって、現金に替えます。
手形の振り出し先は、期日までに手形の額面金額を銀行に入金すれば、無事に決済が終了します。

しかし、融通手形はそうではありません。
相手から貸してもらった手形を利用して、銀行でそれを割引することにより、
自分の会社の資金繰りを助けてもらうために行う行為です。
つまり、手形を振り出した先は、受け取るほうに「お金を貸す」のと同じことなのです。

手形を振り出した先は、期日が来れば、自分の銀行口座にお金を入金しなければなりません。
口座にお金がなければ、不渡りになってしまいますので、当然のことです。
では、どうやってそのお金を、振り出し先は用意するのか。
手形を受け取った先が、すんなりお金を貸してくれれば良いのですが、その時になって「もう少し待ってくれ」では、大変なことになってしまいます。

だから、その予防策として、受け取った方も、振り出してくれた先に自分の会社の手形を渡すのです。
期日は当然、振り出してもらった期日の直前に設定します。

これは、非常に危険な行為といえます。
なぜなら、資金繰りを助けてもらった先が、期日に資金を用意できなかった場合は、共倒れになってしまうからです。

これが、連鎖倒産です。

もちろん、このことが銀行にバレたら、その時点で取引停止です。
もう二度とその銀行から融資を受けることは出来ません。

それと同時に、融通手形の恐ろしいところは、一度こちらから頼んだ経緯があると、
その後、先方から融通手形の話を持ちかけられた場合、断りきれないところです。

融通手形をやらざるを得ないということは、相当資金繰りに困っているということです。
あなたは、期日までにお金を用意できるかもしれませんが、相手もそうであるという保証はどこにもありません。

融通手形が原因で倒産した会社をたくさん見てきましたので、くれぐれも取り扱いには注意して下さい。

● 商工ローンを利用する

商工ローンとは、出資法の限度でお金を貸すところです。

現在の金利は30%くらいですから、銀行の約10倍です。
100万円借りて、1年後には130万円返さなくてはなりませんので、純利益率が30%なければなりません。
世の中に、そんなに儲かる商売は存在しません。
つまり、商工ローンを使うということは、倒産への道を着実に歩んでいるということです。

しかし、どうしてもお金が必要な時には、使わざるを得ないこともあります。
その時の注意事項は一つだけ。
必ず1~3ヶ月以内に返済すること。
これさえ厳守していれば、金利はそれほど気にすることはありません。
もちろん使わないに越したことはありませんが、やむを得ない場合は、仕方がないと思います。

けれども、利用する際には、以下の点には、くれぐれも注意して下さい。

1.スポーツ新聞に掲載されている業者には、絶対に電話しない

スポーツ新聞やレジャー新聞を開くと、これでもかというくらい融資の広告が掲載されています。
金利も数%ですし、すぐに貸してくれる旨の内容が、そこには書かれています。

ついつい電話をしてみようかという気になるかもしれませんが、電話をしたら、その瞬間からあなたは破滅です。
なぜなら、そこに広告を出している業者のほとんどは、年利30%どころではないからです。

下手をすると、10日で1〜10割という超高金利の業者の場合もあります。

商工ローンを利用したいのであれば、一応名前を聞いたことがある業者に連絡して下さい。

2.返せるはずだった商工ローンが、長引きそうな場合はどうする?

これもよくあるケースです。
2ヶ月後の入金を当てにして、商工ローンを使ったのはよいが、入金ズレのためジャンプせざるを得なくなった。
このままズルズルと、高い金利を払い続けなくてはならないのか?

その場合の商工ローン返済の裏ワザをお教えします。
それは、「銀行で借りて返す」ということです。

「えぇ!そんなことできるのか!?」と思われたかもしれませんが、タイミングを間違えなければ可能です。

銀行というところは、内部情報により、融資をやりたがる時期があります。
そのタイミングを見計らって、融資の申し込みをするのです。
また、限られてはいますが、商工ローンの肩代わりをしてくれる銀行もあります。

もちろん、そのためには、ほとんどの銀行の融資状況を把握する必要があります。
あなたがこれをやろうとすると無理がありますが、そうした事情を日頃から入手している先であれば、十分可能な作業です。

もちろん、タイミングだけでなく、銀行のどの商品を申し込むべきかも、選別しなければなりません。
なぜなら、商品によって、調査する個人情報のレベルが違うからです。

商工ローンで借りている情報を入手できる商品に申し込めば、一発でアウトです。
もうその銀行から借り入れすることは出来ません。

このあたりの作業は、非常にデリケートなものなので、くれぐれも申し込み時には注意して下さい。

3.商工ローンに振り出す手形は、融資を受けている銀行の手形にしない

手形というものは、受け取った先が、手形の裏に氏名を記載するようになっています。
そして、期日が来れば、その手形は振出銀行に戻っていきます。
つまり、手形を使って商工ローンからお金を借りた場合、その時点でバレてしまうということです。

もし、その銀行で融資を受けていたらどうなるか?

銀行はすぐに、資金の回収に入ります。
せっかく商工ローンでピンチを切り抜けたとしても、その時点でアウトです。

ですから、商工ローンで手形を使って借り入れする場合は、絶対に融資を受けている銀行の手形を使ってはいけません。

これは、融通手形の場合も同様です。
もし、銀行に融通手形をやっていることがバレたら、その時点で融資はストップします。
バレなくても、疑われただけでもアウトになることがあります。
ですから、融通手形の割引も、融資のある銀行では行わないで下さい。

4.商工ローンを利用した場合の経理処理はどうするか?

先ほど、銀行を使って商工ローンを返済することも可能だという話をしましたが、
これはあくまで、決算書上は、商工ローンで借りているという痕跡がないという大前提の話です。
決算書でバレてしまったのでは、お話になりません。

では、商工ローンを使った場合、どのような経理処理をすれば良いのか?

まず、手形を振り出した場合は、絶対にその仕訳は起こさないようにして下さい。
その仕訳をしてしまうと、支払手形の勘定科目に商工ローンの名前が載ってしまいます。

商工ローンからの入金処理は、「仮受金」か「社長借入金」として処理して下さい。
社長貸付金がある場合は、商工ローンからの入金を、貸付金の返済という処理をしても結構です。
商工ローンの返済時には、再度、会社に貸し付けたことにすれば良いだけですから。

また、借りた時に差し引かれた金利は、雑費、もしくは販売費で処理して下さい。
正直に支払利息にしてしまうと、商工ローンから借りていることがバレてしまう可能性があります。
全員がそうとは言いませんが、私が銀行員の頃は、借入金の末残で支払利息を割って、平均借入金利をチェックしていました。
この数字が異常値であれば、商工ローンを使っている可能性あり、ということで、融資取引を見合わせたものです。

いずれにせよ、商工ローンを使っているのが銀行にバレたら、その時点で融資がストップすると考えて下さい。
それ以後、数年は、銀行のみならず、保証協会といった公的金融機関からの融資も受けることは出来ません。

非常に大切なことなので、細心の注意を払ってください。

● さまざまな金融機関の融資を使い回しする

これまで紹介した「融通手形」「商工ローン」といったやり方は、
一歩間違えると取り返しのつかないことになる、非常に危険な裏ワザです。
しかし、これから紹介する方法は、それほど危険性はありません。

むしろ、資金繰りにおいては、究極の裏ワザと言えるかもしれません。

それは、融資の返済額に応じて、
返済が滞らないように、それぞれの商品の特徴を加味しながら、ローテーションで回していくというやり方です。

私は、この資金調達の方法を駆使して、数多くの企業を倒産から救ってきました。
ある意味、職人芸といえるかもしれません。

口で言うのは簡単ですが、これを可能にするには、金融機関のすべての商品に精通していなければなりません。
どの個人情報を閲覧するのか、提出書類は何なのか、決算書のどの部分を分析するのか、

そうしたことを、商品ごとに熟知して、順番とタイミングを見誤ることなく、効率的に申し込む必要があります。

しかし、このやり方は、一旦ローテーションを組んでしまえば、ほぼ永続的に資金繰りに困ることはありません。
なぜなら、金融機関というところは、期日通りに返済している取引先に対しては、再度の融資が甘くなるからです。
借りれば借りるほど、信用がつくというわけです。

私のところに相談に来られる経営者のほとんどは、知識不足から一度融資を断られた方々です。
もちろん、その銀行には、最低でも1年間は融資をしてもらえません。
そうなると、せっかく数ヵ月後に大きな入金が入る予定だったとしても、それ以前に力尽きてしまいます。

そうしたことのないよう、資金計画はできるだけ早く見通しを立てることが大切です。
早ければ早いほど、その対応策は多くなります。

資金繰り表の作成も含め、早めの行動を取ることが、あなたの会社を資金繰り地獄から救うことになるのです。

眠れない夜を過ごさないために

これまでの説明で、資金繰りの重要性は理解できたことと思います。

しかし、資金繰りほど奥の深い分野はありません。
どんなにベテランの経営者でも、「資金繰りなどに振り回されず、ジックリと経営戦略を練りたい」と考えています。
ところが、売っても売っても資金繰りがラクにならない。
月末になると胃がキリキリと痛む。
そうした毎日を送っている経営者がほとんどです。

では、どうすれば資金繰りに苦しまなくてすむのか?

資金繰りの鉄則は、たったの4つしかありません。
この4つの基本さえ押さえていれば、資金繰りのカラクリは見えてきます。

そして、その基本を元に、運転資金・設備資金の効果的な運用方法、数字を使った資金分析の具体的方法などを、

会員用ページでは解説していこうと思います。

資金繰りと、決算書に表示される利益は、まったくの別モノです。

「決算書は何とか読めるが、資金繰りは苦手だ」という経営者は、数多くいます。
それは、決算書で利益を計算する仕組みと、資金繰りの仕組みが一致していないからです。
この2つの仕組みのどこが違うのかを理解できれば、苦手意識はなくなります。

ここで、資金繰りの仕組みについての問題を出してみます。

これは、「資金繰り」と「決算書」の違いについての、基本中の基本の問題です。
この会社の経営者になったつもりで、答えを考えてみて下さい。

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資金繰り Q&A

ここでは、なぜ会社は資金繰りが苦しくなるのか、その対処の仕方をQ&A方式で解説しました。 是非、資金繰りについて習得し、会社の発展にお役立てください。

● なぜ資金繰りは苦しくなるのか?

Q1.売上が増えているのに、なぜ資金繰りが苦しくなるのですか?

A.売上増加がそのまま現金の増加につながらないためです。

現金商売を除く、ほとんどの業種の販売サイクルは、 在庫→販売→売掛金→受取手形→現金預金のプロセスを経ます。

販売から現金になるまでの期間が長い商売では、売上が増えるにつれて、売掛金や受取手形が増えるのが一般的です。
また、大きな売上を上げるためには、それに備えて商品をたくさん揃えておかなければならないこともあるでしょう。
一方、支払いの方は、原材料を仕入れてから決済期限までに、支払いが行われています。
こちらは、これでサイクルが終了です。

下記の例では、製造に1ヶ月、販売に1ヶ月、さらに販売から現金回収まで2ヶ月かかり、

結局材料仕入れの時点からカウントすると、4ヵ月後にようやく代金が回収されることになります。
以上から分かるように、原材料を仕入れてから支払いまでの期間は2ヶ月ですが、回収までに必要な期間は4ヶ月です。
したがって、2~4月の2ヶ月、支払いのほうが入金よりも先行してしまうことになります。

この支払いと入金のタイミングのズレを、「収支ズレ」または「回転差金」といいます。

売上が増えると資金繰りが苦しくなるのは、この収支ズレが生じるためです。
売上が増えれば増えるほど、仕入れに要する資金も多額、つまり収支ズレが大きくなっていきます。

したがって、売上が増えていく過程では、資金繰りも苦しくなります。

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Q2.売上が減ると、なぜ資金繰りが苦しくなるのですか?

A.売上が減れば、当然儲けも少なくなり、それに伴いお金の増加が少なくなります。

Q3.在庫が増えると、なぜ資金繰りが苦しくなるのですか?

A.在庫とは、仕入れたものが、まだ売れずに会社に残っている商品のことです。

つまり、お金が、在庫の形で会社にたまっていることを意味します。
在庫が増えた分、お金が減っていることになり、資金繰りは苦しくなります。

Q4.売上代金の回収が長引くと、なぜ資金繰りが苦しくなるのですか?

A.例えばある時、取引先から、販売した代金の支払いを、30日延期されたらどうでしょうか。

また、受取手形のサイト(受取手形を受け取ってから決済されるまでの期間)が、30日伸びればどうでしょうか。
売った商品の代金回収が伸びて、もう30日待たなくてはなりません。
しかし、あなたは通常通り、商品の購入先に代金を支払わなければなりません。
家賃や従業員の給料を、取引先からの回収が遅れているからといって、伸ばすことはできません。
つまり、代金回収が伸びた金額だけ、資金の不足を引き起こすことになります。

Q5.機械や設備を購入すると、なぜ資金繰りが苦しくなるのですか?

A.会社のお金は、在庫の増減、売掛金・受取手形の増減などによって、増えたり減ったりを繰り返します。

機械などは、長期間使う資産なので、一時的に余った資金で購入すると、その後の資金は不足して、資金繰りは苦しくなります。

Q6.借入金の返済が増えると、なぜ資金繰りが苦しくなるのですか?

A.借入金には、「運転資金」と「設備資金」があります。

「運転資金」の借り入れとは、商品を購入し、その商品が売れるまでに足らない分を、銀行から借り入れることです。
返済で資金繰りが苦しくなる場合は、

借入期間が、回収までの期間(商品の仕入→販売→代金回収)より長いときです。

「設備資金」の借り入れとは、機械や設備の購入資金として借り入れることです。
設備資金の借り入れ返済で、資金繰りが苦しくなる場合は、

「年間返済額」と「1年の儲け(税引き後利益)+減価償却費の合計額」を比べて、年間返済額が大きいときです。

これは設備資金に限らず言えることですが、借金を返済できる金額の限界は、次の式で求めることができます。

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年間返済額がこれ以上の場合は、何らかの方法でやりくりしているだけに過ぎません。
数字上は返済できるはずはないのですが、それでも返済が出来ているケースは多々あります。

決算書を見れば分かりますが、そうしたケースでは、借金が減った分だけ、「買掛金」や「支払手形」が増加しています。
また、長期借入金が減った分だけ、「短期借入金」や「社長借入金」が増加しています。

これについては、「決算書」のカテゴリーで説明しますが、悪い決算書の見本のようなものです。
まず金融機関からの借り入れは難しいと、考えて下さい。
借り入れが出来なければ、会社の財務内容は、ますます悪化していきます。

そして、「年間返済額」と「税引後当期利益+減価償却費」の数字が一桁違ってしまったら、
会社の死はもうそこまでやってきています。
あとは、手元の預金残高がいくらあるかだけです。
その時点で、預金残高が毎月の返済額の3ヶ月以下しかないのであれば、早急な外科手術が必要になります。

これをそのまま放置しておくと、間違いなく最悪の事態を招くことになります。
すなわち倒産です。

このように、「資金繰り」「資金調達」「決算書」の3つの分野は、密接に関連しています。
経営者であるなら、これらの分野の実践的知識と、それがどのように関連しているのかを、
完璧に頭に叩き込んでおかなくてはなりません。
これまでの経験上、それをマスターすることが、会社の存続にとって、最良の方法であると断言できます。

会員用ページでは、これら3分野の実践的ノウハウを、それぞれの分野と関連付けて詳しく解説していきます。
初心者でも無理のないよう、徐々にレベルを上げて説明していきますので、

そちらを何度も読み返し、体の一部になるまで繰り返し学習して下さい。
そして、半年ごとに昇級試験を行いますので、そちらで理解度を確認して頂けたらと思います。

● 一時的に資金繰りが苦しくなったらどうすればいいか

Q7.資金不足が予想されたら、まず何から手をつければいいですか?

A.意外に多いのが、入出金の見積もり間違いです。

もう一度、請求書を見直し、得意先の各担当者から、その後の変化がないかを確認して下さい。
出金は、請求書等で再確認することで、正確な金額を出すことができます。

それでも問題が解決しない場合は、使える預金を点検します。
取引銀行で返済が終わり、その後取引を親密に進める予定のない銀行に、普通預金や定期預金などが眠っていることがあります。
これらを再点検したり、経営者個人の預金も同様に点検して、

不必要だと思われる預金を取り崩して、支払いの一部に充当することも考えます。

Q8.資金繰りが苦しいとき、仕入先や外注先に協力してもらうには、どんな方法がありますか?

A.仕入先に協力してもらう方法として、以下のようなものがあります。

①支払い期日を先延ばしにしてもらう
②現金決済を手形決済に変えてもらう
③支払手形の期日をいままでよりも長くしてもらう

どの方法も、現金の出を遅らせるものであり、これらの方法をとれば、仕入先の資金繰りが悪くなります。
ですから、どれも仕入先の理解がないと、行えないものです。
例えば、支払いを1ヶ月遅らせた場合には、銀行利子分程度を上乗せして支払うなどの配慮も必要です。

Q9.資金繰りが苦しいとき得意先に協力してもらうために、どうしたら良いですか?

A.Q8の逆になります。つまり、得意先からの回収を早くする方法です。

①売掛金の回収期間を短縮してもらう
②手形決済を、現金決済に変えてもらう
③受取手形の期日を、いままでより短くしてもらう。

上記の方法は、お客様との信頼関係が十分にできていることが大前提です。
お願いをする際には、一時的なものであることを強調する必要があります。
今まで築いてきた信用が落ち、相手先が、今後の取引に不安を覚える可能性が十分あるからです。

Q10.手形で代金を回収したのですが、すぐに現金にするには、どうしたら良いですか?

A.銀行に持込んで、手形を担保に現金を借りれば、すぐに現金にできます。

これを、「手形割引」といいます。
実際には、金利相当分を割引され、受け取ることになります。

Q11.銀行から借入れをするには、どのような方法がありますか?

A.銀行からの借入れ方法には、①手形借入、②証書借入、③当座貸越、④手形割引の4つの種類があります。

それぞれに特徴がありますので、その都度、借入れの目的に応じて選んで下さい。
起業した当初は、証書借入がメインになると思います。

資金繰りの中で、現実的なウエイトの大部分を占めるのが、「資金調達」です。
「資金調達」の技術なくしては、資金繰りは意味を成しません。
これについては、別のカテゴリーを設けましたので、そちらを参照して頂ければと思います。

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Q12.急に小口現金が必要になったときは、どうすれば良いですか?

A.一番手短な資金調達は、役員から借り入れることです。

役員から借りる場合でも、必ず金銭消費貸借契約書(借用書)を作成して下さい。
後々、トラブルの原因になります。

Q13.生命保険会社から借入れする方法はありますか?

A.保険会社には「契約者貸付」という制度があります。

これは、契約している保険を解約することなく、解約返戻金を担保に資金が借りられる制度です。
特色としては、低金利かつ資金使途が自由であり、手続きも比較的簡単なことが挙げられます。
また、保険契約を中途解約して解約返戻金を受け取り、資金繰りに充てることも可能です。

Q14.取引先が倒産したときなどに、公的資金から緊急に借入れする方法はありますか?

A.中小企業基盤整備機構では、倒産防止共済制度を設けています。

中小企業者が、その取引先の倒産により、売掛代金の回収難や受取手形の不渡りで資金繰りが苦しくなって、
連鎖倒産に追い込まれるケースが後を絶ちません。
倒産防止共済制度は、そのような連鎖倒産を防ぐため、加入者があらかじめ掛金を積み立てておき、
加入後6ヶ月以上経過して、万一取引先が倒産し、債権回収が困難になった場合に、共済金の貸付が受けられる制度です。
融資額は、掛金総額の10倍か、回収不能となった売上債権額の、いずれか少ない方です。
また、掛金の全額が損金計上できるので、節税にもなります。

Q15.小規模企業共済ってなんですか?

A.小規模企業共済とは、小規模企業の個人事業主または会社等の役員が、事業を廃止した場合や役員を退職した場合など、

第一線を退いた時の生活の安定、あるいは事業の再建などのために、自ら資金を拠出して行われる共済制度のことです。

「小規模企業共済」は、節税と資金繰りの面でも、大変効果のあるものです。
まず、節税の面では、掛金が全額経費として計上することができます。
そして、解約時には、退職所得として、税制上有利な形で共済金を受け取ることができます。

資金繰りの面では、貸付限度額1,000万円までではありますが、
掛金の範囲内で、「一般貸付」や「創業転業時貸付」といった、貸付金制度を利用することができます。
金利が非常に低利なのが魅力で、現在、「一般貸付」が1.5%、「創業転業時貸付」が0.9%となっています。
支払った共済掛金は、予定利率1%で運用されており、

「一般貸付」などは、実質無利息で借入れできることになります。

会社に利息が残る場合には、上限(年額840,000円)まで利用することをお勧めします。

Q16.手形を不渡りにしないための裏ワザは何かありますか?

A.依頼返却する方法があります。

依頼返却とは、手形の所持人が手形取立てを依頼した銀行に、手形の取立てをやめて、手形の返却を依頼することです。
これで、手形が不渡りになることはありません。
依頼返却は、手形の所持人に依頼するものなので、

手形の所持人と親密な関係であるとか、倒産の影響が大きいなどといった、特別な事情がないと応じてくれないかもしれません。
不渡りを避けるための最終手段だと思っておいて下さい。

Q17.借入金返済のリスケジュール(リスケ)の方法を教えてください。

A.リスケジュールとは、借入金の返済計画見直しのことです。

資金繰りが行き詰ったら、できるだけ早くリスケジュールを含めて銀行に相談しましょう。
銀行への対策としては以下の方法が考えられます。

①積立預金の取りやめ
②拘束預金の引き出し
③元金の返済たな上げ(利息のみ支払い)
④利息の一部返済たな上げ

ただし、リスケは、銀行への対応を一歩間違えると、取り返しのつかないことになります。
「経営改善策」「資金繰り計画表」の作成を含め、プロに相談することをお勧めします。

リスケを行う目安や交渉方法、事前の準備等については、会員用ページで詳しく解説します。

Q18.拘束預金を解除する方法はありますか?

A.拘束預金とは、銀行などが債権の保全を図る目的で、預金に対して担保設定をし、預金者が自由に資金を引き出せないようにしようとする手法のことです。

しかし、拘束預金は建前上、財務省の通達で禁止されています。
最近では、拘束預金を要求するケースは少なくなってきているようですが、それでも一度預け入れた拘束預金を引き出すのは容易ではありません。
違法性を強調して、粘り強く交渉しましょう。
また、独占禁止法の優越的地位の濫用に該当するとして、公正取引委員会に訴えることも1つの手段です。

● 資金繰りを楽にするためにどうすればいいか?

Q19.資金繰り表とはなんですか?

A.「資金繰り表」とは、資金過不足がいつ、いくら、どのくらいの期間続き、なぜ起こるのかを検討する材料となるものです。

書式はいろいろありますが、自社の業種や規模によって、使いやすいものを選んで使うとよいでしょう。

これについては、会社の存続にとって非常に重要なポイントなので、会員用ページでもっと具体的に解説します。

Q20.資産のリストラはどうしたらいいですか?

A.十分に活用されていない資産が、リストラ対象資産となります。

具体的には、不良在庫の処分、ゴルフ会員権の売却、投資有価証券の売却、遊休機械の処分、土地・建物の処分などが当てはまります。

簿価を割る不要な資産は、売却するようにしましょう。
売却によって損失は出ますが、それと引き換えに資金が入り、その資金を借入金の返済に充てたり、事業への投資に活用したりできます。

ただし、これについては、決算書との絡みもありますし、
うかつに処分してしまうと、多額の除却損が計上され、銀行から融資が受けられなくなってしまいます。

資産のリストラは、会社の存続にとって非常に重要なポイントなので、会員用ページで具体的に解説します。

Q21.売掛金・受取手形のリストラは、どうすれば良いですか?

A.過去の実績の回転率表を作成してみましょう。

仮に過去と比較して、回転率が悪くなっていれば、得意先ごとの回収状況をチェックしていきます。

売掛金の回転率が悪くなる原因は、以下のことが考えられます。

①無理な販売をしており、回収が伸びている。
②回収が滞っている得意先がある。
③得意先の回収状況が変更になり、回収期間が延びた。
④請求漏れ、集金漏れなどの回収漏れが発生した。

受取手形の回転率が悪くなる原因は以下のことが考えられます。

①手形のサイトが伸びた。
②不渡手形が発生し、回収できない。

原因がわかったら、すぐに解決しましょう。
そして、それが再び発生しない仕組みを作ることが必要です。
回転率の計算方法と、取引先との交渉方法については、会員用ページで解説します。

Q22.過剰在庫・不良在庫をなくすには、どうしたらいいですか?

A.Q3でも見た通り、在庫は、お金が在庫の形で会社に溜まっていることを意味します。

過剰在庫・不良在庫をなくすには、なぜそのような在庫を抱えてしまったのかという、原因を明確にすることです。

在庫には、購入→貯蔵→加工→保管→販売というサイクルがあります。
販売計画、仕入・製造計画に失敗はなかったかを、このサイクルに当てはめて考えてみましょう。
そして、原因がわかったら、すぐに対処してください。

「適正在庫」を割り出す計算方法やその対処法については、経営者であるなら必ずマスターしておかなくてはなりません。
これについては、会員用ページで詳しく解説します。

Q23.実施棚卸しは、どれくらいの頻度で行えば良いですか?

A.商品や在庫の棚卸しを行う目的は、滞留在庫や不良在庫がないかどうかをチェックすることにあります。

実施棚卸しに際しては、次のことに注意して行ってください。

①毎月実施する。(これは非常に大切なことです)
②在庫担当者だけでなく、第三者も立ち会う。
③在庫の年齢調べを同時に行い、その原因を突き止める。
④不用品が見つかったら、早めに処分すること。

Q24.借入金をまとめるコツはなんですか?

A.借入金には、一年以内に返済予定の「短期借入金」と、1年を超えた長期間で返済する「長期借入金」があります。

通常、短期借入金の借入金利率のほうが、長期借入金より低いため、短期借入金の期日が来た時点で一旦全額返済し、再度借り替えるということを繰り返します。 しかし、これは、資金繰りを考える上では、大きな欠点があります。 それは、銀行が毎回借り換えに応じてくれるとは限らないからです。会社の業績次第で、手の平を返すのが銀行です。 それが原因で倒産する会社もあります。

また、短期借入金だと、どうしても返済に負担がかかります。
複数の短期借入金を持っている企業は、まとめて「長期借入金」に一本化するようにしましょう。

借入金を長期化することができれば、毎月の返済額が一定になり、資金繰りが容易になるだけでなく、毎月の返済額も少なくなります。

Q25.買掛金や経費の支払いに際して、注意することは何ですか?

A.
① 支払日と売掛金の回収日をうまく調整する
売掛金の回収日のあとに、買掛金や経費の支払日がくるようにする。

② 支払いに裏書手形を使う
裏書手形なら、決済資金を用意しなくて良い。

③ 支払いは、現金より小切手でする
小切手は振り出した翌日に決済される特徴を活かし、実質的に支払いを一日だけ延ばすことができる。

Q26.役員報酬を下げるにはどうしたらいいですか?

A.役員報酬の引き下げは、簡単に行うことができます。

取締役会を開いて、具体的には、「役員報酬を100万円から75万円に引き下げる」旨の決議をすればいいだけです。
ワープロで議事録を作り、文書として保管しておきましょう。
また、役員報酬を実際に引き下げてから3ヶ月経つと、
社会保険料の「月額変更届」を提出することで社会保険料も減額できます。

Q27.固定費を減らすにはどうすればいいですか?

A.経費は、「固定費」と「変動費」に分けることができます。

固定費とは、売上や生産量に関係なく、毎月一定金額発生する費用のことで、家賃や人件費、減価償却費が含まれます。
変動費は、売上や生産量に比例して増えたり減ったりする費用のことです。売上原価や運賃、広告宣伝費が変動費にあたります。

固定費をできるだけ少なくすること、固定費を変動費に変えることで、資金繰りをよくすることができます。
そのためには、アウトソーシングをうまく活用しましょう。

例えば、社員を雇っていたのを、派遣社員に変更する、経理や給与計算業務を外注する、営業部門を委託するなどです。

「固定費」と「変動費」の考え方は、会社経営において、トップ3に入るほどの最重要テーマです。
これをマスターすることで、会社の利益を短期間で倍増させることも可能です。

このテーマについては、会員用ページで分かりやすく解説していますので、そちらを参照して頂ければと思います。

Q28.補助金・助成金を利用するにはどうしたらいいですか?

A.中小企業が資金を調達する方法には、金融機関等からの借入金の他に、補助金・助成金があります。

この補助金・助成金には、借入金と大きくことなるメリットがあります。
それは、一度支給された補助金・助成金は返済しなくても良いということです。

確かに申請の手続きは面倒で、すぐに支給されるとは限りませんが、資金繰り改善のためにぜひ活用したいところです。
厚生労働省経済産業省など、いろんな機関が補助金・助成金の制度を設けています。
ぜひ検討してみてください。

また、別枠で「助成金」のカテゴリーがありますので、そちらも参考にして頂ければと思います。

Q29保険の見直しはどうすればいいですか?

A.まず、どういう保険に加入しているかを確認しましょう。

貯蓄性が高い保険であれば、保険料の一部が、会社の資産として計上されているはずです。
つまり、これは会社の資金が眠っていることと同じです。
資金繰りという観点からは、掛け捨て保険に変更すべきです。

掛け捨て保険は、保険料が安い上、掛け金全額が損金で計上できるという税務上のメリットもあります。

ただし、なんらかの理由で一時的に収益が上がり、節税が必要な場合に保険を利用するケースは別です。
ハンドメイドなやり方になりますが、節税もできて、イザという時には会社の運転資金として利用できる裏ワザがあります。

これについては、「保険金」のカテゴリーがありますので、そちらを参考にして下さい。

Q30.リースと借入れによる資産購入はどちらが得ですか?

A.事業用の資産が必要になった場合、銀行から資金を借り入れて資産を購入する方法の他に、リース会社から資産を借りる方法があります。

下記のまとめの表をみてもらっても分かるとおり、リース取引の方が、借入れによる購入より支払総額は多くなります。
しかし、借入金で資産を購入すると、融資枠が減って運転資金を借りられなくなる可能性が出てきます。

起業家の場合、資金繰りを考えるなら、リース取引を利用するのがいいでしょう。

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ただし、これも一概には、リースのほうが良いとは言えません。
注意しなければならないのは、リースというのは、「賃貸契約」だということです。
あなたは、リース期間中にその機械が要らなくなったら返せると思っているかもしれませんが、それは間違いです。
リース期間が5年であるなら、その機械を1年で使わなくなったとしても、リース料は、5年間払い続けなければなりません。
事業の撤退のリスクを考慮するならば、最小限の損失ですむ「購入」の方が良いともいえます。

また、よく「リースの方が節税になるから得だ」と言われますが、決してそんなことはありません。
確かにリース料は、全額経費になります。
しかし、買取した機械も、「減価償却」という手続きを通して、費用になります。
さらに、160万円以上の新品の機械であれば、購入金額の30%は、初年度に「特別原価償却費」として計上できます。
ケースバイケースですが、買取の方がリースに比べて、法人税が安くて済むことが多いのも事実です。

ただし、これはあくまでも数字上の問題であり、資金繰りとは別問題です
銀行の借入枠の問題や、購入時の初期コストの問題、支払利息や保険料等の維持費なども考慮して、十分検討すべきだと思います。

 資金繰り表を作成してみよう

さてこれから、実際の資金繰りにおいて、基本中の基本ともいうべき、「資金繰り表」の作成方法について説明します。

慣れないうちは多少時間がかかるかも知れませんが、絶対に途中で投げ出さないでください。
なぜなら、資金繰り表の作成は、会社の存続にとって最も重要な作業といえるからです。

私はこれまで数多くの倒産企業を見てきましたが、そうした会社に共通していることがあります。
それは、「資金繰り表を作成していない」ということです。

会社経営は、ドンブリ勘定でやれるほど甘いものではありません。
業績が好調に推移していたとしても、ある日突然、資金不足に陥ることはよくあります。
それはすべて、日頃から資金繰りを綿密にやっていなかったことが原因です。

会社の目的は利益を上げることですから、経営者はついつい、利益を上げることばかりに目を向けてしまいます。
しかし、経営者には、もう一つ大切な仕事があります。

それが、「資金繰り」です。

利益を上げることは、社員が一丸となれば達成できますが、資金繰りだけは経営者にしかできません。
将来のお金の流れを把握しておかなければ、どんなに利益を出したところで、資金不足になれば倒産してしまいます。
しかし、逆に、利益が出ていなくても、資金繰りさえできていれば倒産しません。
つまり、会社が倒産するかどうかは、すべて「資金繰り」にかかっているのです。

資金繰りの仕事の大部分は、「資金調達」になります。
これについては、別のカテゴリーで解説していますので、そちらを参考にしてもらうとして、

銀行や保証協会に融資を申し込む場合は、必ず「資金繰り表」を作成しなくてはなりません。

金融機関は、あなたの提出する「資金繰り表」と「経営計画案」を見て、融資を実行するべきかどうかを判断するのです。

ですから、会社を経営する限り、いつかは「資金繰り表」を作成しなくてはならない時がやってきます。
資金繰り表の内容が悪ければ、会社にとって命取りになります。
それならば、できるだけ早く資金繰り表の書き方をマスターしておくべきです。

それと同時に、資金繰り表を作成することにより、金融機関に対し事前に融資の打診をすることが可能になります。
銀行というところは、急な資金不足には対応してくれませんが、前もって計画的に申込があった場合には、そうした経営者の能力を評価します。

いずれにせよ、資金繰り表の作成は、経営者にとって欠くべからざる仕事と言えます。
どんなに会社が大きくなったとしても、どんなに有能な社員が育ったとしても、資金調達だけは社長の役目です。

その最初のステップとして、資金繰り表の作成にチャレンジしてもらえたらと思います。

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● 資金繰り表を準備する

資金繰り表を作成するために、最初にどんな表をつくるか決めなければなりません。
市販の資金繰りに関する本にも見本はついていますし、インターネットでも、資金繰り表で検索をすれば多数の参考資料があります。

決まりきったフォームはありませんが、一般的には次のようものがよく使われています。
PDFファイルで取り出せるようにしていますので、それを見ながら、以下の解説を読んで頂けたらと思います。

● 資金繰り表の仕組みを理解しよう

資金繰り表の内容は、縦に入出金の区分する項目、横に月次、日次などの推移となっていて、これはみな共通の様式となっています。
社内で資金を管理するのが目的ですから、

業種や企業規模などに合わせて、自分で使いやすいものを選べばよいのですが、最低限必要な項目があります。
それは、次の4つです。

・前月繰越額 - 前月からの資金(現金預金)の繰越残高
・当月収入額 - その月の入金予定額を記入する欄
・当月支出額 - その月の支出予定額を記入する欄
・翌月繰越額 - 翌月に繰り越す資金残高

翌月繰越額は、以下のように計算します。

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そして、「翌月繰越額」は、次の月の「前月繰越額」と必ず一致します。

今回紹介した資金繰り表は、収入と支出をそれぞれさらに2つに分け、
日々の営業に伴って出入りする収入・支出と、それ以外のお金の出入り(財務収支)とに分類しています。

実際の資金繰りでは、将来の支払いにいくら必要かを確認し、

資金が足りないようであれば、借入れなどの資金調達を検討するといった流れになります。
この資金繰りの手順を踏まえるならば、資金繰り表のうち資金調達による収入と返済を、売上による収入や仕入・経費支払いから分離して、

「財務収支」という分類を設けておくと見やすくなります。
また、財務活動を除いた、いわゆる本業での収支が一目瞭然で分かるようになっています。

資金繰り表の各項目の具体的内容は、このあとのセクションで詳しく説明します。
また、ここでの説明だけでは理解しにくい方のために、資金繰り表作成のセミナーを予定しています。
より確実にマスターしたい方は、そちらを利用されるのも良いと思います。

● 資金繰り表に金額を記入する時のポイント

資金繰り表に金額を記入・作成し、資金の動きを予測するためは、次の前提条件をあらかじめはっきりさせておかなくてはなりません。

① 売上予測(毎月の売上がいくらなのか)
② 売上代金の回収条件(売上がいつ現金として入金されるのか)
③ 仕入れ代金の支払条件(仕入代金はいつ支払うか)
④ 借入金の返済条件(借入金の返済予定はどうなっているのか)
⑤ 設備投資時期と予算(必要ならば)

これらの前提条件に基づき、資金繰り表に予測金額を記入していきます。

資金繰り表を作成する際、全般的に言えることですが、
収入予測は保守的に見積もり、支出は多めに予想するのがよいでしょう。

なぜなら、資金不足を前もって把握し、その手立てを打つことが、資金繰りの大きな役割の一つだからです。

作成する元になる資料は『事業計画書』です。
事業計画書の作成の仕方については、会員用ページを参照ください。

● 資金繰り表に金額を入力する

1 前月繰越金

資金繰り表作成において最初に記入するのが、この前月繰越金です。
前月末時点での金額を記入するのですが、この金額を確定させることは、資金繰り表を作成する上で大変重要です。

では、資金繰り表で「繰越残高」としてみなせるものは、会社の資産のうちどこまででしょうか?
それは、いつでも支払いに充てることができる現金、預金などです。
定期預金ももちろん資金ではありますが、すぐに換金できないことが通常なので、資金繰り表の繰越残高には入れません。

繰越金額を確定させる時に、いくつか注意することがあります。

まず、現金、小切手、預金、受取手形は、必ず実際に「現物確認」をします。
そして、その確認した残高をそのまま記入します。
(現物残高とは、手と目でみて触ってカウントしたもので、計算したものではありません。これは鉄則です。)

私のお客様で、資金繰りが厳しいと慌ててご相談いただく中に、よく見てみると繰越金額が間違っていた、なんてことがよくあります。
銀行口座を複数持っていて、そのうちの一つを忘れていた時は、前月繰越額が増えるのでまだいいのですが、怖いのはその逆です。
記入した前月繰越金額が、実際の残高よりも多い場合は、大きく資金繰りの予定が狂うので、必ず現物確認を徹底して下さい。

2 売上金回収

この欄には、売上のうち、実際にその月に現金や小切手として受け取るか、または預金口座に入ってくる予定金額を記入して下さい。

現金商売と言われる飲食店などの業種以外は、通常売上が計上されてから、その売上が現金として入金されるまで時間がかかります。
(売上金が、売掛金→受取手形→現金といった流れになるため)

事業計画で立てた売上計画を元にして、自社の売掛サイト(売上が計上されてから現金になるまでの期間)に基づいて、
売上が現金として入金される月を計算して記入してください。

また、売上を計上して、翌月入金になる売り先もあれば、翌々月に入金がある売り先もあり、売掛サイトが一定でない場合もあると思います。
そういった場合は、取引先ごとに、売上予想とその売上が入金となる月を計算し、できるだけ実態に近づけるようにしてください。

すでに事業をされている方で、売掛サイトが一定でない場合や、売掛金回収の方法がその都度違うといった場合は、

下記のような過去3ヶ月回収実績から回収割合を求める方法を使うのもいいと思います。

回収割合の求め方

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算式

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上記の例のように、過去の回収実績に基づいて、割合を求めます。
ここでは3ヶ月間の平均値を出して割合を求めていますが、
この期間は長ければ長いほど、より実態に基づいた割合に近づくので良いと思います。

求められたそれぞれの割合に、後は前月の売掛金の金額を掛けた金額が、
現金回収金額および手形回収金額になります。
現金回収分は、入金欄の2 売上金回収へ記入します。

3 受取手形期日入金 & 16 割引手形

次に3受取手形期日入金と16割引手形の欄に金額を記入しましょう。

受取手形の処理には、以下の3つの方法があります。
これら3つの処理の仕方によって、それぞれ資金繰り表への記入のタイミングや、記入欄が違ってきます。

①期日まで保有し、期日が来た時点で現金にする。(期日決算入金)
→3受取手形期日入金の欄に記入
②仕入先や経費の支払いを回収した手形で支払う。(裏書譲渡)
→資金繰り表には記入しない
③決済日が来る前に銀行へ持込み、現金にする。(手形割引)
→16割引手形の欄に記入

ちなみに、資金繰りが楽になるのは、③→②→①の順です。
①は手形の期日がこないと現金にできないが、③は期日が来る前に銀行へ持込み、現金にすることができますので、資金繰りは楽になります。
しかし、銀行には割引料という利息を払わなければならないため、できるならば割引しないほうが良いです。

話を元に戻しましょう。
受取手形の処理としては上記の3つがあるわけですが、通常は、その処理のやり方が会社ごとに決められているのが一般的です。
そこで、売掛金の回収割合を求めたように、過去の実績を元に手形の処理方法も割合を求めます。
売掛金の回収割合を求めたときと違うところは、
分母が、月初の手形残高と、その月に手形で回収した残高を足した金額になることです。

なぜ分母に加えるかというと、その月に回収した手形も、その月内に裏書譲渡や手形割引をするからです。

手形処理割合の求め方

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過去に実績がある場合は、上記のような計算で割合を求めることにより、手形の「3受取手形期日入金」と「16割引手形」の欄に数字を記入することができます。
しかし、これから起業する人にとっては、実績がないため、上記の方法で計算できないと思います。
その場合は、①~③の3つの方法のうち、どれか一つに決めて、先に進んでください。

資金繰り表を一通り入力できた段階で、資金繰りに余裕があれば、手形割引を減らし、回収した手形を期日まで保有するようにしたり、

逆に余裕がなければ、手形割引を増やしたりといった調整をして、資金繰りを行います。

作成する段階では、あくまで仮の金額として記入をし、
後で各月の資金繰りを見ていき、仮の数字を見直し、調整していくようにします。

4 雑収入

雑収入とは、本業以外で得た収入のことです。
業種によって、その内容や金額の大小は様々ではありますが、

例えば、建築業であれば、廃材を処分して得た収入や、助成金や補助金を受け取った場合などが挙げられます。

過去の実績や今後の予想をみながら、見積もってみましょう。
しかし、資金繰りに影響を与えないような、細かい金額まで計算する必要はありません。

5 その他

企業にお金が入ってくるのは、なにも売上や雑収入だけではありません。
従業員に貸付をしており、その返済があった場合や、
仮払金の清算で現金が返ってきたりするときなども、分かる範囲で記入します。

6 収入合計

「2売上金回収」から「5その他」まで記入した金額の合計です。

7 仕入支払

この欄には、仕入先へ支払う金額をその月ごとに見積もり、記入します。
ここでのポイントは、次の2つです。

①月々の仕入金額はいくらなのか
②会社の支払条件はどうなのか(仕入れてからいつどういう方法で支払うのか)

まず、「①月々の仕入金額はいくらなのか」についてですが、売上を上げるために月々の仕入がいくらになるのかを計算する必要があります。
詳しくは、事業計画書のセクションを参照していただければよいのですが、
予想売上高に、「売上原価率」を掛ければ、その月の仕入額が計算できます。

「売上原価率」とは、売上金額のうち仕入金額が占める%のことです。
例えば、100円で売れた商品を30円で仕入れていたなら、売上原価率は30%となります。
通常、売上原価率は、毎年大きく変わるようなことはありませんので、
過去の実績やこれからの見積もりを加味して、原価率を求め、売上予想に基づいて、その月の仕入額を計算してください。

これで、月々の仕入額が予想できました。
しかし、この金額をそのまま、資金繰り表に記入することはできません。
仕入代金の支払は、購入時にその場で現金を支払う場合は、そのまま資金繰り表に記入することができますが、
支払時期と支払方法は、現金だけではないからです。

そこで、「②会社の支払条件がどうなっているのか」を確認する必要があります。
ほとんどの会社では、「月末締め翌月末払い」や「月末締め翌々月末払い」といったように決まっています。
その条件に当てはめて、その月の支払額がいくらになるかを計算できます。
ただこのとき、現金と手形をどういう割合で支払うことになるのかを計算し、予測する必要があります。
例えば、過去半年の実績から、現金支払した金額、支払手形で支払った金額、受取手形を裏書して支払った金額をそれぞれ出し、

下記のように割合を計算すれば、すぐに計算できます。

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上記の例では、現金支払が25%です。
支払条件が「月末締め翌月末払い」の時は、前月の仕入金額(支払条件が「月末締め翌々月末払い」の時は、

前々月の仕入金額)に25%を掛けた金額が、資金繰り表の「7 仕入支払」の欄に記入されます。

また、手形支払いの場合は、次の「8 支払手形決済」で説明します。

8 支払手形決済 & 16 割引手形

現金の代わりに、支払手形で代金の支払いを行うことで、一定の期間、支払を延ばすことができます。
その期間は、1ヵ月といった短いものから、半年に及ぶものまであります。

支払手形決済金額は、その会社の支払パターンをもって見積もることができます。
「7 仕入支払」の箇所でも説明しましたが、
その会社の月額仕入金額と、その支払条件さえ把握できれば、資金繰り表に金額を記入することができます。

例えば、下記のような表を作成すれば、簡単に見積もることができます。

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この例では、1月の仕入金額(10,000千円)に対し、2月に手形を振り出して支払い、4月に振り出した支払手形を決済するという予定です。
仮に会社の支払条件が、月末締め翌々月末払いの場合は、1月の仕入金額は、3月に支払うことになります。
毎月振り出す手形金額の求め方は、「7 仕入支払」の支払割合の求め方で割り出した割合から計算をします。

なお、業者ごとに手形のサイトが3ヶ月であったり、4ヶ月であったりする場合は、

業者ごとの仕入金額から、手形振出金額及び決済金額を予測し、決済金額の合計を「8 支払手形決済」の欄に記入する必要があります。

9 給与

給与については、毎月ほぼ一定額の金額を支払っている、あるいは支払うことになると思います。
ただ、昇給や賞与、採用の予定がある場合は、その予定を加味してください。

10 諸経費

会社が支払う諸経費には、家賃、水道光熱費、交通費など多様な項目があります。
これらの諸経費の特徴は、仕入代金の支払いと違って、ほぼ毎月同じ金額であることや、支払期間が短いことです。
最初は、手形を使って支払うこともほとんどないはずですので、正確な支払金額がつかみやすいと思います。

ここでも大切なのは、毎月定期的に発生する支払いのほかに、年に数回しか発生しない経費を、忘れずに予測することです。
例えば、年払いの保険料や事務所の賃貸契約更新料などがそうです。

11 消費税や法人税など

毎月支払うわけではないですが、大きな支払いになりがちなものに、税金があります。法人税や消費税、固定資産税などがそうです。
税金の種類により、支払う月と金額が分かりますので、

あらかじめ自分の会社が、どの税金をいつ、いくら支払う必要があるのかを調べ、資金繰り表に記入してください。

特に、消費税については、売上が上がるにしたがって、予想外の金額になるものです。
中間納税を含め、年2回の支払が発生しますが、その時になってあわてても後の祭りです。

税金の未納は、すなわち、融資のストップを意味します。
これが原因で倒産するケースも多々ありますので、十分注意して下さい。

12 支払利息

銀行からの借入金が1件だけなら、銀行が発行した借入金返済予定表をみれば、すぐにわかりますが、

複数件の借入がある場合は、下記のようなフォームを作成して管理すると、毎月の返済額と支払利息額が一目でわかり便利です。

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この表は、銀行で実行される借入ごとに、その返済予定表から転記すれば良いだけです。

合計欄の「支払利息」の金額を、そのまま「12 支払利息」の欄に記入してください。
「元金返済」の金額は、のちに説明する、財務収支の借入金の返済欄に記入します。

13 固定資産購入

経常的に発生しない支払いなので、予測しにくい場合もありますが、資金繰り表を作成する時点で、事業計画書などを元に分かっている範囲で記入します。

14 その他

経費以外の出金として、仮払金としての経費前払いや従業員への貸付など、あらかじめ予測しにくいものがあります。
現時点で予測できる範囲で記入をしてください。

15 支出計

「7 仕入支払」から「14その他」までの合計です。

ここまで記入できれば、収入の合計である、「6収入合計」から「15支出計」を引いた金額で、その月の本業での資金の収支が分かります。

ここで収支がマイナスであれば、それがどうしてなのか原因を探る必要があります。
考えられる原因はさまざまです。
前述の「資金繰りQ&A」で詳しく説明していますので、そちらを参考にしてください。

次に、財務収支の項目を記入していきましょう。

16~25財務収支

財務収支の項目では、資金の調達と返済の項目が並んでいます。
まずは、金額が確定している項目から記入していきましょう。

「16割引手形」は、「3受取手形期日入金」の欄で説明した通りです。
そちらで計算した金額を入力してください。

「17銀行借入金」には、毎月の銀行への返済金額を記入します。
「12支払利息」の欄で作成した借入金返済予定表を元に、元金返済合計分をそのまま記入してください。

「25企業共済」とは、「資金繰りQ&A」のQ15でも説明していますが、
中小企業基盤整備機構が作った、「経営者の退職金制度」といえるものです。
加入している場合は、こちらに、掛金の金額を記入してください。

● ひと通り資金繰り表に金額が入力できたら

ここまでで、事業計画などを元にして、ひと通り資金繰り表に金額が入力できました。
ここからが、第2段階の開始です。

各月の数字の割り振りを、細かく検討していきましょう!

作成段階で明らかに違うと思われるもの、支払の工夫で助かるもの、回収率の改善など、
どうしたら資金効率が高まるかを、事業計画書と対比させながら、検討を加えていきます。

これは大切な仕事で、事業計画のチェックにもなるので、慎重に見直しをして下さい。

この段階を経て、資金繰り表は完成です。 出来上がった資金繰り表を見てみましょう。
資金不足になっている月はありませんか?
そして、よく見ると、事業の収入合計から、事業の支出合計を差し引きしただけでは、たいしたことはないのに、

財務収支を加えたら、一気にマイナス額が増えていませんか。

マイナスが出ている月を、それぞれチェックして下さい。
その金額がすなわち資金調達しなければならない金額です。

最初に足りなくなる月の、借入金調達の欄に、不足額を入れて下さい。
続いてまた、足りなくなる月が出てくる場合、該当月にその不足額を入れます。

この作業をやればお分かりになると思いますが、その不足額が、年間の借入のスケジュールになります。

マイナスになる月がまだ先であれば、準備に余裕があるし、

もうそこまで迫っているということであれば、直ちに行動開始する必要がありますので、そのタイミングを計りましょう。

銀行に融資を申し込む場合は、「できるだけ早く打診する」というのが鉄則です。

早い打診ほど、融資が受けやすいというのも事実ですが、それもやはりケースバイケースです。
設備資金に関しては、金額が大きく審査にも時間がかかりますから、早目がベターです。
逆に運転資金は、早すぎると担当者に先送りされてしまう恐れがあります。

設備資金の申し込みは、1~2ヶ月前から。
運転資金の申し込みは、3週間くらい前が目安です。

銀行が忙しい月末月初は避けて、決済の集中する5・10日と、月曜・金曜を除いたほうが無難です。

融資申し込み時の上手な資料提出のコツや、銀行員との交渉のやり方については、会員用ページで詳しく解説します。

● 資金繰りのメドを付ける

資金繰り表を作成した後は、資金不足額の調達のメドをつけなければなりません。
資金繰り表を作成する段階で、資金不足があった月は、収支がマイナスにならないように借入金の欄に不足額を入れ、収支を合わせました。
収支がマイナスになった原因はいろいろありますが、以下のようなものが考えられます。

① 売上増加に伴う資金不足の場合

いわゆる収支ズレによる資金不足です。(詳しくは前述のQ&AのQ1を参照ください)
この場合、利益は出ているはずですから、前向きな資金不足といっていいでしょう。
売上増加運転資金として、金融機関へ交渉する際も、前向きに取り扱ってくれることが多いです。

② 業績赤字に伴う資金不足の場合

事業計画を元にして、資金繰り表を作っているので、事業計画自体が赤字とは考えられません。
もしこのような場合は、資金繰り以前に、抜本的な体質改善をする必要があります。
その具体的方法については、会員用ページで詳しく説明します。

③ 収支はプラスだが、借入返済を入れると資金不足になる場合。

借入金の借り換えを考えてみましょう。
借入金の返済表で、金融機関からの借入残高をみて、借入金返済が進んできている金融機関へ借り換えを検討してください。

借り換えする金額は、過去借入した金額ではなく、ピーク残高を借り換え予定として、資金繰り表に入れてください。
この借入金の借り換えで、資金繰りが正常化することがはっきりしたら、該当する金融機関へ借入金の申し込みをします。
このときの資料は、「経営改善計画書」「資金繰り表」です。
経営改善計画書で年間の業績予定を、資金繰り表で具体的な資金の動きを説明します。

④ 設備計画があって、その設備資金が不足している場合

金融機関では、「設備資金」と「運転資金」とに分けて融資を行います。
設備計画に基づく資金需要の場合は、運転資金から捻出せず、金融機関からの借入金でまかなうようにしましょう。
設備資金借入のタイミングとしては、設備の購入の1~2ヶ月前になります。

当たり前ですが、その際には金融機関に対して、設備概要を説明する必要があります。
内容は、設備内容、所要金額(業者からの見積りなど)、設備効果を簡単に記録したものです。

⑤ 年間では収支が合うが、季節変動が大きく、一時的に資金不足が発生している場合

資金繰り表で、一時的に資金が不足しても、最終的には余剰が確認できるようにして下さい。
前もって金融機関などに借入を打診しておきましょう。

一番良いタイミングは、決算が終わって、事業計画と資金繰り表ができあがった時です。
起業1年目の場合は、起業前の計画で資金不足を想定し、事業計画・資金繰り表を作成して下さい。

⑥ 資金固定化による場合

売掛金の長期滞留、過剰在庫、または在庫の不良化、設備資金への運転資金流用、金融機関への定期預金、毎月の積立預金、保険金の過剰積み立てなど、
様々な原因が考えられます。
この場合は、資金繰りを定期的に見直していない、または事業計画の甘さなど、日々のやらなければいけないことを、やっていないことが理由です。

また、こうした原因から収支がマイナスになっているにもかかわらず、対策を先延ばしにしていると、
近い将来必ず倒産の危険を迎えることになります。
早急に手を打つべきです。
その方法については、会員用ページで詳しく解説します。

そのほかにも、いろいろなケースがあるかもしれませんが、
資金不足になってあわてて資金調達に奔走するのではなく、事業計画書に基づき、資金繰り表を作成し、少なくとも毎月見直すことが大切です。

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